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顧問2年目06月
顧問2年目06月 2
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「あーっ!たーちなーりせーんせー!!」
高校総体2日目の昼。
弓道団体戦の予選が終わり、個人戦が始まる午後に向けた昼下がり。
昼食をとった後、トイレから出てきた立成は急に名前を呼ばれていた。
立成は振り向こうとした。が、途中で振り向くのを止めた。
誰だ自分を呼んでいるのか、わかってしまったから。
そして自分に向かって駆けてくるときの、明らかに重量があることがわかるバタバタという足音。
「いやー、お久しぶりです!」
それは、清野先生だ。
昨年、筒井が参加した強化合宿で弓道部の顧問同士として仲良くなって以来、大会がある度に話すようになった他校の親父教師だ。
見た目は厳つい親父なのだ。坊主が少しだけ伸びたような頭に、がっしりとした顎の丸顔。目つきは鋭さがあるものの、いつも笑みを浮かべていることからどこか愛嬌があるように見える。
かつては鍛えていたのだろう。肩幅が広く、腕や脚もがっしりとしている。しかし立成ほどには背が高くないからか、どこかにずんぐりむっくりな印象かある人だ。腹は少し出ているものの、そこまで太ってはいないのだが、やはりそのずっしりとした体幹が、全体的な重みを感じさせる。
こんな成りだが、たしか、数学教師だったような・・・
そんな清野を前にして、立成は挨拶する。
「どうもです。清野先生は相変わらず元気ですね、」
「はっはっは、俺が元気なのはね、立成先生に会えたからですよ!」
「何言ってんですか!」
本当に相変わらずな人だ。
これだけ体育会系のおっさんという風貌なのではあるが、妙に気の抜けた話をしてくるのだ。
それでいて、年下の立成に対して、可愛い後輩で遊ぶ陽気な兄貴のような振る舞いをしてくる。ときには自分自身を貶めて笑いを取ることもあるが、大半は立成をおちょくってくるだ。デカい図体の割に受け身な部分があり、かつ生真面目な面がある立成は、清野にとってからかいがいがあるのだろう。
そんな清野からの立成への弄りは、時には過度なものがあるものの、清野が醸し出す雰囲気もあってか、弄られる立成としても楽しめてしまうのだった。昨年は、立成は清野により、恥ずかしい目にあっていたはずだというのに。
その後も、清野との馬鹿話は延々と続いた。
これから午後に個人戦が始まるというのに、なんとも気の抜けた会話ばかりだった。
立成としても、、なぜか清野に対しては苦手意識が湧かないのだ。強烈に人懐っこいというわけでもなく、ずば抜けて話が上手いというわけでもない。それでも、なぜか立成は、この清野と話すと心から笑えてしまう。歳の差があるとはいえど、2人は大人同士としての友人といえる存在だった。
「でも、立成先生のとこも予選突破できてすごいですねー」
「それはお宅もそうでしょう!」
「いやいや!立成先生のとこ、5人中4人が2年生なんだから大したもんですよ!うちなんて5人とも3年ですからねー」
「まぁ・・・3年の筒井と、あと大前の川崎が頑張ってくれましたからね。予選もギリギリで滑り込むことができました。個人戦の予選を突破したのもその2人だけですからね」
「それでも素晴らしいですよ!」
そう話しながらも立成は思い返す。
昨日、危うく駄目になりそうだった筒井。それをなんとか、試合直前に
昨日及び今日の団体予選では、筒井は8射7中となかなかのできだった。1本外したときは、これで駄目になるか?とそわそわしたものだが、筒井以外の2年生4人が当てたことにより、なんとか崩れることなく予選を終えたのだった。
なんて頼りになる奴らなんだ。筒井も、2年たちも。
この大会に出場したことで、全員が成長しているように感じていた。
そんなことを思い出しながらも、そろそろ午後の個人戦が始まる時間が近づいていた。
個人戦の最初は女子であるため、筒井たちの出番まではまだ時間がある。
清野との馬鹿話を続けることは魅力はあるものの、そんなことは言っていられない。名残惜しい気持ちで立成は清野との会話を打ち切り、筒井と川崎の元に向かった。
・・・
「おっ川崎。どうだ、初めての個人戦出場は?」
「あ、立成先生。お疲れ様です。まぁ、しっかりとやってみますよ」
体育館に戻ると、さっそく川崎を見つけた。
巻き藁練習を終えたのか、弓矢を携えている。立成は川崎の隣に腰を下ろし、川崎の顔を見ながら何気なく話を進めてみる。
「川崎は何だか落ち着いているな~」
「そりゃそうですよ、団体戦より個人戦は気が楽ですからね」
「そうか?でも、皆お前のことを見てるんだぞ?」
「そんなことないですよ。それに見るとするなら、俺よりも筒井さんだ」
どうもこの男は変わっている。高校生らしくないというか・・・
他の部員はふざけたり意気込んだりと、多少なりの”青さ”がある者だが、川崎については、
これがいわゆる悟り世代というのだろうか?いや、少し違うか?
