生徒との1年間

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顧問2年目06月

顧問2年目06月 4

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 ちえみはソファーから少しだけ尻を浮かせ、立成の方へ身を寄せて来た。
 立成は断ることができず、その身を石のように固めながら、思わずそのキャバスーツから覗いている生肢を見てしまっていた。男の脚とはまるで違う、明らかに女を感じさせる白く細い肢。その肉感的な肢から醸し出される女のフェロモンに立成はクラクラしそうになったていた。

(うっ・・・) 
 ゴクリ・・・

 思わず生唾を飲んでしまう。
 自分の腕が、自分の身体が、女の手で撫でられている。頑強な身に纏っている筋肉を確かめているかのように。
 この日の立成は高校総体の顧問としての活動のため、普段の教師としてのスーツ姿ではなく、少しカジュアルな格好だった。半袖のポロシャツのため、剥き出しの二の腕だ。それを今、隣に座る女性の手に触れられていた。

(何だか、こそばゆいような、恥ずかしいような・・・)

 スナックの明るい照明の下、異性に身体を触れられる。
 立成の男としてのこれまでの人生において初めての経験だった。

「すごい!やっぱり硬いですね!太いし!」
「いやー、ははは」
 
 ちえみとの距離が近い。顔も。身体も。
 それに応じて、さらに女を感じてしまう。
 髪の匂い。香水の香り。触れる肌の感触。明らかに男のそれとは違う。
 女だ。女なのだ。
 
 たったそれだけだとういうのに。
 勝手に顔が沸騰してしまう。バクバクと心臓が高鳴ってしまう。ムラムラしてしまう。
 おまけに雄の本能により立成の股間も情けなくピクピクと男の性を出してしまっている。

(ま、まずい・・・)

 今にも勃起してしまいそうになる立成は、何とか隣に座っている清野に助けを求めようと視線を送る。しかし、その親父は厳つい顔にをニヤけさせ下卑た笑い返してくるだけだ。その目は『そんな顔しておいて、本当は嬉しいんだろう?』とでも言いたげだった。酔いが回っているのか、清野の血走った眼は焦点も怪しくなっていた。

「いいなーいいなー立成先生!ねぇねぇ、あやかちゃん、俺の腕なんてどう?」
「えー、清野先生のはなんか太いだけって感じ!」
「ひどい!俺だって昔は鍛えていたのに!」

 そんなちえみと立成の様子をみて馬鹿笑いしながら冷やかしてくる。
 完全に他人事・・・いや、面白がっている。
 こっちはそれどころじゃないというのに・・・

 この状況を打破する方法は簡単だ。怒鳴り散らせば、この場はもう終わりになる。
 とはいえ、そんなことをしていいはずがない。
 これは分別のある大人の遊びなのだ。酒の場でのおふざけなのだ。それがわかっているからこそ、立成はただただ隣の女性からの愛撫に身を任せ、汗をにじませながらも鼻息を荒くするしかなかった。

「彼女にも触らせてるんですか?」
「えっ?そ、そうですね」

 とっさの嘘だった。こんなこと、異性に身体を触られるなんて、立成は初めてだった。自分の些末なプライドを守るためだ。
 年齢も見た目も30を超えた男なのだ。がっしりした体躯の男ならば、当然女性にその強靭な身体を見せびらかしたりもするのだろう。ちえみが問いかけているのも、そんなところだ。軽めのナルシズム。そんなことを揶揄おうとしている。
 だが、残念ながら、立成は童貞だ。女との触れ合いなんて人生のおいて経験したことなどない。もし、今この状況で初めだ、なんてて言ったらどうなるか。ちえみから矢継ぎ早に過去の女性経験を聞かれ、最終的には、立成は屈辱の未経験であることの告白を・・・

 知らない人の前であれば、まだ耐えられるかもしれない。だが、今は清野がいる。いくら仲が良いとはいえ、清野にそんなことをばれたくはなかった。そんなこと言えるわけがない。だからこそ、今はその場限りとはいえ嘘を身に纏うしかなかった。

