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顧問2年目07月
顧問2年目07月 11
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「お前頭おかしいんじゃないのか!?」
「な~んでそんなところ検査すんだよ!」
「なんだか昔の軍隊みたいだな」
「戦争中はこういうのやってたんだっけ?」
「そこまではやってねぇんじゃないか?」
「やっても意味ないからな!」
四つん這いの立成を取り囲む親父たちのだみ声の笑い声がこだまする宴会場。
大人気アーティストのライブのような盛り上がりだ。
そんな大盛況の中、立成1人だけがこの状況に置いて行かれている気分だった。
(今、こいつは何と言った・・・?)
三浦の高らかな宣言・・・・
聞き間違いがなければ、『肛門検査』と聞こえたような・・・?
立成は1人、そのワードを反芻し、そして表情を曇らせる。
目の前が真っ白になりそうになる。
周囲の親父たちの口から発せられる言葉も、耳がぐわわぐわんと鳴り響く。
『肛門検査』・・・『肛門検査』・・・その異様なワードが耳を離れない。
頭の中はそんな風になっているというのに、胸の内にはズシンとくる何かがあった。
立成はまだ状況に追い付けない。本当に、この親父は何を言っているんだ・・・?
「おい!お前らももっと近くに来い!今からこの先生の持ち物検査をするぞ」
がさごそと物音がする。浴衣の衣擦れの音も聞こえてくる。立成は先ほどよりも大勢の男の圧が強くなっていることを尻の方から感じていた。三浦の号令により、より立成の近くに親父たちが集ってしまっていたのだ。
「おい、佐々木!」
「えっ・・・俺っすか?」
「お前、肛門検査してやれ!この先生のケツの穴の皺の数を数えてやれ。先生のケツの穴に何本皺があるかを、な」
立成の身体がビクっと揺れる。
今度ははっきりと聞こえた。
そのおぞましい単語が、しっかりと耳に残った。
やはり、この親父は、『肛門検査』と言ったっ・・・!!
あまりのショックに立成は言葉を失う。赤らんだ顔も一斉に青白くなる。
本当にこいつは・・・・何を言っているのだ!?
「ええっ、嫌っすよ!」
「いいから、いいから!」
「お前がやらなくて誰がやるんだよ!」
周りの他の親父たちも、早くやれと言わんばかりだった。
散々わかった・・・わかってしまったていることだが、どうも親父たちは血の気が多い奴らが多いようだ。
体育会系というのだろうか。いや、それだけではないかもしれない。この会社特有の風土なのかもしれない。
厳格な上下関係というものが、今の時代であってもしっかりしているのだろう。
三浦に指名された男・・・佐々木というらしいその男は、この部屋で一番若そうな30代の出で立ちで、悠と遊んでいた男だ。その指名された佐々木も、その顔に本当に嫌そうな表情を浮かべながら拒否をしているものの、その身体を立成の突き出された後ろの部位へと近づけてゆく。社内の上下関係が身に沁み込んでいるようだ。
「・・・じゃあ、見ますよ・・・失礼しま~す・・・」
(うっ・・・)
佐々木が丁寧な言葉で立成に断りを入れる。そこまでしてやろうとしているのは、目の前に突き出された尻の穴の検査だというのに。
そうだとしても・・・そうだとしても。これまでの他の親父たちとは異なる、そのおずおずとした態度、恐縮した物言い、そして尻タブへの触り方。
そんな風にされると、立成としてもおかしな気分になってしまう。
これまでは荒々しく理不尽に扱われてきたのだ。だからこそ、立成も抗う気もあったものだ。
それなのに、こんな下手に出られてしまうと・・・
人の良い立成だから、どうしても強く出られない。
今からこの男に、自分の肛門を暴かれてしまう・・・・?皺の数を、数えられてしまう・・・?
