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顧問2年目07月
顧問2年目07月 9
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「「「おおおおおおおっ!!」」」
「あ、あ、あぁぁぁっ・・・」
とうとう、暴かれてしまった立成の尻。必死に守ろうとしていた秘密の尻。既に丸出しにされてしまった立成の恥ずかしい尻。
「ヒューっ!」
「何だこれー!」
「うわぁ・・・」
逞しい太股から、一段も二段も盛り上がって膨らんでいる尻肉。
発達した腰周りからさらに膨らみのある、まるで女の臀部のように横に張った尻の形。
30を超えて少しずつ荒くなりつつある肌の質感。
そんな肌など見えないかのように、尻タブ一面に雄臭く生え揃っている黒い毛並み。
そして、上に乗る三浦の両手による激しく折檻されたことを物語る紅の手痕。
大勢の男たちの前で。
15人の浴衣姿の親父たちの前で。
ダサいと言われた、可愛いとまで侮辱れた、赤地に黒チェックのボクサーブリーフまでもずり下げられてしまったのだ。
絶対に見られたくない、見られたくなかった自分の尻を明らかにされてしまった。
そう。見られた。見られているのだ。見られてしまっているのだ
「あ、あ、あ・・・・・」
30もの親父たちの視線が丸出しのケツに突き刺さる。
宴会場に効かせてある空調の冷風により肌表面が撫でられる。
白色蛍光灯の無機質な光が尻の全容を容赦なく照らし出す。
立成にはもうできることなどない。
両目は見開き、口は半開きだ。真っ赤に染まっていた顔色はどことなく白んでいるようにも見える。
抗うべきことなどないのだ。親父たちに抑えられた両腕を再度暴れさせるほどの気力もなかった。時すでに遅しだ。壊れたからくり人形のように、意味のない呻きを漏らすだけになっていた。
それほどまで、立成は何も考えられないほどまでに放心している。
これまでの人生においてこんなことがあっただろうか。
こんなにも惨めで恥ずかしい思いをしたことはあっただろうか。
これだけの大人数を前に、己の恥部を無理矢理晒されてしまうことが、あっただろうか。
脱がされた。そう、脱がさてしまったのだ。
こんなにも大勢の前で、無理やりに自分の尻を丸出しにされてしまったのだ!
「出た~!」
「やっぱケツがデカいな!」
「真っ赤に腫れてんじゃねぇか!痛そ~!」
「生だとまたでぇっっっけぇぇぇぇケツだな!」
「バレーボールよりもデカいぞ!それが2個もあんだからな!」
「おいおいおいおい!毛だらけじゃねぇか!」
もう、立成の耳には入ってこない。いや入ってはいるが、言語として処理できない。ただの音でしかない。
それでも、その1つ1つが、自分の丸出しの尻を嘲笑する言葉であることは、その音の響きと親父たちの言い方でわかってしまっていた。わかってしまうからこそ、親父たちの言葉が、声が聞こえてくるその度に、腫れあがった尻がジンジン痛んでいるのも忘れてしまうほどに尻を突き出したそのデカい身体を震わせるほどの羞恥心が身体の中から湧いて出てくるのであった。
「どうだ、このケツ、皆はどう思う?綺麗なケツだと思うか?これが綺麗ななケツだと言えるか?」
征服者、三浦が周囲の親父たちに問いかける。その顔付きはもともと厳つい顔ではあったのだが、このように立成を虐める行為をしているからだろうか。その迫力はさらに増しているように見えていた。
もうやめてくれ。そんなことは聞かないでくれ。
訴える気力もなく、いや声を出すのもはばかれてしまっていた。
もう何も見られたくないという思いからか、痛くなってしまうのも厭わずに自分の顔を畳みに押し付けてしまう。こんなケツをしている自分の顔を隠してしまいたい。ケツを見られている自分の顔を無くしてしまいたい。そんな思いだった。
「ははは!これはこれは!」
「こんな汚えケツ見たことねえぞ!」
「きれいとか汚いとか以前だ!毛だらけだからな!」
「野獣だ、野獣!」
「でけぇケツにこれだけ毛が生えてんだからな!」
「こりゃ獣だ!獣のケツだ!ぐわははははっ!」
思い思いの声をあげる親父たち。
立成の生尻に対する率直な評価をしている。
15人もの年を重ねた審査員たちに自分の尻を見定められ、あまりにも辛い現実を突きつけられていた。
立成はそんな尻の評論を受け、身悶えするような気持ちを押さえつけている。
果たして、本当に立成の尻はそこまで汚いというのだろうか。