「へぇ・・・彼女いるんですか」
「・・・今はいないですね」

 またも嘘をついた。あたかも過去には彼女がいたかのような。
 内心の焦りは出さないように表情だけは何でもないように言ったつもりだった。ソファーに座るさまも、背筋を伸ばし、両脚を開いて男らしい座り方だ。それなのに、答えた内容はなんともみっともない虚勢だった。もっとも、そんな台詞は、童貞が虚勢を張る際の常套句であるのだが。

「ふふっ。脚もいいですか?」
「えっ・・・は、はい」

 ここは・・・スナックなんだよな?
 立成は困惑した。完全に安っぽい飲み屋の雰囲気だった。
 しかし、拒否することが躊躇われた立成は、受け入れるしかなかった。

 当然、立成が承諾したのだからちえみはその場所を触る。
 立成が履いているチノパン越しに、女の手が逞しい脚を弄ってくる。
 その指の細さからも女を感じてしまい、立成は喉もカラカラだ。

(はうっ・・・そ、そんなところまで・・・?)

 太股に触れらると、さすがにダイレクトに ”性”を意識してしまう。
 もう、肢の付け根までも撫でられている。
 あと少しで自分の一物があるのだ。少し、身体をずらしたら当たってしまう。
 
(う、動けねぇ・・・)
 
 そんな立成の思いなど知る由もなく、ちえみは立成に触る度に、硬い、太い、好みだ、という本音かセールストークかわからないような称賛する言葉をかけてくれていた。

「すごいですね。もしかして体育教師ですか?」
「いえ、違いますよ、ははは・・・」

 声が震えそうになるのを隠しながら、あからさまに乾いた笑い声でごまかしていた。
 立成の身体を触りながらも、ちえみは無邪気に破顔していた。30代の男なのだから、大人のおふざけにふさわしいリアクションがほしいところなのだろう。しかし、当の相手はというと、まるで10代前半の少年のような初心な反応しかしてこないのだ。期待外れも甚だしかった。しかしながら、”これはこれで・・・”と、立成の反応を面白がっている顔だった。

「ちえみちゃん、どうだったぁ~?」
「うん、すごい身体だった」
「いやいや、いやいや、そんな大したもんじゃ」

 一通り身体を触られたことで、ようやくちえみの手から解放された。
 よかった。やっと終わった。心の中でため息をついていた。

(でも、せっかくならもうちょっと触られたかった・・・って、イカン!何考えてるんだ!)

 自分の下品な思い付きを取り払おうと水割りに手を伸ばした。そのときに。

「立成先生はねー、胸もすごいんだよ!」
「!」

 立成は耳を疑った。
 隣に座る清野の口から出てきた言葉を、その意味を認識することができなかった。

「清野先生!なっ何を言ってるんですか!?」
「え、だってそうじゃん!せっかくだから、サービスしてあげなよ!ねぇっ!」

 清野がちえみに同意を求める。ちえみもうんうんと頷いている。
 
 立成は憔悴しながら、これ以上、触られるのか?しかも、今度は胸を・・・?
 

「せっかくなんだし、生で触らせてもらいなよぉ~」
(!・・・生・・・だと?)
 
 立成は頭がカーッとなる。それは怒りというよりも、焦燥だった。

(ここで・・・女の前で、服を脱げだと?・・・じょ、冗談じゃない、なんでそんなことまで・・・!)

 だが、立成が拒否しようとしたその前に、清野が動いた。

「ほらほら!」
「ちょ!やめ・・・」

 清野が立成につかみかかっていた。
 かなり酔っぱらっている。身体全体から酒臭い。身体を密着させられている立成の顔にも、清野の口から吐き出される生ぬるい呼吸が吐き出されている。
 それでも、明らかに力強い。冗談とは思えないような強さだった。
 体格は立成の方が上なのだ。身長だって高いし、筋肉だって多い。何より清野よりも大分若いのだ。それだというのに、今、この瞬間は、立成は清野に圧倒されてしまっていた。酔っ払いの持つ後先を考えない勢いに負けたのだろう。あっという間に、立成はソファーの上で後ろから清野に羽交い絞めにされていた。

「だ、だめですって!だめです・・・」  
「きゃー!いいぞー!」
「脱げ~!」

 2人の嬢の歓声の中、暴れる立成の耳もとで清野が囁いた。
 それでも抵抗せずにはいられない立成。がっちりとホールドされているのに、それでも逃げ出したい思いから、太く長い手足をバタバタと暴れさせる。そんなみっともない挙動が、さらに2人の嬢を喜ばせる。

「なっ、いいだろ、立成先生。こんなかわいい娘たちに触ってもらえるように協力してやるからさ!」
「そ、そんな・・・」

 全く要らないおせっかいだと思った。
 だが、それとは別に。今の清野の言葉でまたも邪な考えが立成の脳を過ってしまう。

(ま、また女に触ってもらえる・・・?)