(まぁ、これなら個人戦でも実力通りに戦えそうだな)
「ところでうちの部長さんはどこにいる?」
「知らないですね。昼休憩の時間になったら、どこかに消えちゃいました」
「えっ、あいつまた消えたの?」
「気が付いたらいないんですよね。俺も試合前に話したいことがあったんですけど」
まさか・・・またあいつは気が落ちているのか?
昨日といい、少し情緒が危なげになっているのかもしれない。
立成はその後も川崎との雑談をしながらも、筒井を探すことにした。
・・・
居ない!
弓道場の観客席も、体育館の練習場所も、各校待機場所も、トイレも、関係者以外立ち入り禁止マークのある部屋にも、筒井はいなかった。
(あいつ、まさかまたあそこにいるのか?)
思いついたときには、立成は駆け出していた。
そして。
昨日、団体戦前に筒井が隠れるように座り込んでいた非常口付近。
そこに、またも筒井が1人、目をつぶりながらぽつんと座っていた。
「おい、また、お前・・・」
「・・・・・・えっ?」
かけよった立成が筒井の隣に座り声をかける。
立成がやって来ていたことにすら気づいていなかったような反応だった。
目を開き立成の方に顔を向ける。
その顔色はあまり血色がよくなさそうだった。
(これは・・・昨日よりも症状が悪化している・・・?)
立成は世界史教師だ。体育教師ではない。
体育会系の運動部には所属していたものの、そこまでメンタルトレーニングにも詳しくない。
そんな立成の目の前にいる、放心したかのような無表情の教え子。
どうすればよい?
立成は歯噛みした。眉間にも皺が寄る。
自分に何ができるか?そんなこと、限られている・・・
だが、できることをするしかなかった。
「・・・今日、だけだ、ぞ」
「えっ・・・?」
立成はそう言って立ち上がった。
そのまま時間が止まる。
少しだけ躊躇していた。
こんな事しかできないのか、自分は。
結局、こうなるのか。
こんな事をしたら、逆に筒井は怒るのではないか。
第一、ここは大会の会場なんだぞ。
・・・そんなことを考えながらも、立成はチノパンのホックを外していた。
「えっ、先生、なっ何を・・・」
筒井の言葉を無視して、立成は己が履いているベージュのチノパンを膝までずり下すとともに、半袖のポロシャツも胸が見えてしまうほどに捲り上げた。
「約束通り、ちゃんと履いてるぞ?お前がくれたパンツ・・・」
筒井の目の前に立成が晒し出したもの。
立成が履いている、水色のビキニブリーフだ。筒井が昨年、立成にプレゼントしたものだった。
昨年よりも少し身体が悪い方に成長したからだろうか。そのビキニブリーフは立成の肉感のある肉体により密着しており、精悍さよりも肉感が増しているように見える。その下着の形状局部には股間への食い込みがより際どくなっている。
立成がこれを履いているのは、昨年の筒井との笑い話で終わるはずだったゲン担ぎだった。かつて立成が大学生のときの、ふざけたゲン担ぎ。それを不用意に筒井に話してから始まった、弓道大会のときには際どい下着を身に着けることになった。かつては笑い話で済んでいたはずなのだが、今日は筒井の最後の高総体なのだから、今朝の立成は迷うことなく、このビキニブリーフを履き、部員とともに宿泊しているホテルを出てきたのだった。
立成自身、普段はボクサーブリーフを愛用しているため、普段とは異なるフィット感と締め付け感に違和感はあるものの、今はそんなことを言っていられなかった。
筒井は驚いた表情のまま、目の前に立つ教師の姿を凝視する。