嫌だ。嫌だ。
そう思うも、もはや反抗の牙が削がれてしまった立成には何もできない。
ただ、三浦の手により徹底的にスパンキングされて紅く染めた毛深い尻を、背後にいる佐々木に捧げることしかできない。同い年か年下かもしれないその男に、己の尻タブを拡げられ、割れ目に生えるケツ毛の中にある、人として最も見られて恥ずかしい部位にどれだけの皺が刻まれているかについて検査されることを、ただ受け入れることしかできないのだ。
グイグイと尻タブを拡げる手。
かすかに尻に感じる吐息。
刺さるように感じる視線。
どういうことなんだ。なんなんだこれは。
立成はどうしても受け入れられない。違法薬物でもやってしまったかのように目の前の景色が歪んでくる。自分も含めたこの世界の全てが正常ではなくなってしまうような眩暈に襲われてしまっている。
「あ、あれ・・・?・・・あっ・・・・だめだこれ。ケツ毛で全然見えないっす」
だが、その検査報告はあっけないものだった。
佐々木の純粋な口ぶりにより告げられた、残酷な真実。
そのあっけない端的なしかしあまりにもわかりきった事実を突きつけられ、立成の背筋がカッと燃え滾るように熱くなった。佐々木による検査結果は、『肛門を確認できなかった』というものに終わってしまった。
「そんなのわかってんだよ!見えないんなら邪魔な毛をどけてやれよ!」
「手ぇ抜いてんじゃねぇって!」
「もっと顔近づけろって!」
「それは無理!無理ですっ!絶対無理!」
「何でだよ!」
「いや無理ですよっ!こんな、こんな汚・・・男のケツ毛、いやっすよっ!」
作業を開始した佐々木だったが、
明らかに『汚ねぇ』という口ぶりを無理矢理噛みしめた佐々木の言い方には、親父たちをさらに焚きつけてしまった。
「はははっ!何遠慮してんだ佐々木!はっきり言ってやれよ!」
「今、明らかに何か言いそうになってたな!」
「失礼な奴だ、全く!」
「カカカッ、おい、何がどう汚ねぇんだ?」
「えっ、それは・・・」
立成の脳裏に悪夢が蘇る。
先月のスナックでも晒した醜態。
嬢たちの眼前で暴かれた己の肛門。ボーボーに生い茂る縮れたケツの陰毛に絡みつくように残されていたトイレットペーパーの残骸。
またもそれが残っていたというのか・・・?それを、佐々木という、自分と同年代の男に、発見されてしまった・・?
それと同時に、立成は佐々木に対して申し訳ない気持ちになる。
すまない・・・本当にすまない・・・こんな、こんなケツで、汚いケツで、本当に・・・・
この状況ではそこまでの言語化はできずとも、そのような思念が立成の頭を駆け巡り、立成は素肌の顔を畳みに擦りつけた。
「・・・です」
「ん?なんだ?」
「聞こえねえぞ!」
「その・・・く、くさいんです。すごく、臭いです!便臭が・・・!」
(・・・なっ!)