 そんなことを考えてしまったからだろうか。
 嫌で嫌で恥ずかしいと思う気持ちは本当であるにもかかわらず、先ほどまでよりも抵抗の力が弱まっていた。イヤイヤと動かしていた腕も明らかに小さなものになっていた。そんなことだから、立成は上半身に身に付けていた、汗と雨で濡れたポロシャツを、簡単に清野の手によりいとも簡単にカバっと引っ張り取られてしまっていた。

「おお、確かに、胸も鍛えてますね。割れてる!」
「胸毛すごっ!ワイルド~!」
「乳首にも生えてるし。おへそもモジャモジャ」
「ホントだ~。モジャモジャ!あ、ちょっと脇腹は弛んでますね。うふふ、可愛い!柔らかい!」
「や、やめてください」
「ほらっ、胸も」
「あ、あああっ!」
「あらっ。いい声出ましたね」
「ほらほら。乳首もちっちゃい!」
「やっ、やめ、やめてくださいっ・・・」

 あやかとちえみが、容赦なく立成の露出した胸を、そして腹を触ってきた。
 ダイレクトに触れられる女の指の感触に悶えてしまう。
 自分の身体を見られ、弄られ。笑われ。まるでいじめられているかのような気分だった。

「せっかくだから、生足も見せてあげちゃいなよ!」
「いいぞ~!出せ出せ~!」
「やったー!」
「そんな!だめですよ!お店なんだから!」
「いいじゃんいいじゃん、見てもらいなって!さっ、ズボン脱いで!」
「は、はあーっ!?」

 もはや泥沼だった。無法地帯だった。
 自分がおかしいのだろうか?そんなはずはない。
 酔っぱらっているという理由だけではなかった。あまりにも立成が初な反応を示すことから、面白がられている。完全にオモチャにされてしまっている。立成がここまで全力で拒否しているというのに、それは受け入れられないような空気だった。

「えっもしかして恥ずかしいの?立成先生?」
「そ、そりゃ、」
「何だよ!男なんだからズボンくらいいつでも脱がなきゃ!」
「いや、そんな、女性の前ですし」
「良いよ、あたしたちは男のパンツ見ても大丈夫だから!」
「そりゃ、まぁ・・・いや、そうじゃなくて、そうじゃなくてですね」
「それじゃ、大丈夫だね♪」
「だから」
「じゃ、立成先生のパンツ当てゲームしよっか!」
「えぇ~!何それ~!」
「きゃはは!」

 さらに下卑なフレーズが聞こえてきた。ぞっとした。一体何を言い出すんだ?この親父は!

 立成は後ろを振り替える。自分への羽交い締めを続けている、阿保な提案者である清野を睨みつけた。
 だが、清野はニヤニヤした顔で応じるだけだった。

「清野先生!本当、やばいですよ!」
「えっダメ?せっかくだし、見せてやりなよ!」
「ダメです!」
「残念だなぁ、ほらー、見て。2人とも残念がってるよ」
「しかしですね」
「じゃ、代わりに俺がやろっかな♪」
「なっ!そういう問題じゃ」

 そうだった。
 清野はこういう所があるのだった。ふざけたがるのだ。おまけに、その時は立成を辱めるような事ばかりするのだ。昨年の温泉旅館のときだって・・・!
 あの時の事を思い出しただけで頭がグワングワンと回ってしまう気がした。それは酔いのせいだけではないだろう。
 そんな状況の中、立成と清野の不毛なやりとりが続いた。しかし、どうしてもその問答の行きつく先は1つしかなかった。