筒井は座っているから、立成が見せつけているビキニブリーフが丁度目の前にあるのだ。
久方ぶりの試合であるため、立成がこのビキニブリーフを履いているのを見るのも久しぶりだった。水色の発色が良く、かつ爽やかな色合いのため、一般的なビキニブリーフがもつ野性的な雰囲気やエロティシズムは若干控えめなデザインの下着だ。だが、それを履いている立成の身体が、そしてそのあきらかに”アレ”があることが明白にわかってしまう局部の膨らみが、大人の男が醸し出すフェロモンに飾られている。
ビキニブリーフは通常のブリーフとは異なり股上が浅いため、その生地の上には陰毛もはみ出しており、乱雑に生えた黒い毛がのように臍まで続いていている。その下着の生地は股下は当然のように丈がなく、あっという間に明らかに毛深く逞しい太股が見えている。
立成は顔を赤らめながらも、その羞恥に耐えるかのように眉間に皺を寄せている。
しかし、いくら恥じていても、普通なら他人見せることのない自分の下着を披露している事実は変わらない。
まるで目の前の生徒に自身の肉体を誇示し、己のエロティシズムを見せびらかしているナルシスト野郎の姿だった。そう思うだけで立成はさらに赤面し、手足の先までも熱くなってしまう。
そんな立成を見ても筒井は何も言葉を発していない。
その沈黙に耐えられず、立成は後ろを向いた。
「ほ、ほら、このケツが、お前、す、好きなんだろ・・・?」
そう言いながら、立成はポロシャツをめくった状態のままで己の尻を突き出す。
まるでポルノモデルになったかのように、自分の身体をアピールする。
まるで自信のある部位であるかのように、自分の豊満な臀部を強調させる。
ポロシャツに隠されていないため、立成の臀部の全てが、隠されることなく筒井の目の前に晒されていた。
明らかに普通の男よりも大きいデカ尻。
その尻に、ビキニブリーフの柔らかな生地がぴっちりと張り付き、その尻の割れ目までもしっかりと表現している。
その化学繊維の布が覆われている尻だが、それ以外、つまり生地の無い部分は当然生肌だ。
股下が浅いデザインのため、立成の太股は全て晒されてる。平均的な日本人男性ならば、太股の裏側、つまりハムストリングスのあたりは毛が薄いものではあるが、立成はその部分ですら、黒く長い毛に覆われている。これは当然、今はビキニブリーフで隠されている尻には、毛が生えているだろうというのは丸わかりだった。
立成の心は震えていた。立成にとっては己の尻とはいえ、恥ずかしい尻なのだ。いくら下着を履いているとはいえ、その下着はビキニブリーフ、履いていないものと同じ感覚だった。男同士なら尻を視られるのは大した問題ではないのが普通だろう。しかし、やはり自分のコンプレックスである大きな尻を視られるのは、立成にとっては恥ずかしいことだった。それがたとえ、散々己の恥部を見られている筒井が相手だとしてもだ。
(くっ・・・自分でやっておきながら、やっぱ、恥ずかしい・・・)
立成の顔が羞恥に歪む。額やこめかみはじっとりと汗ばみ、その血色の良い肌を光らせている。
ちらっと後ろの筒井の様子を見る。
恥ずかしいからきちんと見ることができない。目も合わせられない。
だが、その一瞬の見返りで見えた範囲では、筒井の様子にはあまり変わりがないようだ。
(こ、これでもあいつは、まだ、元気がないのか・・・そ、それじゃあ・・・)
立成の決心が揺れる。
こんなところで、そこまでやるのか?もういいのではないか?
