生徒との1年間

スオン

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顧問2年目06月

顧問2年目06月 21

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事後の会話。
帰ってから筒井に何かを感づかれるが、何もない。ただの伏線である。でも、筒井とはちょっといい感じに描く


 虚ろな目線が狭い室内を彷徨う。
 散々に身体をなじられ、尻を叩かれ、肛門をぐちゃぐちゃに掻きまわされたうえに、待ちに待った射精を終えた後の気だるい身体は床を這いつくばったままであり、もはや動かすような気力すらない。
 部屋を漂うのは漂う男の汗の匂いと、床に広がる白濁した大量のザーメンから放たれている雄汁の匂い。それらが目に見えてしまいそうなほどにムンムンと漂うそれらの熱気が、明らかに情事の後を思わせていた。
 
「ん・・・」

 叩かれいじくりまわされてしまった尻を撫でまわされていた。発達した大殿筋を、まるで可愛いペットを撫でるかのように弄られている。
 尻に直に感じるその手の大きさから、背後にいる人間が自分を敬愛してくれているあの生徒なのではなく、知り合いの教師の仲間のオヤジであり、射精まで導いた者であることを立成に思い出させていた。それを考えると、立成は身が締まる思いだった。いくら交流のある教師仲間で普段からふざけた物言いや下ネタを繰り返すようなデリカシーが無い男が相手だとは言え、先ほどまでのあんなにも醜態をさらしたとなれば、羞恥を覚えない者などいないだろう。
 それでも、あまりにも続けられる尻への愛撫に、立成は僅かではあるがその身を震わせながら声が漏れ出てしまった。

「う、うう・・・」
「おいおい、またそんな声を出すんじゃないよ、こっちが困っちまうだろ」
「えっ」
「ははは、久しぶりに俺もこんなに元気になっちまったよ、どうしてくれるんだ、立成先生?あんたがあまりに乱れるからこんなになっちまったよ」

 四つん這いの状態から思わず背後を振り返る。
 そこにあったのは相変わらずのひょうきんな表情をした清野の姿だった。しかし、その顔はほんのりと赤くなっている。

「すげぇよな、あんたみたいな男が相手でも、こんなんなっちまうなんてな。まぁ、あれだけ“あーん、あ~~ん”なんて喘がれちまったら、こっちまでおかしくなっちまったのかもな」

 相変わらず立成を嘲笑するかのようなその言い方に更なる羞恥を覚えながらも立成は見た。ゆとりのあるスラックスに包まれている、清野の下腹部を。
 そこには、あきらかに男のアレが、興奮状態の時に示される生体反応が現れていることがわかるほどの膨らみがあったのだ。

(あ、あれが、清野先生の・・・?)
 
 同じ男の性器など、嫌悪の対象でしかなかったはずだというのに。見るのも嫌であるのは変わりないはずであるというのに。
 その漢の象徴の形や大きさが丸わかりになるほどに膨らんだ様を目にした立成は、口内に湧き上がってくる唾液の泉を、必死になって飲み込むことしかできなかった。

(そういえば、尻には指しか挿れられなかったんだっけ・・・)

 そう思うことを自体がおかしいことであるのはわかっているというのに。
 とても正常な思考とは思えないような考えが立成の脳裏に浮かび、そんな考えが浮かぶこと自体を否定しようと頭を振る。

 しかし。

 相変わらず清野に対して尻を捧げるように突き出したままの自分。
 その恥ずかしいほどにデカい尻は否が応でも清野の視界に入っているだろう。

 こんな状況で、この後、どうなるというのか。
 まさか、あの清野が、自分の尻を・・・・・
 いや、妻帯者の男が、同性の男にそんなことをするとは・・・・

 瞬間的な間ではあるが、様々なことを逡巡してしまう立成。頭の中で仮定と否定が繰り返される。そして、それらは自然と具体的なイメージを伴って映し出される動画として脳内で再生されてしまっていた。

(俺は・・・清野先生にヤられるのか・・・?)
 
 浮かび上がる想像は止まらなかった。
 否定しようと奮闘しても、清野に抱かれる淫らな自分の姿を次々と思い描いてしまう。

 汗ばんだ短髪から流れ落ちる汗の雫。その清野の顔は険しい。そんな表情をしているというのに、目の前にいる無様な四つん這い状態の相手の腰を両手で掴みその尻の割れ目に鎮座する菊穴の中へと、下半身のビンビンに勃起した一物を挿したり抜いたりを繰り返している。その様子は正に雄と呼べるような清野の姿だった。
 その下に組み敷かれているのは、紛れもなく自分だった。あられのない射精をしたばかりだというのに、その清野の一物を悦んで尻に迎え入れ、腰を前後されるだけでなんとも切ない声をあげながらも、こちらも負けずにはち切れんばかりにビンビンに勃起した一物の先端からトロトロとまた先汁を滴らせて・・・

 ゾクリとした悪寒が背筋を走る。
 とてもそんなこと、受け入れられるはずがない。
 そんなことは理屈ではわかっていた。

 しかし。
 そうだというのに、その妄想は立成の身体を焦がすような熱を持たせていた。放出を終えたはずの一物がピクリと痙攣し、しなやかな芯を持ち出してしまっていた。

(だ、だめだ、だめだ、だめだ・・・)