そんなことはない。恥ずべきものではないのだ。大人の男。独り立ちした雄。その尻はこれだけ大きく、そして毛が生えてこそのものであるはずなのだ。親父たちも面白がって言っているだけの者もいるだろう。確かに、立成の尻は骨盤がしっかりとしている。かつて鍛えた名残としてのがっしりと逞しい大殿筋がある。その上にストレスの多い教師生活で蓄えた、いや蓄えてしまった脂肪がたっぷりと乗っている。だから、尻が非常にデカく膨らみがあるのだ。おまけにその表面には黒々とした毛に覆われてしまっている。しかし、そんな尻の特徴を、短絡的に『汚い』と結びつけるのは早急過ぎる判断のはずだ。『男らしい』と評すべきなのだ。『雄臭い』と感嘆すべきなのだ。だが、親父たちは絶対にそうは言わない。何より、男の尻など普段から興味はないのだ。ただ、馬鹿にできればそれでよいのだ。このような評価をされるのは至極同然だ。
だが、それが立成にはわかっていない。ただ、自分の尻の汚さを恥じている。自分の尻のデカさを忌み嫌っている。これだけの大人の男達から見ても、自分の尻が汚く醜く、嘲笑の対象となることを受け入れてしまっている。
「だ、そうだ。そういや、先生はさっき、自分のケツはきれいだって言ってただろ?」
「・・・そ、そこまでは言っていないっ!そんなこと言ってないっ!」
身体の中が羞恥に燃える中、辛うじて返答する。
もはや言いがかりだ。そんなことは言ってはいないのだ。
立成だって自覚がないわけではない。思えば、筒井に弄ばれてから強烈に抱いてしまった自身の尻へのコンプレックス。しかし、それ以前からも、そこまで強く恥じてはいなかったものの、似たような思いは抱いていたのだ。多感な思春期自体。同級生よりも大きな自分の尻。大人たちよりも毛深い自分の尻。気づいていた。気になっていた。人に何かを言われたくない部位ではあった。それでも、大人になるにつれて恥の情念は諦観に変わり、によって薄まっていったのだ。こんな経歴を積んでいるのだから、立成は自分の尻が汚いとまでは思わずとも、きれいだとは冗談でも言えないはずだった。
そうだというのに、三浦は何を言っているのだ。酔っ払って記憶が混濁しているのだろうか。
「そうか?」
「言ってたぞー!」
「あぁ言ってた言ってた!『俺のキレイなケツを見てくださいー!』って言ってたぞ!」
「かかかっ!そうだな、言ってたなそんなこと!」
「だ、そうだ」
「そんな・・・そんな・・・」
張り切って悪ノリする親父たち。
もはや前後関係の正確さなどこの状況では意味がない。
今この場に必要なのは今この瞬間における面白さ、盛り上がり。それだけだった。
その流れにより、今や親父たちからの立成の人物像は、浅ましくも自分のケツを突き出しながら、自分のケツを見てほしい、自分のケツは自慢のケツだと喚いている変態教師であるかのように扱われてしまったのだった。そんな輩に対する扱いなど、普通の人間への対応と変わっていくのは当然の流れとなってしまう。現に、親父たちの立成へのいびりは白熱し、これまで以上に一気にエスカレートしていった。
「ほら、もっとケツを突き出せよ!」
「ひっ!や、やめ・・・」
「ははっ!ケツ揺らすなって!」
「さっきまでの威勢はどうしたんだい?先生よお」
「ケツ見られちまって降参ってか?」
「そりゃ見せたくないのもわかるわ。こんな汚ねぇケツなんだからよ」
「恥ずかしいのか?ん?恥ずかしのかぁ?」
「そんな、そんな・・・」
親父たちのぞっとするような無自覚な言葉攻めにより、立成は頭がクラクラしてきた。
恥ずかしいを通り越し、何が何だか分からなくなる。
自分が一体何者なのか。自分の存在理由が。まるで、このために生きて来たのではないかと錯覚してしまう。
この親父たちに馬鹿にされるために野球部に打ち込んで身体を鍛えたのではないか。
この親父たちにケツを評されるためにこの旅館に来たのではないか。
この親父たちに汚いケツを晒すために自分は生まれて来たのではないか。
それは明らかに世迷い事ではあるが、それほどまでに立成は追い詰められてしまっていた。
それと同時に、そのように自分が征服されていることの妄執に憑りつかれた立成は、そんな辛い現実を打ち消そうと、自らの身体の内側から、その身と心を護らんと抗い始める。それは立成の身体に、形となって目に見えるような変化を呼び起こす前触れだった。
「教師のクセに嘘をついた先生には、何か罰を与えてやらねぇとなぁ」
ヒクっと身体がすくむ。
罰・・・だと?