「・・・あー!もう!わかりましたよっ!」
「よっ!よく言った!男らしい!」
「いえ~い!」
「きゃーっ!」

 納得したわけではなかった。今の清野には何を言ってものらりくらり。暖簾に腕押し状態だ。
 あれだけ話が上手い清野が相手なのだ。口で勝てるはずが無かった。
 
 立成のヤケクソな決意表明の声に、他の3人は馬鹿騒がしい称賛を送る。
 立成が暴れるそぶりを見せなくなったからか、清野も立成への羽交い絞めから解放した。そのまま隣のソファーに腰を下ろす。
 立成は息を整えながら、目の前の水割りを流し込んだ。こうなったらやけだ。蒙古の先は思う存分、オモチャにされてやろうと。そうすればこの3人も満足するだろうと。たかがズボンを脱ぐだけだ。下着を見られるだけだ。そう思っていた。

「それじゃ、立成先生が納得してくれたから、ゲームスタート!あやかちゃん、ちえみちゃん、立成先生が履いてるパンツがわかるかな~?」
「えーわかんな~い!」
「ヒント!ヒントください!」
「そーか、わかんないか!じゃあねぇ、ほら、立成先生!」
「は、はいっ!何でしょーか!」
「ヒントだしてあげな!さっ、二人にお尻を突き出して!」
「なっ!・・・わかりましたよ・・・こ、こうですか?」

 いきなりのヒントタイムと、そのために強いられる立成への屈辱。
 先ほど、嫌々ながらも高らかにゲームを受諾した立成には断る術もなかった。
 本来ならば、次から次へと繰り出される清野からの無茶振りに、本来ならば立成は怒ってもよいのかもしれない。しかし、このスナックでの空気感と酔っ払った清野のがいつのまにか、まるで体育会系の先輩と後輩のような空気感になっていた。

(くっ・・・くそっ!)
 
 立成はのろのろとソファーから立ち上がり、3人の大人の男女に背を向ける。

 やりたくない。こんなこと。
 それでもやらなくてはならない。

 立成はそのまま背中を屈めながらも自分の膝に手を突き、自分の尻を少しだけ突き出した。
 雨で少し濡れているチノパンに包まれている、横にも縦にも大きいデカ尻を見せつけた。

「ダメだよ~そんなんじゃ!ほらっ!もっとケツを突き出して!頭も下げる!」
「ひぃっ」
「あははっ!」
「可哀相!」
  
 隣のソファーに座っていた清野が立ち上がり、立成の背中と頭を上から押さえつけていた。清野のいきなりの行動でバランスを崩した立成は、さっきまで座っていたソファーの座面に両手と額を擦りつけていた。革製の少し上質な生地が立成の額にへばりつく。まるで何かに屈服した男の様だった。

「どうかなー!参考になるかなー!?」
「えーわかんな~い」
「もうーこのズボン生地が厚くてわかんないよ~」
「じゃあこうしてやろうか!」
「なっ、ちょっ!」

 ベージュのチノパンのウエスト部分を引っ張られていた。そうするとどうなるか。
 チノパンの生地の遊びがなくなり、立成の豊満な臀部の形が丸出しになったのだ。
 そうすることで、パンツ中てゲームのヒントとして、下着のラインを見せるのが狙いだったのだろう。
 やられている立成自身は見ることはできないにもかかわらず、まるで生の尻を女性に披露しているような気分になっていた。おまけにこの尻の大きさは立成にとってのコンプレックスの1つなのだ。まだズボンを履いた状態であるものの、その恥ずかしい尻の全容を2人の女性に知られてしまったように思えてしまい、立成は羞恥が高まりわずかに身体が震えていた。

「やめろ・・・見るな・・・」
「わー、立成先生、お尻もどっしりとしてて大きいですね~」
「そうでしょそうでしょ。すっごく大きいよね!」

 2人の嬢が黄色い声をあげる。その高音に載せて、自分の尻の批評が立成の耳に入ってしまう。
 まるで鼓膜までが性感帯になったかのように、
 息も荒れる。汗が滲む。心臓が早くなる。

(頼む・・・見ないでくれ・・・早く終わらせてくれ・・・)
 
 しかしなぜだろうか。立成は身体を震わせるほどに恥ずかしいにもかかわらず、抵抗もせずにその『自慢のデカ尻』を披露し続けていた。
 それはもしかしたら、これまでの筒井から受けた”教育”の成果なのかもしれなかった。