後頭部から湯気が出そうになるほど顔が熱くなってしまう。
予想したものを超える佐々木の発言に、立成はわなわなとその身を震わせる。
この教師のケツの穴は糞の臭いがする。
言葉使いは丁寧ではあるが、そう言われたようなものだった。
「はっはっは!なんだそりゃ!」
「そんなにくせぇのかよ!」
「どれ、俺も見てみるかぁ!ほら、しっかり開けぇ!」
「ひいっ!」
誰かの手により、立成の尻タブがはたかれた。立成はそれを知ることはできないが、それは先ほど、かつての学生時代、頭髪検査を受けたときのことを語っていた、柏田という頭が禿げ上がり太った中年の男だった。
「よ~し、いい子だぁっ。どれどれぇ・・・・ああ、こりゃ駄目だぜ三浦!」
「何だよ柏田?」
「もう滅茶苦茶だ!ケツ毛にいろんなカスがついてやがる!こりゃなんだぁ?まさか、便カスかぁ!?」
「ギャハハハハ!」
「マジかよ!」
「やばすぎんだろ!!」
「おいっ!匂いはどうなんだっ!」
「ちょっと待ってろ・・・あっ!臭っ!くせえ!!この先生のケツ、すげぇ臭えっ!!糞臭ええええっ!」
忌み嫌うようなことであるはずだ。その男は言葉では罵倒以外の何物でもない単語が流れてくるというのに、その顔は本当に楽しそうにしている。もはや小学生のようなレベルの低い遊びだった。
だが、そのレベルの低い遊びのおもちゃにされているのは、立成自身なのだ。
そんなことをされている当人である立成の身体がプルプルと震える。
恥ずかしさだけではない。自分のケツ穴の臭さを周知される惨めさ。糞の匂いがするという不潔な肛門だと罵倒される屈辱。
たまったものではなかった。本当に、今すぐにでも消え去ってしまいたかった。こんな臭いといわれるような肛門を晒してまで、生きていたいと思えるはずもなかったのだ。
「そりゃ、こんだけケツ毛だらけのケツだからな!」
「拭いても拭いてもとれないんだろうなぁっ!」
「ワイルドすぎるんじゃねぇのか先生よぉ!?」
「ちゃんとケツ拭いてんのかね?」
「生徒に世界史教えるより、生徒から糞の仕方を教わった方がいいんじゃねぇの」
「お尻もちゃんと拭けないのかぁ?そんなやつへの給料に税金が使われているのかぁ?」
終わりのない立成への中傷。
もはや立成の教師としてのプライドまでも抉るような言葉が飛び出している。
「しゃあねぇなぁ、ほらっ!」
「えっ、何すか?」
「これできれいにしてやれよ!」
「えっ、これって・・・わかりましたよ、もう。じゃ、失礼・・・・」
「?・・・・ひぃっ!な、何だっっ!?」
「おいおいビールかよ!」
「まぁ洗浄するには丁度いいんじゃないか?」
「アルコール消毒ってな」
「極悪なケツだもんな!」
「あっ、ああ、ああああっ・・・・」
急に生ぬるい液体が尻の割れ目に流されていた。尻の谷間にビールをかけられていたのだ。
だれかが発言したとおり、汚すぎるケツへを浄化しようという意図なのだろう。
開栓されてから長時間が経ったであろう瓶ビールを手渡された佐々木は、拒否することも出来ずにその中身を、目の前にある汚臭の元である漆黒の森へと振りかざしたのだった。
いくら頑丈なケツ毛に覆われているとはいえ、普段は人目にも外気にも触れない場所なのだ。デリケートな場所なのだ。そんなところに、生ぬるいとはいえ、突然アルコールをかけられるのだから、たまったものではない。
悲鳴のような嬌声のような、何とも言えないうめき声を上げながら、唐突過ぎるビールの洗礼を浴びた立成は思わずその男らしすぎるデカ尻をブルブルと振ってしまっていた。
「おっ、ケツ振りやがったぞ!」
「カカカッっ!!急にどうしたんだっ!」
「びっくりしたか?」
「犬みたいだな!」
「こらっ!ケツ振るなって!」
「よし、あとはこれを使え!」
「ん?これは何すか?」
「しっかりケツを拭いてやらねえとな?」
「えぇ・・・はいはい・・・」
(け、ケツを拭く、だと・・・?)
