【更新停止中】ラブコメット～宇宙人にばかりモテるのだが～【R18】

第一章

第一話「アイノ彗星と、モテ期の到来」

『アイノ彗星、通称『愛の彗星・ラブコメット』が、地球に接近中です。肉眼でも見られると思われ――』

　テレビが連日、彗星の話をしている。
　アイノ彗星。
　その名前から、『愛の彗星』『ラブコメット』などと呼ばれ、なんかわからんが、人気らしい。

「来たわね」
「来たってなにが？――アイノ彗星のこと？」

　朝食のパンをかじりながら、テレビに釘付けの母を見る。
　母と私、愛流は、この家で二人暮らしだ。
　そこまで古くない一戸建ての３LDKは、母子二人には、ちょっと広すぎる。たまになんだか寂しくなってしまうのは、母には内緒だ。

「愛流、モテ期の到来よ」
「……は？　なにそれ、新手の占い？」

　母は時折変なことを言う。
　言うなれば、不思議系おっとり女子だ。
　――女子、って言えるくらい母はちょっと、いや、かなり乙女である。

　アイノ彗星――誰も「愛」だなんて言ってないのに、勝手に『愛の彗星』とか『ラブコメット』とかもてはやす。

「ラブコメットを見たら、好きな人と結ばれる！」なんて、よくある女子の妄想だ。

　私は、どうでもいい。
　いや別に恋愛に興味がないわけじゃないよ？　勘違いしないで？
　ただ、ありもしないことを、キャーキャー言うのが煩わしいだけ。

「はいこれ」
「なに？」

　ぽんと、母が手渡してきたのは、小さな箱が３つ包まれたものだった。
　――なんだこれ。

「ゴムよ。お得パック」
「ゴム？」
「コンドームよ」
「コンドーム？」
「……あんたその歳で、まさかコンドームを知らないの？」

　頭を抱える母。

　『０．０２』、『生感覚』と書かれたパッケージを見て、「コンタクトか？」と思ったが、私は視力だけは人並み外れているので、おそらく違うだろう。
　なんとも返せず、少しの沈黙の後「ああそうか」と母は困ったような顔をする。

「――相手が付けてくれるとは限らないわね。愛流、婦人科に行くわよ」
「ええ？　なんで婦人科……」

　突然の提案に、私は呻く。
　今日は土曜日なのに。
　せっかくの休みを、病院で潰すなんて考えられないのだが。
　気乗りしない私の背中を押したのは、女子にはどうしたって魅力的な一言だった。

「――生理がとっても軽くなる魔法の薬、欲しくない？」