生徒との1年間

スオン

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顧問2年目05月

顧問2年目05月 14

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「はぁっ・・・はぁっ・・・」
「・・・」

 2人の間にも風が流れてくる。
 立成は相変わらず目の前の気を両手で抱きしめていた。背後にいる筒井に、今も己の腰を押さえつけられている。そして筒井の一物の温度を尻の穴に感じている。腹の中には吐き出された若い精が暴れていることすらも感じてしまうほどだった。
 先ほどまでの行為で2回の連続射精をしてしまったことにより、頭の中まで空っぽにして獣のように快楽を味わいつくした。久方振りの射精だった。多忙を極める仕事中にも、ふとした瞬間にもたげる鎌首に苦慮したこともあるくらいだったのだ。脳内にはドーパミンが溢れて何も思考がまとまらなかったが、徐々にそれも落ち着いてきた。

 立成はあらためて周りを見下ろす。足下あたりには立成の汚物まみれだ。
 浣腸による腸内洗浄による強制排泄。尻を叩かれた衝撃で無様に漏らした小便。残便処理のために自らの意志での排便。
 それらの残骸が、足の踏み場もないほどに埋め尽くされている。静かで平和なはずの休日の学校であるというのに、この一帯についてだけは、みるからに18歳未満入場禁止の、場末のスカトロジーショーの閉幕後のようであった。

(くっせ・・・汚ねぇ・・・)

 あらためて自分を取り戻すと、本当にひどい有様だと思った。
 生徒に尻を責められて感じてしまったのもあるが、地面の惨状は自分の身体なら排出されたものだというのに、立成は嫌悪感を露にした。
 おまけに自分は何も身に着けていない、完全に全裸の状態だ。かつては鍛えていたとはいえ、今や弛みが目立つだらしない身体だ。そのうえ、全身に獣かと思ってしまうように毛が生え揃ったみっともない身体を晒しているのだ。
 散々この場で醜態をさらしたというのに、今更ではるが自分の恥ずかしく思うが、一方でもはや自嘲の念すら沸き上がってくる。

(あーあ、またやっちまったなぁ・・・)

 本来は生徒とこんな関係になること事態があり得ないのだ。おまけに、年上の自分が生徒にひれ伏される側であるなんて、普通の大人であれば耐えられないはずだ。立成だってそのはずなのだが、あまりにも幾度となく筒井と身体を重ねてしまっていることで、立成の中でも感覚がおかしくなっているのかもしれない。

 そんな中でも、時間がたてば冷静になってくる。射精後の余韻もなくなってくる。もう、いいか、と、立成は身体を起こそうとした。したが・・・

(うっ・・・さすがに腕が・・・腰が・・・)

 長時間、木に身体を預けて尻を突き出す体勢をとっていた反動だろう。腕にもしびれが現れだし、両足もプルプルと震えだす。明らかに疲労だろう。 
 何て格好をしていたのだろう。そんなことを今さらに思うほど、身体が悲鳴を上げていた。運動不足の30代の男には辛い体勢だった。

「筒井、も、もう」
「・・・」

 立成は背後にいる生徒に声をかける。しかし反応が無い。
 たしかにそこにいるのだ。現に今も、自分の尻には筒井の一物がしっかりと挿入されたままであるのだから。
 なんだ?・・・と思ったときには、筒井は立成の背中に顔をうずめていた。

「おい・・・」
「・・・」

 背中に鼻の固いところ、唇の柔らかいところ、そんな筒井の顔の部位の様々な感触を感じていた。
 それにしたって。
 一体どうしたというのだろううか。ふざけているのだろうか?しかし、目に見えないが背後からは心なしか張り詰めたような空気感を感じる。