脊髄反射によりケツを振ってしまったことを罵倒されながらも、立成の耳はまだ正常に働いていた。
次に訪れるであろう己への試練。
陰部の清拭・・・・
肛門浄化・・・
まるで介護されるかのように。まるで幼児がされるかのように。
たしかに、掃除のようなものだった。
佐々木の目の前にある立成の臀部の割れ目の中。
そこにあるものは、佐々木によって注がれたビールによって、しっとりとしたケツ毛へと変わっていたのだ。
濡れたものは乾かさなくてはならない。
汚れた者は浄化しなくてはならない。
当たり前のことだ。当たり前のルールだ。
だから、佐々木は手渡された数枚のティッシュペーパーを持つその右手を、迷わず立成の尻へと差し出してゆく。
きっと心根が優しいのだろう。
壊れモノを扱うかのように、そっと、ふわっと、密集した割れ目の陰毛群、その中心部へと宛がったのだ。
今のこの状況においては場違いなほどに優しく、しかし、しっかりと。ティッシュ越しの佐々木の指が、触れたのだ。立成の男としての恥部に触れたのだ。
そんなことをされてしまった立成がやってしまうことは1つだけだ。
「・・・ん、はぁんっ・・・」
甘い、甘すぎる吐息が、桃色のような官能を思わせるほどの響きを伴って、自然と立成の口から漏れ出てしまっていた。
そして、甘美すぎるその声色は、その始まりから終わりまで、その全てを、己を取り囲む親父たちの鼓膜へと入ってしまっていたのだった。
「はぁーーーーっ!?」
「おいおいおいおい!!何だよ今の声は!」
「聞いたかよ!」
「色っぽい声じゃねぇか!」
「汚ねぇケツを拭いてやってるっつーのに、何色気出してやがんだ!ハハハ!」
「随分とセクシーじゃねぇか!!」
「「んはぁん」じゃねーよ!!なーにが「んはぁん」だよ!!」
たった一言、いや一呻きにより、ここまでになることがあるだろうか。場を沸かすことができるのだろうか。人の感情を揺さぶることができるのだろうか。
感動的とまで言えるほどに、立成が意図せず放出した甘美な吐息により、周囲の親父たちは大盛り上がりだ。
(・・・くそっ、くそっ、くそっ、くそーーーーーっっ!!)
この一瞬で全身を赤く染めた立成は自分の顔を畳にうずめる。顔も何も見られたくないのだ。
こんなもの、格好の餌だ。
こういうことになるのは分かっていたつもりだった。
散々、この宴会場ではされてきたではないか。
これまで、多くの屈辱を感じさせられたというのに。
これだけの大勢の前で醜態を晒しているというのに。
今の自分が、どれだけ惨めな状況でいるのかわかっているはずなのに。
それでも、駄目だったのだ。堪えられなかった。いや、我慢するとかしないとかではなかったのだ。気を緩めたつもりなどなかったのだ。それなのに・・・
たった一度。たった一言。
それを出してしまったばかりに、まさに墓穴を掘ってしまったのだった。
そんな思いを立成が抱いていても、肛門検査の前の儀式は着々と進められていく。
佐々木の手は、立成がどれほどその身を震わせていようと、どれだけ羞恥により身体を染めようと関係なく、立成の汚れた聖域を浄化していく。
それもまた、立成へ更なる羞恥をいただかせる。
同年代の男に、文字通りケツを拭かれるという屈辱。
その様子を嘲笑されながら終始全てを見られるという絶望。
「くぅ・・・・」
「・・・よし、大分きれいになりましたよ。つっても、別の意味で汚いけど・・・」
「じゃ、ケツ毛を掻き分けてケツの穴をちゃんと見てやれよ」
「・・・はい」
諦めきった声色による返事の後、佐々木の指が再度、立成の尻の割れ目へと侵入してきた。
(なっ・・・マジかよぉっ・・・・!)
ティッシュ越しではない、佐々木の生の指が割れ目の中へと入って来る。
浄化されたケツ毛が避けられていく。
己の秘部のテリトリーが侵される。
指の温度を生肌で感じる。
より、吐息も感じてしまう。
(・・・ぐっ、うっ・・・はぁっ・・・・・)
切なげな声が漏れ出そうになるのを、今度は必死で堪える。
人体で最も硬い部位である、その歯が欠けてしまうのも厭わないほど、奥歯を噛みしめる。
もう二度と、情けない醜態を晒したくない。
こんなにも恥ずかしい状況に追いやられているというのに、プライドをズッタズタにされているというのに。
立成はまだ、男としての、雄としての、人間としての矜持を保たんと耐えに耐えに耐えていたのだ。
そんな立成の背後から、高らかな声が響き渡る。
「よし、ようやくケツ穴が見えましたよ!」
「な~んでそんなところ検査すんだよ!」
「なんだか昔の軍隊みたいだな」
「戦争中はこういうのやってたんだっけ?」
「そこまではやってねぇんじゃないか?」
「やっても意味ないからな!」
四つん這いの立成を取り囲む親父たちのだみ声の笑い声がこだまする宴会場。
大人気アーティストのライブのような盛り上がりだ。
そんな大盛況の中、立成1人だけがこの状況に置いて行かれている気分だった。
(今、こいつは何と言った・・・?)