そんな問答が繰り返される。
だが、揺れる立成の心は別に、なぜか立成の身体と口は、動き出す。
「だ、駄目か、じゃ、じゃあ・・・」
立成は再度周囲を見渡す。何度も、何度も。
まだ、誰もいない。人影もなく、話し声も聞こえない。
その場には他に人はいなく、ただ「避難口」の照明が煌々と照らされているのみだった。
””あれ”をやるなら、今しかない。今ならやっても問題ない。
ドクン。ドクン。
辺りが静寂であるからか、立成は自分の心臓の音までも聞こえてしまっていた。
(頼む、誰も来ないでくれ・・・)
「こ、これで、どうだ・・・?」
「!」
立成は両手で水色の布をずり下げ、自分の恥部の全てを生徒の目の前にひけらかした。
「き、汚いケツだが・・・これで、なぁ、どうだ・・・?お前、これ、す、好きなんだろ・・・?」
立成の言葉通り、筒井の目の前に、毛だらけで汚いケツを曝け出されていた。
突き出された尻タブ表面に毛が生えているのは当然であり、尻の割れ目からも長い縮れた陰毛がはみ出ている。
立成は恥ずかしさのあまり顔が熱くなる。無理やり発した台詞も最後あたりは掠れてしまい、精一杯出したような声だった。
自分でやっておきながら、一気に羞恥してしまう。
自分でやっておきながら、なぜか屈辱まで感じてしまう。
体育館の廊下の隅で、一体自分は何をしているというんだ。
今この場所には他に人はいないとはいえ、会場全体には大勢の人がいるのだ。だから、人が来るときは来てしまうのものだ。もし、こんな所を誰かに見られたら・・・
そう思うだけで、立成は全身が燃えるように熱くなってしまう。
身体が震えてしまう。そうなると、今、筒井の目の前で披露している毛だらけのデカ尻までも、プルプルと揺れ、その羞恥している立成の心までも、筒井に伝わってしまっていた。
「あはははは!」
唐突に筒井が笑いだす。
その声が一層立成の羞恥心を煽る。
尻を出している自分が嘲られていると思い、より一層赤面してしまう。
「もしかして先生、俺がまた落ち込んでると思った?」
思ってもいない台詞に、立成は毛深い生尻を突き出したまま、顔だけを生徒の方へと見返した。
「あ、ああ。・・・違うのか?」
「ちょっと集中しようとしてただけだよ。なのに、先生は急に来て、急に脱ぎだすんだもん」
勘違いしていたのか?
筒井のあの無表情は、午後の個人戦に集中するため?
「ま、おかげでリラックスできたよ」
「そ、そうか、じゃあ」
筒井がしっかりと笑った。かつて、無邪気に立成に見せていたような、何も作っていないような笑顔だった。
よかった・・・ほっとした立成は、その手をビキニブリーフに持っていき、履き直そうとする。
しかし、筒井の手がその教師の手を掴んでいた。
「あっ、先生、せっかくだから・・・」
「おいっ!元気ならもう見せねぇ!やめろ!離せ!」
「せっかく先生が自分から出してくれたお尻だから」
「ふぅっ!」
尻に顔を押し付けられていた。
立成のデカ尻により作られる深い割れ目。その中に筒井の鼻が入るような、ある意味丁度嚙み合ったかのような形だった。
「ばっ馬鹿!何やってんだ!」
「いやー、大会の思い出かな?」
「どんな思い出だ!最悪だ!」
「相変わらず先生のお尻は臭いですね。ケツ毛もチクチクする」
「なっ・・・お前なんか午後の試合全部外しちまえ!」
「えっ最低!教師が言っていいのそんなこと!」
「お前なんかに言われたく・・・はぁぁぁっ!」
筒井はその唾液で湿った舌を、顧問の教師の尻の割れ目の下から上へと一気に動かした。
ペローリと。
立成は舐められてしまっていた。
男として最も恥ずかしい場所を舐められてしまっていた。
黒い毛に縁どられた肛門のみならず、尻の割れ目の中の全てを舐められてしまっていた。
そんなことをされたが故、弓道という厳粛な競技が行われる会場だというのに、立成は出してはいけないような猥声をあげてしまっていた。
「はぁっ、はぁっ・・・」
無理やりに呼吸を整える立成。
唐突に自身の敏感な場所を舐められてしまったのだ。仕方のない。
切ない声を漏らしてしまったのも、これまで以上に赤面してしまうのも、そして一物が反応して硬くなってしまっているのも、仕方のないことだった。
満足したのか、筒井は立成の尻から顔を話した。
暫くはそれに気づかなかったが、放心状態から解き放たれた後、慌てて立成はビキニブリーフを上げようとした。しかし、尻舐めにより硬くなった一物がそれを邪魔をし、なかなか履きなおすことができずに四苦八苦していた。それを見られて、またも立成は生徒から笑われていた。
「お前・・・よくも・・・!」
「ごちそうさまでした!先生の”汚いおしり”!」
「なっ!・・・お前、言うな!」
「えっだって自分で言ったじゃん」
「ぐっ・・・」
明らかに羞恥に悶える立成。
楽しそうな筒井。