「どうかなー?あやかちゃん、ちえみちゃん、答えはわかったかなー?」
「わっかんない!もういいや、えい!」
「なっ!」
「あっずるい!じゃああたしも!」
「あぁっ!」

 ちえみの手が立成の尻に触れていた。
 おそるおそる、といった様子がない。最初からがっつりと容赦のない触り方だった。
 女性であるというのに男の尻を触ることに何もためらいがない。こんなこと何でもない。そういう雰囲気を醸し出しながらも、2人の嬢は掌全体で立成の尻を擦っていた。される側であり男である立成の方が、思わず情けない声が漏れ出てしまっていた。

「あっ、ああ・・・」
「すごっ、お尻パンパン!」
「柔らかいのに、硬い!男のお尻って感じ!」
「ねっ、すごいよね~!なんでこんなに大きくて柔らかいんだろう!」
「す、すみません・・・」
「きゃはは!謝ってる~!」

 何を言ってもからかわれてしまう。何をやってもおふざけだと思われてしまう。
 その間も、立成の臀部は2人の嬢に弄ばれ続けている。見られ、触られ、感触を確かめられていた。
 そんなセクシャルハラスメントともいえるようなことをされている被害者側の立成がなぜか謝罪し、それをまた笑われてしまう。
 この4人の閉鎖空間の中で、知らず知らずのうちに主従関係が出来上がりつつあった。

「うーん・・・」
「どうしたの~、ちえみちゃん?」
「あのね、チノパンの生地が厚いからかな?あまりパンツの感触がないんだよね。ラインも浮いてこないし」
「なっ・・・ああっ!」

 立成は素っ頓狂な声を出した。
 完全に忘れていた。自分が今、どんな下着を身に付けているかを。

 つい数時間前に、筒井にあれを見せていたというのに。
 よりによって、こんな日に、こんな目に遭うなんて。

 一気に酔いが冷めた気分だった。
 先程までは、お遊びに付き合うだけのつもりだった。だからこそ、ヤケクソとはいえゲームを承諾したのだ。
 しかし・・・そのゲームの答えを思い描いたその瞬間、立成はいてもたってもいられなくなった。

(まずい、まずい・・・今日は、俺は・・・!)
「こらっ!暴れるな!」
「離して!離してください!」
「えっ、急にどうしたの?恥ずかしくなっちゃった?」
「おかしい~!あははっ!」

 この状況から逃れようと暴れ出した立成だが、当然、清野はそれをそれを許さなかった。元々尻を突き出すように抑え込まれていたため、簡単に制圧されてしまったのだ。
 そんな2人を見て戯笑する嬢たち。今更恥ずかしがりだした立成がおかしく見えたのだろう。

「さて、そろそろ答えを聞こうかな!ちゃんと色とかも推理してね!まずはあやかちゃん!」
「えーっ、わかんなーい!それじゃ~ね、黒!黒のボクサー!」
「ほう!理由は!」
「なんかそういう無難なパンツ履いてそう!」
「なる程ね、どうですか、立成先生?」
「し、知らない・・・」

 相変わらずソファーに顔を押し付けられていることが幸いした。羞恥に歪む顔を見られずに済んだのだ。
 会って間もない人間に、どんなパンツを履いていそうなのかを推測される。
 ただそれだけだというのに、立成は恥ずかしかった。まるで自分という人間がどんなものなのか、値踏みをされているようだった。

「それじゃ、ちえみちゃんは?」
「えーとねぇ・・・Tバック!」
「あはははは!何で?」
「太ももにパンツのラインがないからですね。ボクサーではなさそう。トランクスだと触ればわかると思うので。色は・・・わかんんないけど、水色かな?」
「ひいっ」

 自分の尻を吟味された結果、限りなく近い答えを出されてしまっていた。
 そんなちえみの予測を聞いて、立成の背中にはさらに冷や汗が流れる。

「じゃ、そろそろ答え合わせしよっか」

 清野は嬉しそうに笑いながら宣言した。
 それは立成にとって、地獄へ落とされるための判決のように聞こえた。
 そして、これから始まる立成の羞恥地獄の入り口でもあった。
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