「きょ、今日は、その、朝、シャワー浴びてないから・・・臭くないか?」
「・・・ふふっ」
 
 沈黙が嘘のように、筒井が笑った。だが、その漏れ出た笑い声は気の抜けたような声に感じた。

「もう、先生、笑わせないでよ」
「ど、どうしたんだ、おい」
「ほんと、リズム狂わせるよね、先生」
「・・・?た、頼む、そろそろ抜いてくれないか?こ、腰が」
「あ、そうか、そうだね」
「・・・あれ、まだ?」
「先生・・・」

 2人のやり取りは続いたが、結合は続いたままだった。
 筒井の顔が背中から離れた。
 それっきり無言になる。

 どうしたというのだろうか?いや、そんな感じではないよなぁ。 
 立成がそんな暢気な考えを浮かべながらも、2人は密着しながらなんともいえない時間が流れていった。

「ふん・・・」
「あっ・・・あっ・・・」
 
 唐突に筒井が動き出した。
 ズルズルと直腸が擦れる感触と、何か大切なものが奪われたような気持ちになり、立成は思わず声が出てしまっていた。
 筒井の一物が除かれた。立成の尻が一気に空洞になる。黒々としたケツ毛の中に埋もれた赤黒い肛門は、パックリと開ききったまま、なおも物欲しそうな表情を見せていた。
 立成自身も、思わずまた欲してしまいそうになってしまうが、そんな自分の浅ましさに恥じていた。

「はぁーっ・・・お、おいっ」

 筒井は一人、立成を置いて道場に向かって行った。 
 何だか様子がおかしい気がする。
 立成はすぐに後を追いかけようとした。
 だが、身体がバキバキに硬直してしまっていた。足も手もまともに動かせなかった。

(これじゃ、まるっきりおっさんだな・・・)

 そうは思うものの、身体には逆らえない。
 はやる気持ちを抑えながら、立成は空に向かって両手をあげて腰を伸ばした。
 少し気分が晴れた気がする。
 そのまま、駆け出した。

(ぐっ・・・俺、ほんとひどい格好だな・・・)

 立成の身体に一気に羞恥が現れてしまう。
 的場の裏を出ると、そこは一気に開けた。

 少し前、そこで自分が晒した醜態。
 犬のように四つん這いになり這い出していた自分。
 おまけに筒井からの浣腸責めにより決壊寸前の尻穴に指を入れられたままだった。
 そんな情景を思い返していたのだ。
 そのときは排便がしたくてしたくてたまらなかったため、そこまで気にする必要はなかった。気にすることができなかった。
 だが今は・・・
 思わず自分の身体を見下す。
 当然、何も身に着けていない。鍛えられ筋肉が刻まれた腕も、弛んだ腹も、皮を被った一物も、大きすぎる尻も、その全身に生えた体毛も、何も隠すものが無い。
 恥ずかしくない部分も、恥ずかしくてたまらない場所も、全てが丸出しの生まれたままの姿だ。そんな状態で、この30mの野外を歩けというのか。
 立成が気後れするのも当然だった。

 それでも、足を動かさないことには弓道場には戻れない。
 意を決して立成は駆け出した。
 
 少し走るだけで、立成の肉棒がブランブランと揺れる。
 普段はボクサーブリーフに包まれフィットしていた股間が自由自在になる。
 普通なら味わない、そんな解放感。
 
(は、恥ずかしいな・・・うぅ・・・だが・・・)

 恥じらいながらもうっすらと身体に走る言いようのない疼き。目覚めかける自身の官能。
 そんなものを感じながらも、立成は小走りで筒井を追いかけた。
 脂の乗っデカ尻を揺らし、逞しい太股を前後させて。
 雄雄しい立成のため、その走りは勇壮でもあったが、同時に滑稽でもあった。
 観客がいない、30代男性教師の屋外の全裸走行。
 立成の決死のストリーキングだった。