とても個人戦の前とは言えない雰囲気、緊張感のかけらも、そこにはなくなっていた。
高校総体2日目の昼。
弓道団体戦の予選が終わり、個人戦が始まる午後に向けた昼下がり。
昼食をとった後、トイレから出てきた立成は急に名前を呼ばれていた。
立成は振り向こうとした。が、途中で振り向くのを止めた。
誰だ自分を呼んでいるのか、わかってしまったから。
そして自分に向かって駆けてくるときの、明らかに重量があることがわかるバタバタという足音。
「いやー、お久しぶりです!」
それは、清野先生だ。
昨年、筒井が参加した強化合宿で弓道部の顧問同士として仲良くなって以来、大会がある度に話すようになった他校の親父教師だ。
見た目は厳つい親父なのだ。坊主が少しだけ伸びたような頭に、がっしりとした顎の丸顔。目つきは鋭さがあるものの、いつも笑みを浮かべていることからどこか愛嬌があるように見える。
かつては鍛えていたのだろう。肩幅が広く、腕や脚もがっしりとしている。しかし立成ほどには背が高くないからか、どこかにずんぐりむっくりな印象かある人だ。腹は少し出ているものの、そこまで太ってはいないのだが、やはりそのずっしりとした体幹が、全体的な重みを感じさせる。
こんな成りだが、たしか、数学教師だったような・・・
そんな清野を前にして、立成は挨拶する。
「どうもです。清野先生は相変わらず元気ですね、」
「はっはっは、俺が元気なのはね、立成先生に会えたからですよ!」
「何言ってんですか!」
本当に相変わらずな人だ。
これだけ体育会系のおっさんという風貌なのではあるが、妙に気の抜けた話をしてくるのだ。
それでいて、年下の立成に対して、可愛い後輩で遊ぶ陽気な兄貴のような振る舞いをしてくる。ときには自分自身を貶めて笑いを取ることもあるが、大半は立成をおちょくってくるだ。デカい図体の割に受け身な部分があり、かつ生真面目な面がある立成は、清野にとってからかいがいがあるのだろう。
そんな清野からの立成への弄りは、時には過度なものがあるものの、清野が醸し出す雰囲気もあってか、弄られる立成としても楽しめてしまうのだった。昨年は、立成は清野により、恥ずかしい目にあっていたはずだというのに。
その後も、清野との馬鹿話は延々と続いた。
これから午後に個人戦が始まるというのに、なんとも気の抜けた会話ばかりだった。
立成としても、、なぜか清野に対しては苦手意識が湧かないのだ。強烈に人懐っこいというわけでもなく、ずば抜けて話が上手いというわけでもない。それでも、なぜか立成は、この清野と話すと心から笑えてしまう。歳の差があるとはいえど、2人は大人同士としての友人といえる存在だった。
「でも、立成先生のとこも予選突破できてすごいですねー」
「それはお宅もそうでしょう!」
「いやいや!立成先生のとこ、5人中4人が2年生なんだから大したもんですよ!うちなんて5人とも3年ですからねー」
「まぁ・・・3年の筒井と、あと大前の川崎が頑張ってくれましたからね。予選もギリギリで滑り込むことができました。個人戦の予選を突破したのもその2人だけですからね」
「それでも素晴らしいですよ!」
そう話しながらも立成は思い返す。
昨日、危うく駄目になりそうだった筒井。それをなんとか、試合直前に
昨日及び今日の団体予選では、筒井は8射7中となかなかのできだった。1本外したときは、これで駄目になるか?とそわそわしたものだが、筒井以外の2年生4人が当てたことにより、なんとか崩れることなく予選を終えたのだった。
なんて頼りになる奴らなんだ。筒井も、2年たちも。
この大会に出場したことで、全員が成長しているように感じていた。
そんなことを思い出しながらも、そろそろ午後の個人戦が始まる時間が近づいていた。
個人戦の最初は女子であるため、筒井たちの出番まではまだ時間がある。
清野との馬鹿話を続けることは魅力はあるものの、そんなことは言っていられない。名残惜しい気持ちで立成は清野との会話を打ち切り、筒井と川崎の元に向かった。
・・・
「おっ川崎。どうだ、初めての個人戦出場は?」
「あ、立成先生。お疲れ様です。まぁ、しっかりとやってみますよ」
体育館に戻ると、さっそく川崎を見つけた。
巻き藁練習を終えたのか、弓矢を携えている。立成は川崎の隣に腰を下ろし、川崎の顔を見ながら何気なく話を進めてみる。
「川崎は何だか落ち着いているな~」
「そりゃそうですよ、団体戦より個人戦は気が楽ですからね」
「そうか?でも、皆お前のことを見てるんだぞ?」
「そんなことないですよ。それに見るとするなら、俺よりも筒井さんだ」
どうもこの男は変わっている。高校生らしくないというか・・・
他の部員はふざけたり意気込んだりと、多少なりの”青さ”がある者だが、川崎については、
これがいわゆる悟り世代というのだろうか?いや、少し違うか?
