生徒との1年間

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顧問2年目07月

顧問2年目07月 10

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「それじゃ、検査してやるか」
「教師の毛を検査することになるとはなぁ」
「いっつも生徒に威張り散らしてるんだろう?こんな厳つい先生なんだ。しっかり検査してやらねぇとなぁ?」
「なっ・・・何言ってんだ!やぁっ・・・やめろぉっ!」
「おっすげぇ暴れてんな」
「三浦、しっかり押さえとけよ!」

 親父たちの口々に発せられる立成への検査宣言。どの親父も、これから明らかにされるであろう教師の情けないケツから視線を外そうともしていない。
 こんな汚い毛だらけの尻をしているのは既にわかっているのだ。そうだというのに、そのケツの中身までも見ようというのか。
 どの親父たちもそれなりの年齢で、薬指に指輪をしているのがほとんどだ。つまり妻帯者なのだ。そんな男達だというのに、立成の尻の中を調べることに対して異を唱えるものなど誰もいない。

 どこまで辱められるというのだ。 
 もう十分やったじゃないか。

 そんな思いから全力で身体を強張らせる立成だが、どっしりとした重量の三浦の身体が立成の逃走を許さない。
 両脇の親父たちも、唐突な抵抗を見せる立成の腕をがっしりと押さえつける。まるで、ショーの本番はこれからだと無慈悲に告げられているかのようだった。

「ごほん、えー、それでは~、ただ今より~、こちらにおります、立成先生の頭髪検査、もとい、『ケツ毛検査』を行います」

 三浦のそのがっしりとした顎の間にある唇から出てくる低音の声により、立成の精神をギッタギタに凌辱するような開会宣言が高らかに唱えられた。
 
 ケツ毛検査・・・改めてはっきりとそれを言葉で聞かされた立成の背筋は凍る。そんな言葉があるだろうか?ふざけているのか?何の意味があるのか?そんな思いの衝動が言葉にならずに脳内を駆け巡る。
 あまりにも侮辱するようなその言葉に、立成はその言葉の響きだけで耐えられないような気持ちになる。なぜ、そんなところまで見られないといけないというのか。

「はーい質問!そのケツ毛検査は、どうすれば検査に合格になるんだ?」
「ああん!?・・・そうだな、頭髪検査みたいなもんだから、肛門周りに毛が生えてなければ合格・・・・」
「いや、そりゃ無理だろ!」
「こんな毛だらけの汚ねえ尻してんだ!ケツを割るまでも無ぇだろ!」
「もう既に割れ目から見えてんだぞ!」
「どれ・・・あぁ、本当だな!ケツの割れ目から汚ねぇ毛が『こんにちは』してんな!こんなのもう不合格確定じゃねーか!」
「ははは!この先生のケツじゃあ不合格だ!」
「ふっ・・・ふざけるなっ・・・!」
 
 あんまりな親父たちの言いように、動かない身体の代わりに声で抗いを見せるが、そんなものを意に介さない親父たちだ。我先にと、立成を言葉で愚弄し、そして凌辱する。
 あたかも、今目の前に鎮座しているこんなケツは見定める必要もない、検査する価値もない、そのように言われているようだった。
 
「あーもう、うるせーなー!わかったわかった!男だからケツ毛が生えているのは仕方ないな。それじゃ、この先生のケツ毛が、先生として適切なものかどうかってところだな!」
「なんだよ、適切な範囲って・・・」
「まぁつまり、なんつーか・・・清潔感っていうの?公務員として、教師として、最低限の身だしなみとして整えているかどうかってところだな!」
「かかか!そりゃそうだ!」
「生徒の見本にならねぇといけねぇからな!」
「ガキの指導をするんだ、当然自分もちゃんとしてねえとな!」
「なるほどねぇ!」

 何を言っているというのか。
 ニヤニヤとした親父たちの顔が、立成のケツ、それもその豊満に膨らんだ双丘の間にある割れ目へと視線を向ける。
 この2つに割れた肉の間が、これから暴かれる立成の秘密の空間だ。その空間がどんな風になっているのか、各自思い思いに想像し、その想像から顔が自然とニヤつかせているのだろう。

 しかし、どの親父たちも考えもしないだろう。まさか、目の前の厳つい世界史教師のケツ穴が、何度も何度も様々な人間にお披露目された検査済みのケツ穴であり、あまつさえ部活の生徒や顧問仲間の指や肉棒が挿入済みの使い込まれてしまっている使用済みのケツ穴であるなど。

