生徒との1年間

スオン

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顧問2年目06月

顧問2年目06月 14

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「な、何でこんなものを・・・?」
「えぇ、だって俺達教師だろ?それならこういうのを見るのが普通だろぉ?」
「な!俺はそんなことは!」
「それにな」

 グイっと清野が立成に近寄り、その耳もとで囁く。

「あんた、虐められるのが好きなんだろ、立成先生?」

 びくっと身体が震える。
 立成の耳の穴に、清野の息までも入ってくる。酒が抜けたとはいえ、清野の口から漏れる吐息には微量ながら避酒の匂いが残っている。そのアルコール臭と生ぬるい吐息が耳を経由してもろに立成の身体に入り込み、それがさらに立成を一気に昂らせた。
 
 全てを見抜かれているような気がしてしまった。
 しかし、いくら清野とはいえ、何から何まで話すことなんてできないのだ。よくわからないが男同士としての健全な好意を示す清野にはそれなりに信頼はあるものの、筒井とのことまでを話すことはさすがにできない。今の立成はしらばっくれるしかなかった。

「何を言って」
「ふふっ、さっきのスナックで好き放題やられてたよな?顔は泣きそうになってたけどさ、なんだかんだ言って、悦んでたんじゃないか?」
「そんなことないです」
「そうかぁ?本当かなぁ」
「そんな、俺は、あのときは本当に」
「まぁいいや。今はそれは気にすんな。お。ほら、動画が始まったぞ、立成先生。見ようぜ」
「うっ・・・は、はい」

 まぁまぁまぁ、というかのように、清野が立成の隣に腰を下ろしながら、立成の太股をさすってきた。
 軽い男同士のスキンシップのつもりだろう。そこには厭らしさをかんじさせる手つきはなかった。
 しかし、立成はその清野の指が短く、厚い掌の男の手で太股を撫でられただけでも、身体の中が熱くなるのを感じてしまっていた。それを隠すのに必死なあまり、このままこの狭い部屋で2人、ぞっとするようなタイトルの動画を見ることを承諾してしまったのだった。

 清野はそのまま、立成の隣に居座る。
 清野が近いことで立成の緊張感が増す。
 人との距離が近いのもあるが、他にもある。
 本日の弓道総体の終了後、2人とも風呂に入らずに飲みに出ているのだ。
 6月とはいえ、蒸し暑い時期だ。乾いたとはいえ、雨にうたれ、そして走ったのだ。
 そんな汗と雨とそれらが生乾きになったような、独特の匂いをもった男2人が、肩がくっつきそうなほどに身を寄せ合っているのだ。どうしたって、互いの匂いを感じないわけにはいかなかった。

(うっ・・・ここまで近いと、ちょっと・・・)

 あくまで女性が性的対象の立成にとって、それはきつ過ぎる匂いだった。
 それでも、清野が隣に来ることを今更拒むことはできなかった。
 そのまま2人並んで胡坐のまま、成人男性向けの映像が流れているディスプレイを眺める。



 動画が始まっていた。
 
 ディスプレイには机や椅子が並んだ教室風の舞台にて、いかにも気が強そうな女子高生役の女優が、スーツを着た男性教師役を追い詰めていた。教卓の上に脚を組んで座り、がっしりした体格の男を見下ろす様はまさに女王様だ。

『先生、いいのかな?先生のくせに生徒のパンツなんかを盗んで』
『頼む、誰にも言わないでくれ。頼むから』
『言わないでくれぇ?それが人にものを頼む態度ぉ?』
『い、言わないでください』

 どうやらこの教師役の男優が、自分の生徒の下着を盗んでおり、それを見つけた女子生徒が告発しているシーンのようだった。
 教師役の男優は体躯が良いにもかかわらず、その身体を丸めて教卓の上にいる女子生徒にすがるようにしている。その言動が何とも弱弱しい。それに調子づいたのか、女子生徒役の恫喝するかのような態度はますます強くなっていく。

