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第四章『葵と結衣』
第十一話「嫌われたくはないから」
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「ところで結衣様、どうして私より上に立っているのですか?」
泣いている結衣に、葵はさらに責め立てる言葉を浴びせる。
結衣はさっき、スマホを奪うために立ち上がったままだった。
「ずっと下にいてくださいって言いましたよね?」
自分より上にいるとは、気に入らない。
「あ、う……ごめ、なさい……」
結衣は謝りながら、その場に崩れるように座った。
葵の言葉に、結衣はもうなにも逆らえなくなっていた。
完全に上下関係ができて、葵は優越感でいっぱいになる。
「あと30分」
時計を見て、葵はポツリと呟く。
結衣を責め始めて、もう1時間が経っていた。
『90分』だけという約束だったので、残り30分しかない。
結衣にとっては、「まだ30分もある」のかもしれないが。
「時間いっぱいまで虐めるのもいいですが……そうですね」
少し考えてから、葵は結衣を押し倒した。
「あっ……!」
結衣の上に乗って、力いっぱい抱き締める。
「ふあ、苦しいです……っ!」
結衣は小さく悲鳴をあげる。
まるで抱き枕にするように、葵は結衣をぎゅうぎゅう抱く。
気が済むまでそうしてから、結衣の隣に横になって、今度は結衣を優しく包み込むように抱きしめた。
「はぅ……あ、葵さん……?」
時間ギリギリまで責められると思っていたのだろう。
――本当はそうしたい、けれど。
葵が急にスキンシップしかしなくなったので、結衣はどうしていいかわからない、といった表情をしている。
「今日はいっぱいえっちな姿が見れたので、苛めるのはここまでにします。残りの30分は――」
葵は、自分と結衣に布団をかけて、また結衣をぎゅっと抱きしめた。
「残りは、ピロートークですよ。苛めているだけじゃ、嫌われてしまうかもしれませんから。ちゃんと愛でることもします」
「ピロートーク……」
葵に抱きしめられてぴったりくっついたままの結衣が、きょとんとしている。
――そうだ。この娘は、きっとまだ人を信じきれてはいないはずだ。
それなのにこちらの性欲をぶつけすぎてしまっては、彼女はまた心を閉ざしてしまうかもしれない。
ちゃんと好きなのだと、愛しているのだと、言葉で、態度で示してあげなくては。
「ふふ、そういうわけなので、大好きですよっ!」
「ひゃっ……んぐっ」
布団の中で、葵は結衣の顔を自分のたわわな胸に挟み込んだ。
ああ、彼女を挟み込むの、夢だったんだよね。
葵は気持ちよくなっているが、肝心の結衣の方はというと、上手く息ができないのか苦しそうにしていた。
「あおひひゃん……」
「――あっ」
胸の隙間から助けを求める声が聞こえて、慌てて結衣を離す。
「……死ぬかと思いました」
「すみません、可愛すぎてつい」
「――いいですねその暗殺武器。私のちっぱいでは人を殺せそうにはないです」
「結衣様のちっぱいには夢がいっぱい詰まっているのですよ」
恨めしそうに自分の胸を見てくる結衣に、葵は微笑った。
その小振りで、形の整った可愛い胸が、いいのに。
彼女にそう言っても、嫌味としか思われないのだろうな。
葵がそんなことを思っていると、結衣が言いづらそうに葵に質問した。
「あの、失礼なこと聞くんですけど……」
「はい? なんでしょう」
「葵さんってどうして、私のことこんなに大切にしてくれるんですか?」
一呼吸置いて、結衣は続ける。
「――もしかしてですけど、葵さん。私が新にはじめて会った夏休みに、会いました……?」
葵は黙る。
――やっぱり、覚えてはいないか。
新との出会いのことも忘れていたのだ。仕方ないだろう。
もしかしたら新のことを思い出したついでに、自分のことも思い出してはいないかと、思っていたのだが。