ケツをしばかれて、無理やりケツを丸出しにされた挙句、まだ何かをされないといけないのか?
焦燥感に襲われる。何をされる?何で?
「何をしてやろうかねぇ。なんかねぇか?この先生にぴったしなおしおきがな」
「・・・んはぁぁぁっっ・・・・!!」
上に乗った三浦は、立成の尻を撫でながら問いかける。そのガサガサで体温の高そうな掌の感触をケツタブに感じ、ひどく情けない鳴き声をあげてしまう。それと同時に、またも尻を叩かれてしまうことを恐れて身体を縮こまらせてしまっていた。
「もっとケツ叩いてやれよ」
「もう疲れたっつーの!なんかないのか?お前らも昔は教師には嫌な思い出でもあるだろ?それのやり返しってことでもいいからさ」
「そういや俺さぁ、昔教師で嫌な思い出があったんだよなぁ」
三浦の問いかけに応えたかのように、頭が禿げ上がっている太った中年男が、ぼそっと独り言のように言った。この宴会場に入った立成を、最初に手招きした親父だった。
「何の話だよ柏田」
「俺だけすげぇ目の敵にされてたんだよねぇ。俺もそいつが嫌いでさ。で、なんかのときにそいつが俺の前に立って俺を睨んできたからさ、俺も反抗的にやり返したんだけど、そしたらその先公、いきなり俺の顔殴りやがったんだよ」
柏田と呼ばれた男の淡々とした話が続いている。
結論が見えない話し方ではあるが、それは長年の付き合いでわかりきっているのだろう。周囲の親父たちは黙ったままだ。それでも今この場に関係ある話なのかどうか。かわかりかねる親父たちは、皆一様に怪訝そうにしながらも、柏田の話を遮らないで耳を傾けていた。
「だからそん時ばかりはその教師を本気で殴ってやろうと思ったんだよねー」
「えっ、それで終わり?」
「何だったんだこの話・・・」
「それって何のときのやつだよ?」
「あれ、なんのときだっけ?・・・あぁ、あれだ、頭髪検査のときだ」
一拍おいて、あー、という賛同の声が上がる。
「うわー!!懐っつかしー!」
「あったなー、頭髪検査!あれほんと意味わからんかった」
「眉毛より前髪伸ばすのがだめってどういうことだよ」
「うちは坊主しかできなかったよ」
「もみあげの長さとかどうでもいいてのなぁ!」
「俺も良い思い出無ぇなぁ。いっつも俺のこと怒鳴りまくった教師がいたしなぁ。あいつ、馬鹿じゃねぇの」
「つーか、今のお前なら即合格だろ、その検査。髪がもう大分・・・」
「うっせーー!」
ふと飛び出た発言に、意外にも話が広がっていった。
「ははっ、頭髪検査か。上手いこと言うな!」
三浦が手を叩き喜ぶ。何か腑に落ちるようなことがあったかのようだった。
「それじゃ、先生への罰は、頭髪検査ってことにするか!」
急遽、矛先を戻されてしまった立成は、訳が分からない。
本当に、何を言っているのか分からない。
先ほど三浦が言った『罰』・・・そんなものすらないはずだというのに、その上に頭髪検査を受けさせられることなど、こんな状況でなくても理解できないものだろう。
「なんだよ、別にいいだろ。そんなこの先生は髪短いし」
「違えよ。頭髪検査っつっても髪じゃない。これだよ」
三浦の手がパシッと立成の生の尻タブを軽くはたく。
「んんっ!」
「これだよ。このケツだよ。この先生のケツ毛を検査してやるんだよ。ケツ毛っつっても今見えちまってるケツタブじゃねぇぞ。そこが毛だらけだっていうのはもうわかっちまったんだからな!ガハハッ!」
改めて言葉にされてしまい身を焦がす立成。
言わないでくれ。言わないでくれ。言わないで・・・・
そんな立成の気持ちなど考えもせず、三浦は手を人差し指だけ立てた。その指を立成の露出したケツの割れ目にあてがい、そのまま谷間に沿ってソローっとなぞり下ろした。
「ひっ・・・」
「検査すんのはこのケツの割れ目ん中だ」
「あ、あ、あぁぁぁっ・・・」
とうとう、暴かれてしまった立成の尻。必死に守ろうとしていた秘密の尻。既に丸出しにされてしまった立成の恥ずかしい尻。
「ヒューっ!」
「何だこれー!」
「うわぁ・・・」
逞しい太股から、一段も二段も盛り上がって膨らんでいる尻肉。
発達した腰周りからさらに膨らみのある、まるで女の臀部のように横に張った尻の形。