 それがわかっているのは立成1人のはずだ。他の親父たちは誰も・・・

 それでも、立成は震える喉の筋肉を無理矢理引き締め、カラカラの喉に唾液を流れ込ませる。
 これから自分の身に起こることを考えてしまう。自分のケツ毛が晒されることを想像してしまう。
 それだけで、身体の中がキュっときつく搾り取られてしまいそうになる。

「まっ、大体想像はつくけどな」
「こらっ!そこっ!私語は慎みなさい!」
「はーい、すみませーん」
「それじゃあ、やるぜ」
「おいっ!まじでやめろ!やばいって!やめろ!やめろよっ!やめろおおおおおー!!!」

 立成が騒いでいても誰も気にしない。気にするほどのものでもない。
 今や立成の悲鳴は、親父たちにとってはこの場を盛り上げるためのスパイスでしかない。既にこの空間においては、立成の人権は無いようなものであった。

 それでも、立成の背に乗る三浦には耳を汚す騒音に感じられたのだろう。
 再度、三浦の両手が高く高く上げられた後、その手が立成の尻タブに激しく振り下ろされた。

バチィィーーーーンッッッ!!!
「あうっーー!?」
「先生は黙ってろよ?今からちゃーんと公平に検査してやるからよ」
「はっ、はっ・・・そんな・・・」

 低音の声で、屈服の姿勢をとる立成に囁きかける。これではまるでヤクザの脅しのようなものだ。お前は黙ってケツを突き出しておけ、そう言われているようなものだ。やりたい放題にやられている立成であっても、いくら理不尽なことを言われているとはいえ、さすがにひるんでしまう。

 三浦は立成の尻・・・同じ男の、それも毛だらけの汚い尻・・・に触れることに臆することなく、叩きつけた手はそのままに、肉厚のケツタブを鷲掴みにした。

「ほら行くぞ!カウントダウンだ!3!」
「やめ、やめっ・・・」

 唐突に始まる地獄へのカウントダウン。立成にはその数字を止める術などない。

「「「2!」」」
「頼む・・・」

 周りの親父たちも三浦に声を合わせる。立成の声が掠れる。時間がない。

「「「1!」」」
「ひっ・・・」

 さらにぎゅっと尻タブを強く掴まれる。もう本当に・・・

「おらぁっ!!」
「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 ガバッと一気に、そして無理やりに広げられた立成のケツタブ。
 そのありあまる尻肉をもってしても、三浦の手に逆らうことなどできなかった。
 降参だ。立成は白旗の雄の叫びをとどろかせてしまった。

 三浦の手により開かれた立成の尻の谷間。
 そこに現れるは漆黒の闇。
 縮れて丸まった長いケツ毛がボーボーに生い茂るどこまでも続くケツ毛地獄。
 黒、黒、黒、黒。どこを見ても黒。どこまでも黒・・・

「あ・・・あ、あ・・・・・」

 生尻を見られるときよりも、もっとあっけないものだった。立成は何も出来ず、さらなる恥を上塗りしてしまっていた。
 湧き上がってくる底知れぬ羞恥心。意味もなく漏れ出る声。とっくに赤くなっている顔。その紅が、立成のうなじや首筋、肩や背中にまでも伝染していく。自分のケツを割られてその中身を見られているという事実が、どこか他人事に思えてしまうほどだった。いや、そう思わないと精神が持たなかったのかもしれない。

「な、なんじゃこりゃあ・・・」
「け・・・毛がびっしりじゃねぇか」
「うわぁ・・・これは・・・」
「ケツタブよりもっと汚ねぇなぁ・・・・」
「真っ黒だな・・・」
「マジかよ、こんなケツがあんのかよ・・・」
「こんなにケツ毛が濃い奴がいるのか・・・・」

 三浦がカウントダウンしている間、親父たちは立成を辛く罵倒する準備をしていたはずだ。
 しかし、いざ目の前に現れた景色は、そんな親父たちの想像を絶するものだったのだろう。

 こんなケツがあるのだろうか。
 ここまでケツ毛が濃い人間がいるのだろうか。
 そんな思いが見え隠れするような

 先ほどまで絶好調だった親父たちのボルテージが下がっていく。立成のケツ毛によりそこまでの精神的苦痛を与えていたのだろう。まるでこの世界には輝きしかないと信じ切っている青き少年が、この世界の最悪な現実としてグロテスクなスナッフフィルムを見せられてしまった後のように、いい年の親父たちでさえも言葉を失ってしまっていた。

「あ、あぁ・・・」

 言葉を失ったのは立成も同様だ。

 こんなにも大勢の前でケツを無理やり開かれた。
 こんな思いになるだなんて知らなかった。
 こんなひどい仕打ちを受けるなんて、もはや自分が人間ですらないように思えてしまった。
  