まあ幼かった彼女からすれば、大した出会いではなかったのは、事実だ。
「……会いましたよ。今よりもっと小さい結衣様、とっても可愛かったです」
泣いている結衣に、葵はさらに責め立てる言葉を浴びせる。
結衣はさっき、スマホを奪うために立ち上がったままだった。
「ずっと下にいてくださいって言いましたよね?」
自分より上にいるとは、気に入らない。
「あ、う……ごめ、なさい……」
結衣は謝りながら、その場に崩れるように座った。
葵の言葉に、結衣はもうなにも逆らえなくなっていた。
完全に上下関係ができて、葵は優越感でいっぱいになる。
「あと30分」
時計を見て、葵はポツリと呟く。
結衣を責め始めて、もう1時間が経っていた。
『90分』だけという約束だったので、残り30分しかない。
結衣にとっては、「まだ30分もある」のかもしれないが。
「時間いっぱいまで虐めるのもいいですが……そうですね」
少し考えてから、葵は結衣を押し倒した。
「あっ……!」
結衣の上に乗って、力いっぱい抱き締める。
「ふあ、苦しいです……っ!」
結衣は小さく悲鳴をあげる。
まるで抱き枕にするように、葵は結衣をぎゅうぎゅう抱く。
気が済むまでそうしてから、結衣の隣に横になって、今度は結衣を優しく包み込むように抱きしめた。
「はぅ……あ、葵さん……?」
時間ギリギリまで責められると思っていたのだろう。
――本当はそうしたい、けれど。
葵が急にスキンシップしかしなくなったので、結衣はどうしていいかわからない、といった表情をしている。
「今日はいっぱいえっちな姿が見れたので、苛めるのはここまでにします。残りの30分は――」
葵は、自分と結衣に布団をかけて、また結衣をぎゅっと抱きしめた。
「残りは、ピロートークですよ。苛めているだけじゃ、嫌われてしまうかもしれませんから。ちゃんと愛でることもします」
「ピロートーク……」
葵に抱きしめられてぴったりくっついたままの結衣が、きょとんとしている。
――そうだ。この娘は、きっとまだ人を信じきれてはいないはずだ。
それなのにこちらの性欲をぶつけすぎてしまっては、彼女はまた心を閉ざしてしまうかもしれない。
ちゃんと好きなのだと、愛しているのだと、言葉で、態度で示してあげなくては。
「ふふ、そういうわけなので、大好きですよっ!」
「ひゃっ……んぐっ」
布団の中で、葵は結衣の顔を自分のたわわな胸に挟み込んだ。
ああ、彼女を挟み込むの、夢だったんだよね。
葵は気持ちよくなっているが、肝心の結衣の方はというと、上手く息ができないのか苦しそうにしていた。
「あおひひゃん……」
「――あっ」
胸の隙間から助けを求める声が聞こえて、慌てて結衣を離す。
「……死ぬかと思いました」
「すみません、可愛すぎてつい」
「――いいですねその暗殺武器。私のちっぱいでは人を殺せそうにはないです」
「結衣様のちっぱいには夢がいっぱい詰まっているのですよ」
恨めしそうに自分の胸を見てくる結衣に、葵は微笑った。
その小振りで、形の整った可愛い胸が、いいのに。
彼女にそう言っても、嫌味としか思われないのだろうな。
葵がそんなことを思っていると、結衣が言いづらそうに葵に質問した。
「あの、失礼なこと聞くんですけど……」
「はい? なんでしょう」
「葵さんってどうして、私のことこんなに大切にしてくれるんですか?」
一呼吸置いて、結衣は続ける。
「――もしかしてですけど、葵さん。私が新にはじめて会った夏休みに、会いました……?」
葵は黙る。
――やっぱり、覚えてはいないか。
新との出会いのことも忘れていたのだ。仕方ないだろう。
もしかしたら新のことを思い出したついでに、自分のことも思い出してはいないかと、思っていたのだが。
まあ幼かった彼女からすれば、大した出会いではなかったのは、事実だ。
「……会いましたよ。今よりもっと小さい結衣様、とっても可愛かったです」
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