うちの店長レイプ犯!?

貝鳴みづす

文字の大きさ
上 下
44 / 78
第三章『新と結衣』

第二十五話「全員集合」

しおりを挟む
 小さな事務所に、今日は四人も集まっていた。
 新、結衣、市松、田中。
 本当は四人揃うのが当然なのだが。結衣がこの会社に入ってからそれを見るのは、はじめてのことだった。

 ――なぜなら。
 店長の新は、本来の職場である他の会社を見なくてはいけないので、あまり店には来ない。来たくても来れない。
 市松は、その新の秘書兼ボディ―ガードなので、こちらも来れない。いや、実際のところよく来ていたのだが、姿を見せることはしなかった。

 結衣は田中に「もう一人社員がいるのよ」と聞いていて。謎だなと思ってはいたが、実際市松に会ってみると、想像以上に謎の人物だった。
 そして田中。唯一ほぼ毎日いる彼女は、結衣を和ませるために『わざとサボる』ことをしなくてはいけなかったので、とにかくよく散歩にでていた。

 暇だし、仕事をくれないし、社員は不真面目で、店は大赤字。
 それなのに店長の新はなぜか、お金持ち。
 ずっとおかしいとは思っていたが、面倒なので考えないようにしていた。
 ――それが蓋を開けてみればこれである。
 
「なんかもう……私の為にホントごめんなさい、としか言えないです……」
 ここにいる全員、結衣の過去を知っていて、彼女を元気付ける為に演技をしていたのだ。
 申し訳ないやら、恥ずかしいやらで、結衣は下を向いている。
「お二人が無事にくっついて、私はとても嬉しいです」
 市松は心底嬉しそうにしている。
 実際、二人のことを誰よりも考えていて。新と結衣の為ならなんでもすると、命を懸けている市松だ。この日をどんなに待ち望んでいたことか。

「よかったわね、結衣ちゃん! わたしも毎日サボってきた甲斐があったってものだわ!」
「田中さん……」
 いつもと変わらずバンバン肩を叩いてくる田中に、結衣は涙腺が緩みそうになる。――この人は仕事をサボっていたのではなく、仕事をサボる仕事をさせられていたのだ、私の為だけに、と。

「これで堂々といちゃいちゃできる~~」
「あっ、ちょっ、ちょっと!」
 新がニヤけた顔で、後ろから結衣を抱きしめてくる。
 それだけならまだしも、服の上から胸を触ってきたので、結衣は怒った。
「ひ、人が見ている前で、何するんですか……っ!」
 しかしその言葉に、結衣以外の全員が笑う。

「……??? なんで笑うの」
 新に抱かれた体勢のままで、結衣は固まる。
 ――なにか、いやな予感がする。
「人が見ているって、結衣、いつも見られてるよ?」
 当然のことのように、新は言う。
「いくらなんでも、毎回タイミングよく散歩から帰ってくるのは難しいわね~? うふふ」
 楽しそうに、田中が微笑む。
 とどめとばかりに、市松がとびきりの笑顔を見せた。
「結衣様のことなら何でも知っております。よく使うオナニーのネタも、推しのBLカップルも。最近は」
「あああああーーーーーーーっっっ!!!!」
 結衣は市松の言葉を遮るように、絶叫する。

 田中に見られていたこともショックだったが。
 それ以上に市松はなぜ、そういうことを知っているのか。
 ――あのとき橋の上で、そしてあの夜ベッドの上で、結衣のことを「何でも知っている」と言っていたのは本当だったのか。
「……私に! 私にっ! プライバシーっていうものはないんですかっ!?」

 泣き出す結衣に、全員が口を揃えて「ない」と言った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...