 思ったよりもわかりやすそうなストーリーだった。これなら、この先の展開も想像がつくし、そこまで変態的な内容でもなさそうだ。

 ホッとした。
 これが、自分がかつて見たことのないような内容で、それでもし反応しているのがバレてしまったら、と思うと・・・
 いくら男同士とはいえ、清野にこれ以上、恥ずかしいところは見せられなかった。それは、立成の男としての錦二でもあった。

 そんなことを考えていたら、隣から視線を感じる。またもや清野が、立成をじっと見つめていた。

「な、何ですか」
「いや、どうかなって思って」
「どうも何も」
「こういう動画、好きなんだろ?こういう妄想してるんだろ?」
「べ、別に・・・」
「抗うねぇ~。ふう~ん」

『頼む、どうかこのことは』
『むしがよすぎませんか?自分は好き放題にしておいて』
『どうすればいい、どうすれば』
『先生にも恥をかいてもらいますよ、まずは、そうだなぁ』
 
 相変わらず男優はすがるように女子生徒にひれ伏している。そして。

「それじゃ、先生にはパンツを盗まれた生徒の気持ちをわかってもらおうかなぁ。今ここで服を脱げよ」

(!)

 立成は思わず思い出していた。
  
 たしかに、動画の内容としては、予想通りではあった。
 だが、この女子生徒役の女優が、男優への辱め方は・・・・

 かつて、立成が筒井にされた、様々な凌辱行為。
 そして。

 思い出してしまったことで、立成の中心に電撃が流れたかのような衝撃が走り・・・

「おっ・・・・気のせいか?ちょっと元気になっていないか?えぇ?」
「あっ、ちが、これは」
「ふふっ、いいじゃねぇか。おうおう、相変わらず立派なチンポだな・・・こら、隠すな!」
「くっ・・・」

 思わず勃起しそうになってしまっていた。チノパンを履いているとはいえ、その布の上からでも、立成の一物の輪郭がわかりそうなほどに、立成の分身は芯を持ってしまっていた。
 立成の反応した様を目にした清野は、したり顔でにやけながらも、下卑た言葉を遠慮なく投げかけてくる。立成がその自分の恥の盛り上がりを隠そうとした手も、無慈悲にも取り払われてしまう。

 何とか怪しまれてはいなかった・・・と思う。

 立成は呼吸が乱れ始めていた。
 フラッシュバックしていたのだ。かつての筒井との行為が脳裏に流れてしまっていた。

(俺は、この動画の男のように、教室で、筒井に言われるがままに・・・)

 動画の中では女子生徒から男性教師への罵倒の言葉は続いている。

『ここ・・・で?』
『そうよ。先生は私たち生徒のパンツを盗んだんだから』
『そんな・・・できない・・・』
『そう。じゃぁ、さよなら。あたし、今から警察に行ってくるから。先生が下着泥棒だって証拠もね』
『あぁ、駄目だ、それは・・・おいっ!』

 教卓の下で跪いている教師は、その後も女子生徒に希うが、聞き入られることはなく、従うしか道はなかった。

『わ、わかった・・・ぬ、脱ぐ、脱ぐから・・・』

 男優がぶるぶると怒りと屈辱で身体を震わせながら立ち上がった。女子生徒をみる目つきも、まるで猛獣をみるかのようなものだった。
 シチュエーションものの動画であるが、なかなかの演技力だった。男優のこの怯えるさまも、迫真の演技であった。

「ほほっ、俺はこういうのはあんま見ないから、結構新鮮だな」
「・・・そうなんですか」
「ああ。生徒にいじめられるなんて、情けないにもほどがあるからな」
「そ、そうですね・・・」

 清野の言葉。

 “生徒にいじめられるのは情けない”

 清野が何気なく言ったにすぎないだろう、その言葉で、立成ははっとする。

 そう。それが普通のはずなのだ。受け入れられるはずがないのだ。

(それなのに、俺は、筒井から散々と・・・)

 これまで筒井から受けて来た数々の仕打ち。
 服を脱がされ。恥をかかされ。排泄をさせられ。尻を叩かれ。一物をいじられ。尻穴を汚され。

 ある程度の時間が経ち、そして何度も経験していたことから、立成の中ではなんとか、自分の中で正当化で来ていた部分もあった。そして、それらには確かに、筒井の優しを、そして情を感じていたのだった。

