うちの店長レイプ犯!?

第一章『うちの店長レイプ犯!?』

第七話「変化」

　それから毎日、電車で痴漢にあった。
  いけないとわかっていたが、あえて同じ車両、同じ時間に乗って、その男が現れるのを待っていた。
  
　前の職場が嫌になって、転職してから、いや、それよりずっと前から、結衣はただ生きているだけだった。
  なんの目的もなく、趣味などもなく、ただ生きているだけ。
  今の職場はたしかに揉め事もないが、暇すぎて自分の存在意義を疑ってしまうことも多々ある。
  しかしトイレで犯されて以来、結衣の日常はがらりと変わった。
  
　適当だったメイクもちゃんとして、仕事もやれることを頑張って探して、あまりすることのなかった料理までするようになった。
  
  ――これは、恋なのかもしれない。
  
  そう認めるようになってから、結衣の想いは一層強くなった。
  
  
「店長、この商品の紹介、こう変えた方がよくないですか」
　昼過ぎ、田中は昼休憩から戻ってこないのだが、結衣はちゃんと仕事をしていた。
「あともっと宣伝した方がいいと思います。全然アクセスないじゃないですか」
　本来カスタマーサポート担当の結衣は、HPの管理など仕事ではない。
　ない仕事を探した結果、適当に作られただけのショップページの管理をすることにしたのだ。
「結衣くん仕事熱心だねぇ、おじさん感心しちゃう」
　あはは、と笑いながら、小原は結衣に薄い小さなメモ帳を渡した。
  『結衣くん』という呼び方に慣れるのには時間がかかったが、今では全く気にならない。
「ショップHPのパスワードとか色々書いてあるから、それ見て更新してくれるかな」
　手渡されたメモと小原を交互に見ながら、結衣は少し固まった。
「え、いいんですか」
　確認とか、しなくて大丈夫なのだろうか。
「いやならいいんだけど」
「いえ、やりますやらせてください」
　結衣はメモを握りしめて、少しばかり目を輝かせた。
　一時期、Webデザイナーを目指して勉強していたこともあるくらいだ。HPの更新作業は結衣にとって楽しいものである。
  なにより仕事らしい仕事ができるのだ。それが何より嬉しかった。