三浦の高らかな宣言・・・・
聞き間違いがなければ、『肛門検査』と聞こえたような・・・?
立成は1人、そのワードを反芻し、そして表情を曇らせる。
目の前が真っ白になりそうになる。
周囲の親父たちの口から発せられる言葉も、耳がぐわわぐわんと鳴り響く。
『肛門検査』・・・『肛門検査』・・・その異様なワードが耳を離れない。
頭の中はそんな風になっているというのに、胸の内にはズシンとくる何かがあった。
立成はまだ状況に追い付けない。本当に、この親父は何を言っているんだ・・・?
「おい!お前らももっと近くに来い!今からこの先生の持ち物検査をするぞ」
がさごそと物音がする。浴衣の衣擦れの音も聞こえてくる。立成は先ほどよりも大勢の男の圧が強くなっていることを尻の方から感じていた。三浦の号令により、より立成の近くに親父たちが集ってしまっていたのだ。
「おい、佐々木!」
「えっ・・・俺っすか?」
「お前、肛門検査してやれ!この先生のケツの穴の皺の数を数えてやれ。先生のケツの穴に何本皺があるかを、な」
立成の身体がビクっと揺れる。
今度ははっきりと聞こえた。
そのおぞましい単語が、しっかりと耳に残った。
やはり、この親父は、『肛門検査』と言ったっ・・・!!
あまりのショックに立成は言葉を失う。赤らんだ顔も一斉に青白くなる。
本当にこいつは・・・・何を言っているのだ!?
「ええっ、嫌っすよ!」
「いいから、いいから!」
「お前がやらなくて誰がやるんだよ!」
周りの他の親父たちも、早くやれと言わんばかりだった。
散々わかった・・・わかってしまったていることだが、どうも親父たちは血の気が多い奴らが多いようだ。
体育会系というのだろうか。いや、それだけではないかもしれない。この会社特有の風土なのかもしれない。
厳格な上下関係というものが、今の時代であってもしっかりしているのだろう。
三浦に指名された男・・・佐々木というらしいその男は、この部屋で一番若そうな30代の出で立ちで、悠と遊んでいた男だ。その指名された佐々木も、その顔に本当に嫌そうな表情を浮かべながら拒否をしているものの、その身体を立成の突き出された後ろの部位へと近づけてゆく。社内の上下関係が身に沁み込んでいるようだ。
「・・・じゃあ、見ますよ・・・失礼しま~す・・・」
(うっ・・・)
佐々木が丁寧な言葉で立成に断りを入れる。そこまでしてやろうとしているのは、目の前に突き出された尻の穴の検査だというのに。
そうだとしても・・・そうだとしても。これまでの他の親父たちとは異なる、そのおずおずとした態度、恐縮した物言い、そして尻タブへの触り方。
そんな風にされると、立成としてもおかしな気分になってしまう。
これまでは荒々しく理不尽に扱われてきたのだ。だからこそ、立成も抗う気もあったものだ。
それなのに、こんな下手に出られてしまうと・・・
人の良い立成だから、どうしても強く出られない。
今からこの男に、自分の肛門を暴かれてしまう・・・・?皺の数を、数えられてしまう・・・?
