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第三章

修学旅行二日目 3

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「……だ、大丈夫か?」
「大丈夫……」

 昼食。
 さっきまでずっと泣いていたので目の周りが真っ赤になって、翔に恐る恐る声を掛けられる始末。力なく答えながら、次の一口を運ぶ。

「藤山君、目真っ赤だよ。
うさぎみたい……」
「ッ大丈夫……」

 萩田さんからうさぎみたいと言われ、一瞬言葉に詰まるけど同じように答える。
 俺に構わないでほしい。だって、何か言われるたびにまた泣きそうになるから。……俺、とんだ乙女野郎だな。

「チッ……おい早乙女。
ライライがおかしいぞー」
「っ大丈夫だって……!」

 やれやれというように翔が隼人を呼ぶ。それにすがるようにして止めるけど、がしっと頭をつかまれて遠ざけられた。

「んー? 萊?」
「そうだ。見ろこれ。」
「藤山君、ずっとこの調子なんだよ。」

 もうすでに食べ終わってクラスメイトと話していた隼人がすたすたと向かってくる。
 ずいっと目の前に差し出され、ばっと下を向く。

「どうしたの、萊。」

 いつもと変わらず心配そうにのぞき込んでくる隼人。顔を見られまいと、下を向いたままさらに背ける。
 今の状態で涙腺崩壊寸前なのに……!

「ほっといてよ……」
「……そっか。」

 顔は見えないけど、その声がとても悲しそうで顔を上げそうになるけどぐっと我慢して、遠ざかるのを待つ。

「お、おい……早乙女……?」
「え……?」
「ほっといて、ていわれたから……さ?」

 無心、無心……
 翔の手の力が緩んだので、すぐさま自分の席に戻る。また一口ずつゆっくりと箸をすすめた。


ーーーーー
~翔 視点~

「ほっといてよ……」
「……そっか。」

 ライライが小さくつぶやいた後、早乙女が悲しそうに答えた。
 拒絶されて悲しんでいるのか、と思いきや……

「お、おい……早乙女……?」
「え……?」
「ほっといて、ていわれたから……さ?」

 早乙女は、ニコニコと満面の笑みをしていた。
 思わず引き攣った声が出て、手を緩めてしまう。その瞬間ライライはさっと自分の席へと戻り、早乙女に腕を引かれた。

「ふふっ、木村君は今のままでいてね。
――必要以上に干渉したら、分かってるよね?」
「っうわ……!」

 前半はニコニコ、後半は一気に真顔になって脅された。ぞわっと背筋が凍りつく。
 というか、これって……全部意図的に……?

「……ライライ、頑張れ……」

 ああ、かわいそうに……
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