(まぁ、これなら個人戦でも実力通りに戦えそうだな)
「ところでうちの部長さんはどこにいる?」
「知らないですね。昼休憩の時間になったら、どこかに消えちゃいました」
「えっ、あいつまた消えたの?」
「気が付いたらいないんですよね。俺も試合前に話したいことがあったんですけど」
まさか・・・またあいつは気が落ちているのか?
昨日といい、少し情緒が危なげになっているのかもしれない。
立成はその後も川崎との雑談をしながらも、筒井を探すことにした。
・・・
居ない!
弓道場の観客席も、体育館の練習場所も、各校待機場所も、トイレも、関係者以外立ち入り禁止マークのある部屋にも、筒井はいなかった。
(あいつ、まさかまたあそこにいるのか?)
思いついたときには、立成は駆け出していた。
そして。
昨日、団体戦前に筒井が隠れるように座り込んでいた非常口付近。
そこに、またも筒井が1人、目をつぶりながらぽつんと座っていた。
「おい、また、お前・・・」
「・・・・・・えっ?」
かけよった立成が筒井の隣に座り声をかける。
立成がやって来ていたことにすら気づいていなかったような反応だった。
目を開き立成の方に顔を向ける。
その顔色はあまり血色がよくなさそうだった。
(これは・・・昨日よりも症状が悪化している・・・?)
立成は世界史教師だ。体育教師ではない。
体育会系の運動部には所属していたものの、そこまでメンタルトレーニングにも詳しくない。
そんな立成の目の前にいる、放心したかのような無表情の教え子。
どうすればよい?
立成は歯噛みした。眉間にも皺が寄る。
自分に何ができるか?そんなこと、限られている・・・
だが、できることをするしかなかった。
「・・・今日、だけだ、ぞ」
「えっ・・・?」
立成はそう言って立ち上がった。
そのまま時間が止まる。
少しだけ躊躇していた。
こんな事しかできないのか、自分は。
結局、こうなるのか。
こんな事をしたら、逆に筒井は怒るのではないか。
第一、ここは大会の会場なんだぞ。
・・・そんなことを考えながらも、立成はチノパンのホックを外していた。
「えっ、先生、なっ何を・・・」
筒井の言葉を無視して、立成は己が履いているベージュのチノパンを膝までずり下すとともに、半袖のポロシャツも胸が見えてしまうほどに捲り上げた。
「約束通り、ちゃんと履いてるぞ?お前がくれたパンツ・・・」
筒井の目の前に立成が晒し出したもの。
立成が履いている、水色のビキニブリーフだ。筒井が昨年、立成にプレゼントしたものだった。
昨年よりも少し身体が悪い方に成長したからだろうか。そのビキニブリーフは立成の肉感のある肉体により密着しており、精悍さよりも肉感が増しているように見える。その下着の形状局部には股間への食い込みがより際どくなっている。
立成がこれを履いているのは、昨年の筒井との笑い話で終わるはずだったゲン担ぎだった。かつて立成が大学生のときの、ふざけたゲン担ぎ。それを不用意に筒井に話してから始まった、弓道大会のときには際どい下着を身に着けることになった。かつては笑い話で済んでいたはずなのだが、今日は筒井の最後の高総体なのだから、今朝の立成は迷うことなく、このビキニブリーフを履き、部員とともに宿泊しているホテルを出てきたのだった。
立成自身、普段はボクサーブリーフを愛用しているため、普段とは異なるフィット感と締め付け感に違和感はあるものの、今はそんなことを言っていられなかった。
筒井は驚いた表情のまま、目の前に立つ教師の姿を凝視する。