嫌だ。嫌だ。
そう思うも、もはや反抗の牙が削がれてしまった立成には何もできない。
ただ、三浦の手により徹底的にスパンキングされて紅く染めた毛深い尻を、背後にいる佐々木に捧げることしかできない。同い年か年下かもしれないその男に、己の尻タブを拡げられ、割れ目に生えるケツ毛の中にある、人として最も見られて恥ずかしい部位にどれだけの皺が刻まれているかについて検査されることを、ただ受け入れることしかできないのだ。
グイグイと尻タブを拡げる手。
かすかに尻に感じる吐息。
刺さるように感じる視線。
どういうことなんだ。なんなんだこれは。
立成はどうしても受け入れられない。違法薬物でもやってしまったかのように目の前の景色が歪んでくる。自分も含めたこの世界の全てが正常ではなくなってしまうような眩暈に襲われてしまっている。
「あ、あれ・・・?・・・あっ・・・・だめだこれ。ケツ毛で全然見えないっす」
だが、その検査報告はあっけないものだった。
佐々木の純粋な口ぶりにより告げられた、残酷な真実。
そのあっけない端的なしかしあまりにもわかりきった事実を突きつけられ、立成の背筋がカッと燃え滾るように熱くなった。佐々木による検査結果は、『肛門を確認できなかった』というものに終わってしまった。
「そんなのわかってんだよ!見えないんなら邪魔な毛をどけてやれよ!」
「手ぇ抜いてんじゃねぇって!」
「もっと顔近づけろって!」
「それは無理!無理ですっ!絶対無理!」
「何でだよ!」
「いや無理ですよっ!こんな、こんな汚・・・男のケツ毛、いやっすよっ!」
作業を開始した佐々木だったが、
明らかに『汚ねぇ』という口ぶりを無理矢理噛みしめた佐々木の言い方には、親父たちをさらに焚きつけてしまった。
「はははっ!何遠慮してんだ佐々木!はっきり言ってやれよ!」
「今、明らかに何か言いそうになってたな!」
「失礼な奴だ、全く!」
「カカカッ、おい、何がどう汚ねぇんだ?」
「えっ、それは・・・」
立成の脳裏に悪夢が蘇る。
先月のスナックでも晒した醜態。
嬢たちの眼前で暴かれた己の肛門。ボーボーに生い茂る縮れたケツの陰毛に絡みつくように残されていたトイレットペーパーの残骸。
またもそれが残っていたというのか・・・?それを、佐々木という、自分と同年代の男に、発見されてしまった・・?
それと同時に、立成は佐々木に対して申し訳ない気持ちになる。
すまない・・・本当にすまない・・・こんな、こんなケツで、汚いケツで、本当に・・・・
この状況ではそこまでの言語化はできずとも、そのような思念が立成の頭を駆け巡り、立成は素肌の顔を畳みに擦りつけた。
「・・・です」
「ん?なんだ?」
「聞こえねえぞ!」
「その・・・く、くさいんです。すごく、臭いです!便臭が・・・!」
(・・・なっ!)