 いつも歩いている30mの距離。
 普段は部員たちが矢を取りに歩く道。
 10代の高校生が青春を過ごしている道。
 そんな場所を、今、自分は全裸で走っている。
 こんな、腹が弛んで毛が生えたみっともない、デカいだけの身体を晒して走っているなんて。
 いつにもまして、学校への冒涜をしているような気分がしてしまっていた。
 立成が走った時間はあっという間であるにもかかわらず、長く感じた。 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 弓道場に戻る。息が上がっていた。
 なんとか誰にも見られなかった。当然だ。誰もいないはずなのだから。そもそも走る必要などないのだから。
 それでも(もしかしたら・・・)と思うと、いてもたってもいられなかったのだ。

 息を整えて中に入る。
 筒井は道場の真ん中に座っていた。呆然としているようだった。

 どうしたというのだ。
 そんな筒井を見ていると立成も不安になる。立成は筒井の脇に座る。

「どうしたんだよ、おい」

 問いかけながらも、自然と背中をさすってやった。

「先生、ごめんなさい」
「えっ、なんだよ、一体」
「俺、また、先生にひどいことしちゃった」

 唐突な謝罪。
 何を言っているのかがわからなかった。
 ふざけているわけではなさそうだった。

(ひどいこと・・・か)

 立成は反芻していた。
 たしかに・・・

 立成は今日、先ほどの出来事を思い返す。 
 とても他人に言えたことではない。当たり前だ。
 だが、自分が興奮してしまっていたのも本当だった。

 あらためて筒井を見やる。
 17歳の背中。外見は大人になりかけているから、広い背中だ。だか、まだまだ薄く、そこが若い少年らしさが現れている。
 あんなことを自分にしたというのに、それはなんともはかなく、もろいもののように感じた。
 そして、自分への仕打ちは性欲だけではないのかもしれない。それ以外の何なのかは、立成はイメージには浮かんでも、うまく言語化ができないでいた。

 立成は息を吐いた。
 ここで自分がどうすべきか。何をしてやるべきか。

「筒井」
「・・・はい」
「いいんだ」

 自然と頭を撫でてやっていた。
 筒井は震えていた。
 顔は見なかった。見なくてもわかるからだ。
 
 色々なことを溜め込んでいるのだろう。
 立成の前ではひょうきんで、真面目な面もあって。淫らになってしまう立成が少し恐怖を感じるほどに責め立ててくる。
 それでもまだ17歳の少年なのだ。

 しばらくそのままだった。

 筒井の身体を擦ってやりながらも、思い返す。
 ゴールデンウィーク前の校長の言葉。そんなものが少しだけ頭をよぎる。

 だが・・・

 考えるまでもなく、立成の口から言葉が出ていた。

「なぁ、筒井」
「はい」
「辛かったなら、辞めたっていいんだぞ、部活」
「えっ?」

 筒井は驚いた顔で立成を見てくる。
 立成はそんな筒井を優しく見返している。

「お前、何だか最近、辛そうだからさ。そんな風に無理して部活やっても、楽しくないだろ?」
「・・・」

 沈黙。
 突拍子のない教師の言葉に、今度は生徒が言葉を失ってしまっていた。

「ごめん、ありがと先生。気を遣わせちゃって」
「いや、そんなことは」
「でもね、俺、ちゃんと部活は続けるよ。後ちょっとで終わるってのもあるし。大会は正直プレッシャーだけど、まぁがんばる」
「そうか・・・」
 
 立成が言わせたのかもしれない。あるいは、それを考慮してもまた筒井に無理をさせたのかもしれない。
 今だけかもしれない。
 また、汚い手段を使ってしまったのかもしれない。
 それでも自分の意思で考えた行動の結果であれば、きっとこの先、筒井だって納得するときが来るかもしれない。そんなことを立成は思っていた。

「それに、部活辞めたらこんな風にできないし」
「うん?」
「先生のこと、独り占めできるのは俺だけの特権だから」

 からかいのつもりは多分ない・・・だろう。
 男同士とか、教師と生徒だとか、年の差だとか、そういうことではなかった。
 ただ、人に思われらことの心地よさとその気恥ずかしさで、立成は赤くなってしまっていた。
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