筒井は座っているから、立成が見せつけているビキニブリーフが丁度目の前にあるのだ。
久方ぶりの試合であるため、立成がこのビキニブリーフを履いているのを見るのも久しぶりだった。水色の発色が良く、かつ爽やかな色合いのため、一般的なビキニブリーフがもつ野性的な雰囲気やエロティシズムは若干控えめなデザインの下着だ。だが、それを履いている立成の身体が、そしてそのあきらかに”アレ”があることが明白にわかってしまう局部の膨らみが、大人の男が醸し出すフェロモンに飾られている。
ビキニブリーフは通常のブリーフとは異なり股上が浅いため、その生地の上には陰毛もはみ出しており、乱雑に生えた黒い毛がのように臍まで続いていている。その下着の生地は股下は当然のように丈がなく、あっという間に明らかに毛深く逞しい太股が見えている。
立成は顔を赤らめながらも、その羞恥に耐えるかのように眉間に皺を寄せている。
しかし、いくら恥じていても、普通なら他人見せることのない自分の下着を披露している事実は変わらない。
まるで目の前の生徒に自身の肉体を誇示し、己のエロティシズムを見せびらかしているナルシスト野郎の姿だった。そう思うだけで立成はさらに赤面し、手足の先までも熱くなってしまう。
そんな立成を見ても筒井は何も言葉を発していない。
その沈黙に耐えられず、立成は後ろを向いた。
「ほ、ほら、このケツが、お前、す、好きなんだろ・・・?」
そう言いながら、立成はポロシャツをめくった状態のままで己の尻を突き出す。
まるでポルノモデルになったかのように、自分の身体をアピールする。
まるで自信のある部位であるかのように、自分の豊満な臀部を強調させる。
ポロシャツに隠されていないため、立成の臀部の全てが、隠されることなく筒井の目の前に晒されていた。
明らかに普通の男よりも大きいデカ尻。
その尻に、ビキニブリーフの柔らかな生地がぴっちりと張り付き、その尻の割れ目までもしっかりと表現している。
その化学繊維の布が覆われている尻だが、それ以外、つまり生地の無い部分は当然生肌だ。
股下が浅いデザインのため、立成の太股は全て晒されてる。平均的な日本人男性ならば、太股の裏側、つまりハムストリングスのあたりは毛が薄いものではあるが、立成はその部分ですら、黒く長い毛に覆われている。これは当然、今はビキニブリーフで隠されている尻には、毛が生えているだろうというのは丸わかりだった。
立成の心は震えていた。立成にとっては己の尻とはいえ、恥ずかしい尻なのだ。いくら下着を履いているとはいえ、その下着はビキニブリーフ、履いていないものと同じ感覚だった。男同士なら尻を視られるのは大した問題ではないのが普通だろう。しかし、やはり自分のコンプレックスである大きな尻を視られるのは、立成にとっては恥ずかしいことだった。それがたとえ、散々己の恥部を見られている筒井が相手だとしてもだ。
(くっ・・・自分でやっておきながら、やっぱ、恥ずかしい・・・)
立成の顔が羞恥に歪む。額やこめかみはじっとりと汗ばみ、その血色の良い肌を光らせている。
ちらっと後ろの筒井の様子を見る。
恥ずかしいからきちんと見ることができない。目も合わせられない。
だが、その一瞬の見返りで見えた範囲では、筒井の様子にはあまり変わりがないようだ。
(こ、これでもあいつは、まだ、元気がないのか・・・そ、それじゃあ・・・)
立成の決心が揺れる。
こんなところで、そこまでやるのか?もういいのではないか?