後頭部から湯気が出そうになるほど顔が熱くなってしまう。
予想したものを超える佐々木の発言に、立成はわなわなとその身を震わせる。
この教師のケツの穴は糞の臭いがする。
言葉使いは丁寧ではあるが、そう言われたようなものだった。
「はっはっは!なんだそりゃ!」
「そんなにくせぇのかよ!」
「どれ、俺も見てみるかぁ!ほら、しっかり開けぇ!」
「ひいっ!」
誰かの手により、立成の尻タブがはたかれた。立成はそれを知ることはできないが、それは先ほど、かつての学生時代、頭髪検査を受けたときのことを語っていた、柏田という頭が禿げ上がり太った中年の男だった。
「よ~し、いい子だぁっ。どれどれぇ・・・・ああ、こりゃ駄目だぜ三浦!」
「何だよ柏田?」
「もう滅茶苦茶だ!ケツ毛にいろんなカスがついてやがる!こりゃなんだぁ?まさか、便カスかぁ!?」
「ギャハハハハ!」
「マジかよ!」
「やばすぎんだろ!!」
「おいっ!匂いはどうなんだっ!」
「ちょっと待ってろ・・・あっ!臭っ!くせえ!!この先生のケツ、すげぇ臭えっ!!糞臭ええええっ!」
忌み嫌うようなことであるはずだ。その男は言葉では罵倒以外の何物でもない単語が流れてくるというのに、その顔は本当に楽しそうにしている。もはや小学生のようなレベルの低い遊びだった。
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そんなことをされている当人である立成の身体がプルプルと震える。
恥ずかしさだけではない。自分のケツ穴の臭さを周知される惨めさ。糞の匂いがするという不潔な肛門だと罵倒される屈辱。
たまったものではなかった。本当に、今すぐにでも消え去ってしまいたかった。こんな臭いといわれるような肛門を晒してまで、生きていたいと思えるはずもなかったのだ。
「そりゃ、こんだけケツ毛だらけのケツだからな!」
「拭いても拭いてもとれないんだろうなぁっ!」
「ワイルドすぎるんじゃねぇのか先生よぉ!?」
「ちゃんとケツ拭いてんのかね?」
「生徒に世界史教えるより、生徒から糞の仕方を教わった方がいいんじゃねぇの」
「お尻もちゃんと拭けないのかぁ?そんなやつへの給料に税金が使われているのかぁ?」
終わりのない立成への中傷。
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「しゃあねぇなぁ、ほらっ!」
「えっ、何すか?」
「これできれいにしてやれよ!」
「えっ、これって・・・わかりましたよ、もう。じゃ、失礼・・・・」
「?・・・・ひぃっ!な、何だっっ!?」
「おいおいビールかよ!」
「まぁ洗浄するには丁度いいんじゃないか?」
「アルコール消毒ってな」
「極悪なケツだもんな!」
「あっ、ああ、ああああっ・・・・」
急に生ぬるい液体が尻の割れ目に流されていた。尻の谷間にビールをかけられていたのだ。
だれかが発言したとおり、汚すぎるケツへを浄化しようという意図なのだろう。
開栓されてから長時間が経ったであろう瓶ビールを手渡された佐々木は、拒否することも出来ずにその中身を、目の前にある汚臭の元である漆黒の森へと振りかざしたのだった。
いくら頑丈なケツ毛に覆われているとはいえ、普段は人目にも外気にも触れない場所なのだ。デリケートな場所なのだ。そんなところに、生ぬるいとはいえ、突然アルコールをかけられるのだから、たまったものではない。
悲鳴のような嬌声のような、何とも言えないうめき声を上げながら、唐突過ぎるビールの洗礼を浴びた立成は思わずその男らしすぎるデカ尻をブルブルと振ってしまっていた。
「おっ、ケツ振りやがったぞ!」
「カカカッっ!!急にどうしたんだっ!」
「びっくりしたか?」
「犬みたいだな!」
「こらっ!ケツ振るなって!」
「よし、あとはこれを使え!」
「ん?これは何すか?」
「しっかりケツを拭いてやらねえとな?」
「えぇ・・・はいはい・・・」
(け、ケツを拭く、だと・・・?)