 本気で親父たちに引かれてしまっている。
 自分のケツの中まで見られて、恐怖さえも感じさせている。
 そんなケツの持ち主である自分を恥じた。消えてしまいたいと思ってしまった。

 立成が自分のケツに恥じているときに、違った意味で意気消沈の雰囲気が漂う親父たち。
 そこに沼田が前に出た。

「カカカカカッ!これはこれは!立派だぁ!なんて立派なケツ毛なんだっ!!」

 笑い飛ばした。

 これまでの紳士面していた沼田とは思えないほどの大声で、そしてひどく侮辱した言葉だった。
 言葉遣いも経営者らしく丁寧だったものだから、そのギャップに立成が、いや親父たちもたじろぐ。

 なぜそんな対応ができる?こんなものを目の前にして?

 親父たちはそんな視線を沼田に送る。

 ある者は、やはり社長としての器の違いを感じたのかもしれない。

 しかし、そうではない。

 5月の大会のときの更衣室。既に沼田は知っていたのだ。見ていたのだ。
 この世界史教師のケツの秘密を。その中に潜めている、惨たらしい現実を。だからこそ、心構えができていたのかもしれない。いや、もしかしたら、沼田はやはり、男の・・・・

「本当に素晴らしいですな、立成先生」

 沼田は立成の尻の近くにしゃがみこむ。立派に赤く腫れた立成の尻タブを、年期のはいった皺だらけの手で撫で廻す。

「立成先生、こんなにケツ毛生やしておきながら、毎日授業をなさっているのですか?ん?ん?」
「うっ・・・ど、どうでも・・・どうでもいいだろっ!」

 ペチン、と尻をはたかれながら屈辱的に愚弄された立成は、渾身の反逆を見せた。
 何の因果関係があるというのか。授業内容とケツ毛をなぜ持ち出して来るというのだ。

「このような尻を隠し持っておいて、生徒に恥ずかしくないのですか?教師がこんなケツをしていて申し訳ないと思わないのですか?生徒の親にはどう説明なさるつもりですかな?」
「そんな、そんなことをっ・・・・!」

 揚げ足をとったような沼田の言い分。言いがかりも甚だしい。

 しかし・・・

 この異常すぎる宴会場の雰囲気。
 味方は誰もいない、孤軍奮闘するしかないこの状況。
 見られたくないものほど見られてしまう悪循環の仕打ち。
 一種の催眠状態に陥ってもおかしくないのかもしれない。
 
 もう、何も言い返せない。
 こんなにもおかしなことを言われているというのに、そう言われると、自分の方が間違っているようにも感じられてきてしまう。自分がケツ毛を生やしていることがとんでもない罪であるように感じてしまう。

 その後も沼田から投げかけ続けられる揶揄いの言葉たち。
 そんな自分たちの上司、会社の社長の口から発せられるものによって、立成が披露したケツ毛によりお通夜状態だった親父たちからも少しずつ声が上がっていく。

「全国大会に出る学校なんだろ?」
「そんなんで生徒に指導できんのかよ!」
「こんなにケツ毛を生やしがやって!」
「身だしなみはきちんとしておけよな!」
「ジャングルみたいなケツ毛だななぁ!」

 再燃する誹謗の声。もはや立成は泣きそうになっていた。
 見せる場所じゃない、いや、見せる必要がない場所まで無理矢理見られて、こんなことまで言われて。自分にどうしろいうのだ。

 そんな中で、三浦も気分を持ち直したのか、声をあげる。

「どうだ、お前ら。この先生のケツ毛検査、検査結果の判定はどうなる?」
「不合格だ!不合格!」
「教師失格のケツだ!」
「ちゃんと手入れしとけ!」
「身だしなみは大事だぞ!がははは!」
「だ、そうだ。残念だったな、立成先生よ」
「ぐっ・・・くそっ・・・」

 三浦はかつてはかなりの武闘派だったのだろう。このような下僕のような獲物を目の前にして、血が騒いでいるかのようだった。そんな様子に、沼田も安心したかのような表情だ。

「さーて、どうするかね。検査に引っ掛かっちまった立成先生には、もっと念密に検査してやる必要があるよなぁ?それじゃ、頭髪検査をやったんだから次にやるのは決まってるよな。今から先生の持ち物検査検査してやってやろうぜ」

 持ち物検査・・・? 
 
 親父たちは一様に何をする気だ?という顔をしながら、言い出しっぺの三浦を見やる。
 そんな視線に満足した三浦は、色黒で迫力のある顔をニヤリと微笑を浮かべながら右手の人差し指で立成のある部位を指さした。
 それは、立成の尻の割れ目だ。

「この先生のケツの穴だよ。肛門検査だ」
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