そんな問答が繰り返される。
だが、揺れる立成の心は別に、なぜか立成の身体と口は、動き出す。
「だ、駄目か、じゃ、じゃあ・・・」
立成は再度周囲を見渡す。何度も、何度も。
まだ、誰もいない。人影もなく、話し声も聞こえない。
その場には他に人はいなく、ただ「避難口」の照明が煌々と照らされているのみだった。
””あれ”をやるなら、今しかない。今ならやっても問題ない。
ドクン。ドクン。
辺りが静寂であるからか、立成は自分の心臓の音までも聞こえてしまっていた。
(頼む、誰も来ないでくれ・・・)
「こ、これで、どうだ・・・?」
「!」
立成は両手で水色の布をずり下げ、自分の恥部の全てを生徒の目の前にひけらかした。
「き、汚いケツだが・・・これで、なぁ、どうだ・・・?お前、これ、す、好きなんだろ・・・?」
立成の言葉通り、筒井の目の前に、毛だらけで汚いケツを曝け出されていた。
突き出された尻タブ表面に毛が生えているのは当然であり、尻の割れ目からも長い縮れた陰毛がはみ出ている。
立成は恥ずかしさのあまり顔が熱くなる。無理やり発した台詞も最後あたりは掠れてしまい、精一杯出したような声だった。
自分でやっておきながら、一気に羞恥してしまう。
自分でやっておきながら、なぜか屈辱まで感じてしまう。
体育館の廊下の隅で、一体自分は何をしているというんだ。
今この場所には他に人はいないとはいえ、会場全体には大勢の人がいるのだ。だから、人が来るときは来てしまうのものだ。もし、こんな所を誰かに見られたら・・・
そう思うだけで、立成は全身が燃えるように熱くなってしまう。
身体が震えてしまう。そうなると、今、筒井の目の前で披露している毛だらけのデカ尻までも、プルプルと揺れ、その羞恥している立成の心までも、筒井に伝わってしまっていた。
「あはははは!」
唐突に筒井が笑いだす。
その声が一層立成の羞恥心を煽る。
尻を出している自分が嘲られていると思い、より一層赤面してしまう。
「もしかして先生、俺がまた落ち込んでると思った?」
思ってもいない台詞に、立成は毛深い生尻を突き出したまま、顔だけを生徒の方へと見返した。
「あ、ああ。・・・違うのか?」
「ちょっと集中しようとしてただけだよ。なのに、先生は急に来て、急に脱ぎだすんだもん」
勘違いしていたのか?
筒井のあの無表情は、午後の個人戦に集中するため?
「ま、おかげでリラックスできたよ」
「そ、そうか、じゃあ」
筒井がしっかりと笑った。かつて、無邪気に立成に見せていたような、何も作っていないような笑顔だった。
よかった・・・ほっとした立成は、その手をビキニブリーフに持っていき、履き直そうとする。
しかし、筒井の手がその教師の手を掴んでいた。
「あっ、先生、せっかくだから・・・」
「おいっ!元気ならもう見せねぇ!やめろ!離せ!」
「せっかく先生が自分から出してくれたお尻だから」
「ふぅっ!」
尻に顔を押し付けられていた。
立成のデカ尻により作られる深い割れ目。その中に筒井の鼻が入るような、ある意味丁度嚙み合ったかのような形だった。
「ばっ馬鹿!何やってんだ!」
「いやー、大会の思い出かな?」
「どんな思い出だ!最悪だ!」
「相変わらず先生のお尻は臭いですね。ケツ毛もチクチクする」
「なっ・・・お前なんか午後の試合全部外しちまえ!」
「えっ最低!教師が言っていいのそんなこと!」
「お前なんかに言われたく・・・はぁぁぁっ!」
筒井はその唾液で湿った舌を、顧問の教師の尻の割れ目の下から上へと一気に動かした。
ペローリと。
立成は舐められてしまっていた。
男として最も恥ずかしい場所を舐められてしまっていた。
黒い毛に縁どられた肛門のみならず、尻の割れ目の中の全てを舐められてしまっていた。
そんなことをされたが故、弓道という厳粛な競技が行われる会場だというのに、立成は出してはいけないような猥声をあげてしまっていた。
「はぁっ、はぁっ・・・」
無理やりに呼吸を整える立成。
唐突に自身の敏感な場所を舐められてしまったのだ。仕方のない。
切ない声を漏らしてしまったのも、これまで以上に赤面してしまうのも、そして一物が反応して硬くなってしまっているのも、仕方のないことだった。
満足したのか、筒井は立成の尻から顔を話した。
暫くはそれに気づかなかったが、放心状態から解き放たれた後、慌てて立成はビキニブリーフを上げようとした。しかし、尻舐めにより硬くなった一物がそれを邪魔をし、なかなか履きなおすことができずに四苦八苦していた。それを見られて、またも立成は生徒から笑われていた。
「お前・・・よくも・・・!」
「ごちそうさまでした!先生の”汚いおしり”!」
「なっ!・・・お前、言うな!」
「えっだって自分で言ったじゃん」
「ぐっ・・・」
明らかに羞恥に悶える立成。
楽しそうな筒井。
とても個人戦の前とは言えない雰囲気、緊張感のかけらも、そこにはなくなっていた。
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