脊髄反射によりケツを振ってしまったことを罵倒されながらも、立成の耳はまだ正常に働いていた。
次に訪れるであろう己への試練。
陰部の清拭・・・・
肛門浄化・・・
まるで介護されるかのように。まるで幼児がされるかのように。
たしかに、掃除のようなものだった。
佐々木の目の前にある立成の臀部の割れ目の中。
そこにあるものは、佐々木によって注がれたビールによって、しっとりとしたケツ毛へと変わっていたのだ。
濡れたものは乾かさなくてはならない。
汚れた者は浄化しなくてはならない。
当たり前のことだ。当たり前のルールだ。
だから、佐々木は手渡された数枚のティッシュペーパーを持つその右手を、迷わず立成の尻へと差し出してゆく。
きっと心根が優しいのだろう。
壊れモノを扱うかのように、そっと、ふわっと、密集した割れ目の陰毛群、その中心部へと宛がったのだ。
今のこの状況においては場違いなほどに優しく、しかし、しっかりと。ティッシュ越しの佐々木の指が、触れたのだ。立成の男としての恥部に触れたのだ。
そんなことをされてしまった立成がやってしまうことは1つだけだ。
「・・・ん、はぁんっ・・・」
甘い、甘すぎる吐息が、桃色のような官能を思わせるほどの響きを伴って、自然と立成の口から漏れ出てしまっていた。
そして、甘美すぎるその声色は、その始まりから終わりまで、その全てを、己を取り囲む親父たちの鼓膜へと入ってしまっていたのだった。
「はぁーーーーっ!?」
「おいおいおいおい!!何だよ今の声は!」
「聞いたかよ!」
「色っぽい声じゃねぇか!」
「汚ねぇケツを拭いてやってるっつーのに、何色気出してやがんだ!ハハハ!」
「随分とセクシーじゃねぇか!!」
「「んはぁん」じゃねーよ!!なーにが「んはぁん」だよ!!」
たった一言、いや一呻きにより、ここまでになることがあるだろうか。場を沸かすことができるのだろうか。人の感情を揺さぶることができるのだろうか。
感動的とまで言えるほどに、立成が意図せず放出した甘美な吐息により、周囲の親父たちは大盛り上がりだ。
(・・・くそっ、くそっ、くそっ、くそーーーーーっっ!!)
この一瞬で全身を赤く染めた立成は自分の顔を畳にうずめる。顔も何も見られたくないのだ。
こんなもの、格好の餌だ。
こういうことになるのは分かっていたつもりだった。
散々、この宴会場ではされてきたではないか。
これまで、多くの屈辱を感じさせられたというのに。
これだけの大勢の前で醜態を晒しているというのに。
今の自分が、どれだけ惨めな状況でいるのかわかっているはずなのに。
それでも、駄目だったのだ。堪えられなかった。いや、我慢するとかしないとかではなかったのだ。気を緩めたつもりなどなかったのだ。それなのに・・・
たった一度。たった一言。
それを出してしまったばかりに、まさに墓穴を掘ってしまったのだった。
そんな思いを立成が抱いていても、肛門検査の前の儀式は着々と進められていく。
佐々木の手は、立成がどれほどその身を震わせていようと、どれだけ羞恥により身体を染めようと関係なく、立成の汚れた聖域を浄化していく。
それもまた、立成へ更なる羞恥をいただかせる。
同年代の男に、文字通りケツを拭かれるという屈辱。
その様子を嘲笑されながら終始全てを見られるという絶望。
「くぅ・・・・」
「・・・よし、大分きれいになりましたよ。つっても、別の意味で汚いけど・・・」
「じゃ、ケツ毛を掻き分けてケツの穴をちゃんと見てやれよ」
「・・・はい」
諦めきった声色による返事の後、佐々木の指が再度、立成の尻の割れ目へと侵入してきた。
(なっ・・・マジかよぉっ・・・・!)
ティッシュ越しではない、佐々木の生の指が割れ目の中へと入って来る。
浄化されたケツ毛が避けられていく。
己の秘部のテリトリーが侵される。
指の温度を生肌で感じる。
より、吐息も感じてしまう。
(・・・ぐっ、うっ・・・はぁっ・・・・・)
切なげな声が漏れ出そうになるのを、今度は必死で堪える。
人体で最も硬い部位である、その歯が欠けてしまうのも厭わないほど、奥歯を噛みしめる。
もう二度と、情けない醜態を晒したくない。
こんなにも恥ずかしい状況に追いやられているというのに、プライドをズッタズタにされているというのに。
立成はまだ、男としての、雄としての、人間としての矜持を保たんと耐えに耐えに耐えていたのだ。
そんな立成の背後から、高らかな声が響き渡る。
「よし、ようやくケツ穴が見えましたよ!」
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弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。


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