 もはや何も考えられなくなっていた。
 しかし、そんな立成をよそに、清野からの発言は、そのどれとも異なるものだった。

「さっ、帰ろう帰ろう。生徒たちをホテルに残しちまったからな」
「そ、そうですね、そうですよね!」

 空気を変える一言だった。
 まるで先ほどまでの壮絶な男同士の情交などなかったかのように。この漫画喫茶に入ってからの出来事など現実ではなかったかのように。

「ほれ、いつまでおケツ出してるんだ!」
「あうっ・・・す、すんません・・・・」
 
 ペチン、と優しく叩かれた尻を擦りながら 立成は立ちあがり、膝に絡まったままになっていた水色のビキニブリーフを腰まで捲し上げた。際どく薄い生地であるとはいえ、恥部を隠せたことに安堵する。
 
 とはいえ、それはあくまで形式的なものだった。肥大化はしていないとはいえ、まるで布などないかのように、確実にその輪郭を表しているその立成の一物を目にした清野は何かを言いたげではあったが、そんなことには立成は気づくことはなかった。

「じ、じゃ、帰りますかね」

 身支度を整え、店を出る。もう、いつもの2人に戻ったかのようだった。
 無理矢理といえば無理矢理だ。
 だが、ここで蒸し返すのはできなかった。
 何より、あの清野がもう、先ほどのことに触れてないことから、それは出来ることではないとわかっていた、

 相変わらずのネオン街の喧騒のなか、2人の教師は無言で歩き続けた。
 2人が顧問をしている部活の部員が射止めた、インターハイ出場へのキップ。それの祝賀会のはずだった。しかし、そんなお祝いモードもどこかに消え去り、お互い何を考えているのかわからないような状態のままの男2人の夜の散歩だった。

「じゃ、またな立成先生。また明日も頑張ろーぜ」
「はい、お疲れ様でした。おやすみなさい」

 帰りの分かれ道での形だけの交わす言葉も、いつもと違って味気ないものだった。
 
 思わず立成は清野の後ろ姿を見送っていた。
 自分が何を願っているのか、何を考えているのか、その答えを出すのを先送りしたままに。

・・・・


「あっ」
「おっ」

 ホテルのエントランスのガラス扉を開けると、ロビーのソファーで筒井が座っていた。
 ホテルといってもそんな大層なものでもない。民宿と言った方が近いかもしれない。やや広めの畳の部屋がありそこで生徒たちが雑魚寝する、いかにも部活の遠征で使用するような宿泊所だ。
 
「先生お帰り」
「あぁ・・・」
「もう0時になっちゃうよ、こんな時間まで飲んでたの?」
「いや、まぁ・・・」

 少しだけ責めるような声色だ。ソファーに座りながら立成の顔を見る目つきも心なしか刺々しさを感じる。
 それは当然だ。腐っても顧問なのだ。生徒たちの管理者なのだ。それなのに、生徒たちをほっぽり出して危うく午前様だ。いくら教師がいない方が生徒にとっては開放的な気分を味わえるとはいえ、夜遊びをしているようでは職務放棄だと捉えられても仕方ないだろう。

「お、お前こそ、こんな時間にどうしたんだ」
「ん・・・なんか、目が冴えちゃって・・・・」

 そう言いながら、気だるそうな雰囲気で手でぷらぷらと500mLペットボトルを振り回して見せる。
 その中身はすでに8割ほどなくなっていた。

 嘘だ。立成は直感でそう思った。

 多分こいつは、結構な時間・・・もしかしたら2時間くらいここにいたのだ。
 そして、それはきっと、自分を待っているため・・・?

 理由は分からないが、そうだと立成は確信した。
 ここまで健気な生徒がいるというのに、自分がさっきまでしていたことを考えると、立成は自分を恥じてしまいそうになった。

「筒井、今日はよかったな」
「それ何回目?まぁ、ありがとうだけど」
「ははは・・・」

 あまりに安っぽい、中身のない褒め言葉。
 我ながらもうちょっと何かないのかと情けなく思えるほどに飾り毛の無い台詞だった。
 それだというのに、目の前の生徒は、表情こそ変わらないものの、その声色には嬉しさを隠せないでいた。

「どうしたの、先生?」
「ん?」
「何か変」
「そ、そうか?・・・ちょっと、飲み過ぎちまったかな、ははは」
「楽しかった?清野先生と飲み会」
「ま、まぁな」
「ふうん」

 何か、感じるものがあるのだろう。
 明らかに訝しむような筒井だが、それが何なのか。まさか、目の前にいる意中の顧問の教師が、先ほどまでの数時間に、スナック嬢に着衣を全て剥ぎ取られ、見栄剥きまで、童貞であることを宣言させられ、落書きされたうえに尻穴の写真まで撮られたとは思うまい。ましてや、顔見知りである他校の顧問である清野に、尻を叩かれまくった挙句に尻穴を掻きまわされながら一物をしごかれて情けなく射精した教師だとは、想像がつく方がおかしいと言えるだろう。

 安ホテルにあるような狭いエレベータに乗り込む。どうしても身体を近づけないといけない。

「あれ、先生。飲み会行ったのにそんなに酔ってないよね。珍しい」
「ああ、さすがに飲み過ぎるのは良くないからな。清野先生も俺も、酒はセーブしてたんだよ」
「そうなんだ、たしかに、あんまりお酒の匂いはしない・・・かも」

 クンクンと鼻を日暮らせられる。
 自分の身体から雄の汁の匂いがしていないかどうか、今更ながら気になってしまう。
 しかし、その後は筒井から何も言われなかったことから、そこまでの残り香はなかったのだろう。そう信じたい。

「じゃ、そろそろ休むとするか。おやすみな。明日は団体戦だ、頑張れよ」
「うん。おやすみなさい」

 目的のフロアに到着した後、自然と別れた。
 生徒と顧問は泊まる部屋は別々だ。

 立成は部屋に戻る筒井の姿を、自然と目で追っていた。
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