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第二章『どうして私と』
第二話「枯れているのか」
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言われるがまま固まり続け、定時になった。
「それじゃ、戸締りして行こうか」
新はそう言いながら事務所の戸締りをしていく。
はっと正気に戻った結衣も、あたふたとしながら、帰りの支度をした。
夕暮れ。
外はあの日と同じ、雪。
積もるほどではないが、絶え間なく、それは地面に吸い込まれるように降り続ける。
「どこ行くんですか?」
「どこ行きたい? 決めてないんだ。まぁ、せっかくだし、ドライブしながら決めよう」
新の何気ない言葉に、
(車かぁ~……)
二人きりのデートが格別二人きりになる個室を用意され、結衣はドキドキが止まらない。
車なんて、いつぶりだろう。
ここは小さな町だが、交通に不便はない。
たまにタクシーを使うくらいだ。
それも大抵酔いつぶれているから、ドライブとは言いがたい。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか車の前いた。
車なんぞに詳しくはないが、それがかなりお高めのものだということくらいは、結衣にでも想像がついた。
しっかりとしたスーツの着こなしといい、一体何者とは思っていたが、一体何者なのだろう。
少なくても、彼の店は大が付くほどの赤字である。
「どうぞ、お嬢さん」
助手席の扉を開けて誘導する新。
「あ、どうも……」
あわあわとなりながら、結衣は車に乗った。
車内は海を思わせる爽やかな香りがして、結衣が普段聞きっこないようなオシャレな音楽が流れ、そこは外とは隔離された別世界だった。
「店長が何者か知りませんけど、変に緊張するような店は嫌ですよ?」
「ふむ、じゃあ結衣くんの枯れた心を癒すような、自然に囲まれたお店にしよう」
「枯れたってなんですか! 枯れてないです!」
「そうなの?」
「そ……そうなのです」
心底疑うような目で聞き返されると、本当にそうだと言い張れない結衣である。
(――枯れて、いるのか、私は)
自分に問いかけてみると、やはり、それは疑問符で溢れかえってしまった。
「まぁ枯れてても、また咲けばいいんだよ。じゃあしゅっぱーつ」
「お、おー」
気の抜けた掛け声と共に、二人は店を後にした。
「それじゃ、戸締りして行こうか」
新はそう言いながら事務所の戸締りをしていく。
はっと正気に戻った結衣も、あたふたとしながら、帰りの支度をした。
夕暮れ。
外はあの日と同じ、雪。
積もるほどではないが、絶え間なく、それは地面に吸い込まれるように降り続ける。
「どこ行くんですか?」
「どこ行きたい? 決めてないんだ。まぁ、せっかくだし、ドライブしながら決めよう」
新の何気ない言葉に、
(車かぁ~……)
二人きりのデートが格別二人きりになる個室を用意され、結衣はドキドキが止まらない。
車なんて、いつぶりだろう。
ここは小さな町だが、交通に不便はない。
たまにタクシーを使うくらいだ。
それも大抵酔いつぶれているから、ドライブとは言いがたい。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか車の前いた。
車なんぞに詳しくはないが、それがかなりお高めのものだということくらいは、結衣にでも想像がついた。
しっかりとしたスーツの着こなしといい、一体何者とは思っていたが、一体何者なのだろう。
少なくても、彼の店は大が付くほどの赤字である。
「どうぞ、お嬢さん」
助手席の扉を開けて誘導する新。
「あ、どうも……」
あわあわとなりながら、結衣は車に乗った。
車内は海を思わせる爽やかな香りがして、結衣が普段聞きっこないようなオシャレな音楽が流れ、そこは外とは隔離された別世界だった。
「店長が何者か知りませんけど、変に緊張するような店は嫌ですよ?」
「ふむ、じゃあ結衣くんの枯れた心を癒すような、自然に囲まれたお店にしよう」
「枯れたってなんですか! 枯れてないです!」
「そうなの?」
「そ……そうなのです」
心底疑うような目で聞き返されると、本当にそうだと言い張れない結衣である。
(――枯れて、いるのか、私は)
自分に問いかけてみると、やはり、それは疑問符で溢れかえってしまった。
「まぁ枯れてても、また咲けばいいんだよ。じゃあしゅっぱーつ」
「お、おー」
気の抜けた掛け声と共に、二人は店を後にした。
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