 それだというのに、今の清野の言葉により、自分自身が恥ずべき存在であることのように思えてしまった。
 そして。

(ち、違う・・・・俺は、俺は・・・)

 心の内部が冷たくなる。
 やはり自分がとんでもなく猥褻な存在であるかのように思えてしまう。
 教師という聖職にふさわしくない最下層に位置する存在であるかのように考えてしまう。

 そうだというのに、立成の筋肉と脂肪で纏われた剛健な身体は、少しずつ、少しずつ、熱を持っていったのであった。

 それでも、立成の眼の前のディスプレイは動画が止まることはない。
 あらかじめ記録されたデータのとおり、画面の中では男優がスーツを脱いでいく。
 ジャケットを脱ぎ。袖口のボタンを外し。ネクタイを緩め。ワイシャツを脱ぎ。ディスプレイの液晶は、スーツに覆われていた男優の逞しい身体が徐々に肌色になっていく様を淡々と映し出し、立成と清野の教師2人は、その様を見続けている。

『ほら、脱いだ、脱いだぞ』
『何言ってるんですか先生?』
『なっ』
『まだ半分残っているでしょ?ほや、早くズボン脱げよ』
『ぐっ・・・ぎゃあっ!!』

 待ちきれなかったのか、女子生徒は教壇から飛び降り、スラックスを脱ぐことを躊躇い突っ立っている男優尻を蹴り飛ばした。
 情けない声を出した教師役は、上半身裸のまま教室の床に崩れ落ちた。
 
 立成はゾクゾクしていた。

 自分は一体何を見ているのだ?

 女子生徒は教師役を蹴り続けている。
 教師役の男優は、自分の身を守るかの如くその巨体を丸め、何とか耐えようとしている。

 いつしか立成はこの男優に自分を重ねてしまっていた。
 これほどまでにストレートな暴力を受けたことはないというのに。
 しかし、立成の目には、男優と女子生徒が、自分と筒井として映し出されていたのだった。 
 部活の顧問に恋慕を寄せる男子生徒と、その邪な思いを辱められる形で表現されることで悦びを覚えてしまう教師として。

 それは、2人の関係の記録だった。
 誰にも見せられない、見せることができない、暴かれてはならない情欲の行為。 

 そんな2人のプライベートビデオを、清野に見られているようにも思えてしまっていた。

 清野も気づいている?
 実はとっくにバレている? 
 いや、そんなことは・・・・

 ゴクリ・・・

 立成の太い喉仏が揺れる。脳裏を様々な思いが駆け巡る。
 そんな中、ふいに清野が話しかけてきた。

「ははっ、なんか男役ばっかが映ってんなぁこれ。ハズレだったか。女優が全然映んねぇや。こんなおっさんなんかよりも女映せって感じだよな」
「そ、そうっすね」
「つまんないよなぁ」
「はい」
「ほんとかぁ?」
「ぐぅっっっ!!」

 軽やかな口調に騙されてしまっていた。
 またも清野の手が、立成の股間を触ってきていた。
 清野は確実に、確信していた。
 立成が、その身体が、この動画により反応してしまっていることを。
 そして、清野が触れて来た立成のその場所にある男の肉は、さきほど撫でられた時よりも確実に、そしてしっかりと膨張していたのだった。

「なんだなんだ!もう興奮しまくりじゃないか!」
「違う、違う!これは・・・」
「はははっ!やっぱこういうのが好きなんだぁ、立成先生は!」
「そんな、違う」

 からかうように言われと、今度こそ立成の身体が羞恥に熱を持ってしまう。
 これでは、さっきのスナックと、扱いはほとんど変わらなかった。

(何だよ・・・!さっきの謝罪はなんだったんだ、くそっ!もう終わりだ、こんなことは!)
 
 立成が憤怒を表そうとした、まさにその時。

「いいぜ?やれよ」
「は、はぁ?」
「この教師役と同じようにされてみたいんだろ?」
「そんな、そんなことは」
「こんなおっさんだけど、俺が女子生徒役やってやるからさ、なぁ!」
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