30を超えて少しずつ荒くなりつつある肌の質感。
そんな肌など見えないかのように、尻タブ一面に雄臭く生え揃っている黒い毛並み。
そして、上に乗る三浦の両手による激しく折檻されたことを物語る紅の手痕。
大勢の男たちの前で。
15人の浴衣姿の親父たちの前で。
ダサいと言われた、可愛いとまで侮辱れた、赤地に黒チェックのボクサーブリーフまでもずり下げられてしまったのだ。
絶対に見られたくない、見られたくなかった自分の尻を明らかにされてしまった。
そう。見られた。見られているのだ。見られてしまっているのだ
「あ、あ、あ・・・・・」
30もの親父たちの視線が丸出しのケツに突き刺さる。
宴会場に効かせてある空調の冷風により肌表面が撫でられる。
白色蛍光灯の無機質な光が尻の全容を容赦なく照らし出す。
立成にはもうできることなどない。
両目は見開き、口は半開きだ。真っ赤に染まっていた顔色はどことなく白んでいるようにも見える。
抗うべきことなどないのだ。親父たちに抑えられた両腕を再度暴れさせるほどの気力もなかった。時すでに遅しだ。壊れたからくり人形のように、意味のない呻きを漏らすだけになっていた。
それほどまで、立成は何も考えられないほどまでに放心している。
これまでの人生においてこんなことがあっただろうか。
こんなにも惨めで恥ずかしい思いをしたことはあっただろうか。
これだけの大人数を前に、己の恥部を無理矢理晒されてしまうことが、あっただろうか。
脱がされた。そう、脱がさてしまったのだ。
こんなにも大勢の前で、無理やりに自分の尻を丸出しにされてしまったのだ!
「出た~!」
「やっぱケツがデカいな!」
「真っ赤に腫れてんじゃねぇか!痛そ~!」
「生だとまたでぇっっっけぇぇぇぇケツだな!」
「バレーボールよりもデカいぞ!それが2個もあんだからな!」
「おいおいおいおい!毛だらけじゃねぇか!」
もう、立成の耳には入ってこない。いや入ってはいるが、言語として処理できない。ただの音でしかない。
それでも、その1つ1つが、自分の丸出しの尻を嘲笑する言葉であることは、その音の響きと親父たちの言い方でわかってしまっていた。わかってしまうからこそ、親父たちの言葉が、声が聞こえてくるその度に、腫れあがった尻がジンジン痛んでいるのも忘れてしまうほどに尻を突き出したそのデカい身体を震わせるほどの羞恥心が身体の中から湧いて出てくるのであった。
「どうだ、このケツ、皆はどう思う?綺麗なケツだと思うか?これが綺麗ななケツだと言えるか?」
征服者、三浦が周囲の親父たちに問いかける。その顔付きはもともと厳つい顔ではあったのだが、このように立成を虐める行為をしているからだろうか。その迫力はさらに増しているように見えていた。
もうやめてくれ。そんなことは聞かないでくれ。
訴える気力もなく、いや声を出すのもはばかれてしまっていた。
もう何も見られたくないという思いからか、痛くなってしまうのも厭わずに自分の顔を畳みに押し付けてしまう。こんなケツをしている自分の顔を隠してしまいたい。ケツを見られている自分の顔を無くしてしまいたい。そんな思いだった。
「ははは!これはこれは!」
「こんな汚えケツ見たことねえぞ!」
「きれいとか汚いとか以前だ!毛だらけだからな!」
「野獣だ、野獣!」
「でけぇケツにこれだけ毛が生えてんだからな!」
「こりゃ獣だ!獣のケツだ!ぐわははははっ!」
思い思いの声をあげる親父たち。
立成の生尻に対する率直な評価をしている。
15人もの年を重ねた審査員たちに自分の尻を見定められ、あまりにも辛い現実を突きつけられていた。
立成はそんな尻の評論を受け、身悶えするような気持ちを押さえつけている。
果たして、本当に立成の尻はそこまで汚いというのだろうか。
