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3、うさぎのおしごと

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「こんばんは、うさぎをご指名ありがとうございます!」
 ぺこりと、私は頭を下げた。
 源氏名はうさぎ。年齢はもちろんヒ・ミ・ツ。
 背が小さくて中学生に見間違えられたりするほどだから、中学生ってことにする?
 あ、でもそれじゃあお仕事できないや。
 ところで、私はこの店のネット指名ナンバーワンである。
 なぜ、ネット指名が多いのか。
「うさぎたん、会いたかった! いつもブログ見てるよぉ」
「ほんとぉ~? うさぎも会いたかったぁ~!」
 そう、ブログ。
 ブログで客の心――もとい客のちんこを掴んでいるのである。
 今時のホテヘルとかは、指名をとるべく、女の子一人一人が個別でブログを書くのが平常運転だ。
 うちのホテヘル店も、ブログをやっている。
 しかしそれを苦手とする女の子の多いこと多いこと。
 毎回同じアングルの胸だけ映した写メと、グルメブログかっつーほどの食べ物の写メの数々。そしてお決まりの文章。
 バカね、そんなんじゃ客のちんこは掴めないわ!
 私は自分に「うさぎ」というキャラを作って、それを売っている。
 さすがにプレイ現場への道のり――外では普通(?)のゴスロリの恰好をしているが、プレイ中や、ブログ内では常にバニーガールの恰好だ。
 黒いえっちいバニー服。
 もちろんウサ耳のカチューシャも忘れずに。
 ロリうさ娘の完成だ。
 そして外見だけでなく、中身も徹底的にキャラを作った。
「早くうさぎちゃんのバニー姿みたい~!」
「うさぎも早く見せたい~!! もう、うさぎ興奮してきちゃったぁ」
「ぐはぁ、うさぎたん、かわゆ~」
 ふふ、いちころね。
 今日もがっぽり稼いで、ちょ~気になってるゴスロリ服を買うのよ!
 内心ではそんなことを思いながら、客のうでにすり寄っていた。
 ブログでもこのキャラを貫き通し、毎回いろんなシチュエーションの「うさぎ」を撮った。
 そしてブログを見てる人のちんこに届く、文章を書く。それだけである。
 女の子の待機所の壁にでかでかと貼られたランキングには、私の票だけが異様に伸びている。
 私はここではアイドルなのよ!
 ――そう、なにを隠そう私、実はお昼は普通のOLだったりする。
 昼職で溜まったイライラを、夜職で発散する!
 それが私のモットーだ。
「さぁさぁ、うさぎとお城に入ろー!」
 ラブホの前で叫ぶ。
 大丈夫、心配ない。
 たとえ会社の仲間たちが見たとしても、私がまさかこんなゴスロリ服きてこんな声出してるなんて、わかりっこないない。大丈夫。
 なんの不安もなく、今日も、よるの「私」のおしごとがはじまった。
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