うちの店長レイプ犯!?

貝鳴みづす

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休息話『三人の、聖なる夜に』

「クリスマスプレゼント③」

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 葵さんに連れられるがまま、よくわからない店で着替えさせられ、ついでにメイクもされて、髪も弄られて、そのまま大きなショッピングモールへ拉致られた。

「ふふ、可愛いですよ、結衣様」
「ありがとうございます……」

 うっとりとした目で見つめてくる葵さんに、私は小声で応える。

 ワインレッドの膝まである上品なワンピースに、短めの丈をした黒いジャケット。
 立派な出で立ちだが、私が着るとどうにも野暮ったく見えてしまう。
 ……いや、派手なのよ……いつも地味な服を纏っている身としては、着せられてる感がすごいのよ……。
 なんていうの? 子供のピアノ発表会的な。
 どうやっても、子供が頑張って大人っぽく演じているようにしか見えないのよ……。

 ちなみに葵さんは相変わらず全身黒いけど、印象はだいぶ違う。
 ひらひらしたシフォンパンツ。一見スカートのようで女性らしいが、長い脚が強調されて格好いいという二面性を持っていて、それを見事に着こなしていた。

 眩しいほどのイルミネーションの海を通って、巨大な建物の中へ入る。
 様々な店と、人、人、そして人。
 初めて来た場所だけど、なに? この人間の数。

「迷子にならないで下さいね」

 優しく囁く葵さんに、私は頷くしかなかった。
 人の多さに怯えながら、葵さんに隠れるように歩く。
 ああ、人ごみ苦手なんだよね。よくそれで東京に来たなって言われそうだけど。
 早くも帰りたい衝動に駆られている私だったが、次の瞬間、あまりの絶景に息を呑んだ。

「キレイ……」

 思わず声が漏れる。
 広い吹き抜けの中央に、四階付近まで達しそうな巨大な木があった。
 緑の葉を彩るオレンジの光と、まるでりんごのような丸くて大きな飾りの数々。
 ――聖なる夜に相応しい、見事なクリスマスツリーだった。

「本当は新様と見て頂きたかったのですが……」

 残念そうにツリーを眺める葵さん。
 その姿に、なにか心が痛むものを感じた。
 自分で言うとあれだけど、葵さんは私と二人でデートができて、嬉しいはず。
 ……その反面、新と私がデートできなかったことが納得できない。
 彼女はおそらく、そんな複雑な心境を持っている気がする。

 葵さんの袖を摘む。
 どうしたのかと、こちらを向く葵さん。
 ちょっと恥ずかしかったけれど、私は精一杯の笑顔を見せた。

「葵さんと見ることができて、嬉しいです。いつもありがとうございます」

 突然の感謝の言葉に、葵さんはしばらく停止していた。
 ――珍しく、動揺してる?
 葵さんは僅かに頬を染めたかと思うと、ぎゅっと私を抱きしめてきた。

「わ、わっ、ちょっと……!」

 慌てふためく私に構わず、葵さんは離すどころか抱く力を強くしてくる。
 周りの視線が気になったが。彼らも自分たちの恋愛に必死なのだろう、こちらを見てくる人は少数だった。
 ……まあいいか。
 なんだか温かくて気持ちいいのは否定できないし、少しくらいくっついとこう……。
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