そんなことはない。恥ずべきものではないのだ。大人の男。独り立ちした雄。その尻はこれだけ大きく、そして毛が生えてこそのものであるはずなのだ。親父たちも面白がって言っているだけの者もいるだろう。確かに、立成の尻は骨盤がしっかりとしている。かつて鍛えた名残としてのがっしりと逞しい大殿筋がある。その上にストレスの多い教師生活で蓄えた、いや蓄えてしまった脂肪がたっぷりと乗っている。だから、尻が非常にデカく膨らみがあるのだ。おまけにその表面には黒々とした毛に覆われてしまっている。しかし、そんな尻の特徴を、短絡的に『汚い』と結びつけるのは早急過ぎる判断のはずだ。『男らしい』と評すべきなのだ。『雄臭い』と感嘆すべきなのだ。だが、親父たちは絶対にそうは言わない。何より、男の尻など普段から興味はないのだ。ただ、馬鹿にできればそれでよいのだ。このような評価をされるのは至極同然だ。
だが、それが立成にはわかっていない。ただ、自分の尻の汚さを恥じている。自分の尻のデカさを忌み嫌っている。これだけの大人の男達から見ても、自分の尻が汚く醜く、嘲笑の対象となることを受け入れてしまっている。
「だ、そうだ。そういや、先生はさっき、自分のケツはきれいだって言ってただろ?」
「・・・そ、そこまでは言っていないっ!そんなこと言ってないっ!」
身体の中が羞恥に燃える中、辛うじて返答する。
もはや言いがかりだ。そんなことは言ってはいないのだ。
立成だって自覚がないわけではない。思えば、筒井に弄ばれてから強烈に抱いてしまった自身の尻へのコンプレックス。しかし、それ以前からも、そこまで強く恥じてはいなかったものの、似たような思いは抱いていたのだ。多感な思春期自体。同級生よりも大きな自分の尻。大人たちよりも毛深い自分の尻。気づいていた。気になっていた。人に何かを言われたくない部位ではあった。それでも、大人になるにつれて恥の情念は諦観に変わり、によって薄まっていったのだ。こんな経歴を積んでいるのだから、立成は自分の尻が汚いとまでは思わずとも、きれいだとは冗談でも言えないはずだった。
そうだというのに、三浦は何を言っているのだ。酔っ払って記憶が混濁しているのだろうか。
「そうか?」
「言ってたぞー!」
「あぁ言ってた言ってた!『俺のキレイなケツを見てくださいー!』って言ってたぞ!」
「かかかっ!そうだな、言ってたなそんなこと!」
「だ、そうだ」
「そんな・・・そんな・・・」
張り切って悪ノリする親父たち。
もはや前後関係の正確さなどこの状況では意味がない。
今この場に必要なのは今この瞬間における面白さ、盛り上がり。それだけだった。
その流れにより、今や親父たちからの立成の人物像は、浅ましくも自分のケツを突き出しながら、自分のケツを見てほしい、自分のケツは自慢のケツだと喚いている変態教師であるかのように扱われてしまったのだった。そんな輩に対する扱いなど、普通の人間への対応と変わっていくのは当然の流れとなってしまう。現に、親父たちの立成へのいびりは白熱し、これまで以上に一気にエスカレートしていった。
「ほら、もっとケツを突き出せよ!」
「ひっ!や、やめ・・・」
「ははっ!ケツ揺らすなって!」
「さっきまでの威勢はどうしたんだい?先生よお」
「ケツ見られちまって降参ってか?」
「そりゃ見せたくないのもわかるわ。こんな汚ねぇケツなんだからよ」
「恥ずかしいのか?ん?恥ずかしのかぁ?」
「そんな、そんな・・・」
親父たちのぞっとするような無自覚な言葉攻めにより、立成は頭がクラクラしてきた。
恥ずかしいを通り越し、何が何だか分からなくなる。
自分が一体何者なのか。自分の存在理由が。まるで、このために生きて来たのではないかと錯覚してしまう。
この親父たちに馬鹿にされるために野球部に打ち込んで身体を鍛えたのではないか。
この親父たちにケツを評されるためにこの旅館に来たのではないか。
この親父たちに汚いケツを晒すために自分は生まれて来たのではないか。
それは明らかに世迷い事ではあるが、それほどまでに立成は追い詰められてしまっていた。
それと同時に、そのように自分が征服されていることの妄執に憑りつかれた立成は、そんな辛い現実を打ち消そうと、自らの身体の内側から、その身と心を護らんと抗い始める。それは立成の身体に、形となって目に見えるような変化を呼び起こす前触れだった。
「教師のクセに嘘をついた先生には、何か罰を与えてやらねぇとなぁ」
ヒクっと身体がすくむ。
罰・・・だと?
ケツをしばかれて、無理やりケツを丸出しにされた挙句、まだ何かをされないといけないのか?
焦燥感に襲われる。何をされる?何で?
「何をしてやろうかねぇ。なんかねぇか?この先生にぴったしなおしおきがな」
「・・・んはぁぁぁっっ・・・・!!」
上に乗った三浦は、立成の尻を撫でながら問いかける。そのガサガサで体温の高そうな掌の感触をケツタブに感じ、ひどく情けない鳴き声をあげてしまう。それと同時に、またも尻を叩かれてしまうことを恐れて身体を縮こまらせてしまっていた。
「もっとケツ叩いてやれよ」
「もう疲れたっつーの!なんかないのか?お前らも昔は教師には嫌な思い出でもあるだろ?それのやり返しってことでもいいからさ」
「そういや俺さぁ、昔教師で嫌な思い出があったんだよなぁ」
三浦の問いかけに応えたかのように、頭が禿げ上がっている太った中年男が、ぼそっと独り言のように言った。この宴会場に入った立成を、最初に手招きした親父だった。
「何の話だよ柏田」
「俺だけすげぇ目の敵にされてたんだよねぇ。俺もそいつが嫌いでさ。で、なんかのときにそいつが俺の前に立って俺を睨んできたからさ、俺も反抗的にやり返したんだけど、そしたらその先公、いきなり俺の顔殴りやがったんだよ」
柏田と呼ばれた男の淡々とした話が続いている。
結論が見えない話し方ではあるが、それは長年の付き合いでわかりきっているのだろう。周囲の親父たちは黙ったままだ。それでも今この場に関係ある話なのかどうか。かわかりかねる親父たちは、皆一様に怪訝そうにしながらも、柏田の話を遮らないで耳を傾けていた。
「だからそん時ばかりはその教師を本気で殴ってやろうと思ったんだよねー」
「えっ、それで終わり?」
「何だったんだこの話・・・」
「それって何のときのやつだよ?」
「あれ、なんのときだっけ?・・・あぁ、あれだ、頭髪検査のときだ」
一拍おいて、あー、という賛同の声が上がる。
「うわー!!懐っつかしー!」
「あったなー、頭髪検査!あれほんと意味わからんかった」
「眉毛より前髪伸ばすのがだめってどういうことだよ」
「うちは坊主しかできなかったよ」
「もみあげの長さとかどうでもいいてのなぁ!」
「俺も良い思い出無ぇなぁ。いっつも俺のこと怒鳴りまくった教師がいたしなぁ。あいつ、馬鹿じゃねぇの」
「つーか、今のお前なら即合格だろ、その検査。髪がもう大分・・・」
「うっせーー!」
ふと飛び出た発言に、意外にも話が広がっていった。
「ははっ、頭髪検査か。上手いこと言うな!」
三浦が手を叩き喜ぶ。何か腑に落ちるようなことがあったかのようだった。
「それじゃ、先生への罰は、頭髪検査ってことにするか!」
急遽、矛先を戻されてしまった立成は、訳が分からない。
本当に、何を言っているのか分からない。
先ほど三浦が言った『罰』・・・そんなものすらないはずだというのに、その上に頭髪検査を受けさせられることなど、こんな状況でなくても理解できないものだろう。
「なんだよ、別にいいだろ。そんなこの先生は髪短いし」
「違えよ。頭髪検査っつっても髪じゃない。これだよ」
三浦の手がパシッと立成の生の尻タブを軽くはたく。
「んんっ!」
「これだよ。このケツだよ。この先生のケツ毛を検査してやるんだよ。ケツ毛っつっても今見えちまってるケツタブじゃねぇぞ。そこが毛だらけだっていうのはもうわかっちまったんだからな!ガハハッ!」
改めて言葉にされてしまい身を焦がす立成。
言わないでくれ。言わないでくれ。言わないで・・・・
そんな立成の気持ちなど考えもせず、三浦は手を人差し指だけ立てた。その指を立成の露出したケツの割れ目にあてがい、そのまま谷間に沿ってソローっとなぞり下ろした。
「ひっ・・・」
「検査すんのはこのケツの割れ目ん中だ」
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