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2年02月
2年02月 2
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先生の家は冬になっても相変わらずだった。
散らかっている感じではないけれど、きれいでもない、そんな感じだ
それは、まぁ、当たり前なんだけど。
「お邪魔しま~す」
俺はいつになく、改まった感じで部屋に入る。
初めてこの部屋に入ったときには、本当に緊張していた。
今では、なんというか、別の意味で緊張している。
先生は、ちゃぶ台の上に、お惣菜や飲み物を広げている。
先生の家に来る途中でひと通り買い揃えたものだ。
"今日は俺の部屋でメシを食っていけよ。"
部活の居残り練習のとき、唐突に先生にそう言われた俺は、頭が真っ白になってけど、承諾した。
先生の考えがよくわからなかった。あんなことをした生徒を、また部屋に呼び出すとは・・・
一体、何を考えているんだろう。
「なぁ、筒井。今日のお前は変な感じだったぞ。どうしたんだ?」
晩ご飯の最中、先生は、何でもないかのように聞いてきた。
表情を見ても、いかにもいつも通りって感じだ。
俺との関係が、生徒と教師であるだけ、というような。
あぁ、どうすればいいんだろう。
もう、ここで、切り出してしまいたい。先月の道場での、先生との行為・・・
それから、もうあんなことはしないと言って懺悔したい。
でも、あのことをぶり返してもいいものかどうかわからない。
今でも俺は先生が好きだし、やっぱりエロい目で見てしまう。
それが先生には、おかしな様子に見えてしまったのかもしれない。
「あのね、先生。俺将来どうしよっかなって」
あれ、俺何言ってるんだ?
唐突に口から出た言葉に、俺自身が驚いてしまった。
全部が嘘ってわけではないのだけれど、考えていったわけでもない。
まぁ、将来についての悩みがあるのは本当だけど。
この場で言うべきことを考えているうちに、無意識に出ていた台詞だ。
多分、あの時の道場でのことは、お互いに口に出さないようにしている、というのを、本能的に感じたんだと思う。
先生は、俺の発した言葉に、うんうんとうなずきながら、その後も俺の話を聞いてくれた。
それからは、先生との会話は、俺と先生の間柄としては、とても健全なものだった。
先生の高校時代の話。
部活のこと。
学校の裏の噂話。
スマホゲームアプリ。
貯金。
今までに話した内容の繰り返しのものもあった。
なんとなく、沈黙のときの空気を恐れた俺は、矢継ぎ早に会話のネタを切り替えていった。
楽しい夜だった。
何度か先生の部屋に来たけれど、一番会話できたんじゃないかと思った。
先生のことをもっと知れたような気がする。
普段よりも喉を使って頭を使って、会話を回して。
気づいたら甘いジュースをたくさん飲んでしまっていた。
先生もそんな俺に合わせるように、缶ビールを何本も消費していた。
「先生、おトイレかりま~す」
「おう」
用を足して手を洗いながら、考える。
大丈夫。上手くできている。と思う。
顧問の部屋に来ているのは変かもしれないけれど、今の俺と先生の雰囲気は、全然おかしくないはずだ。
どこにでもいる、顧問と生徒のように見えるはずだ。
濡れた両手で両頬を叩いて気合を入れる。
かといって、必要以上に意識しすぎるのも変だ。
先生が、これまでと同じような感じで接してくれるんだから、俺もそれに応じないと。
よし。いける。俺、できる!
そうやって考えながら、トイレの扉を開けた。
「あれぇ・・・」
トイレをを出て部屋に戻ったら、気の抜けた声を出してしまった。
先生は横になっていたのだ。
フローリングの床の上で、デカい身体を大の字にしている。
完全に眠ってしまっているようだ。寝息とともに、うっすらとしたいびきまで聞こえている。
酒のせいで顔が赤みを帯びている。
また飲み過ぎたのだろうか。
相変わらず、酒の量の調節ができない人のようだ。
まぁ、明日は学校も部活も休みだし、問題ないだろう。
とはいえ、俺はどうすればいいんだろう。
家主が眠ってしまった部屋というのも、どうも居心地が良くない。
とりあえず、今日の晩御飯の片づけでもしておこうか。
その間に、先生が目を覚ますかもしれないし。
しかし。勝手に部屋のモノを使ってもいいのだろうか・・・?
できる範囲で、ゴミをゴミ箱っぽいところに入れて、食器はシンクに戻して。ちゃぶ台を拭いて。
簡単に終わってしまった。
まだ先生は寝ているようだ。
やれやれ。
呆れて座りなおしながら、改めて寝ている先生を見つめてみる。
厳つい雄臭い顔なのだが、寝顔になると気が抜けた感じで可愛いのだ。
閉じているけど、目が可愛い感じで、太い眉毛も少し垂れぎみになるし、ほっぺも緩んだ感じになるし。
ほんわかした気分で眺めていた。
おっさんぽさもあるし、青年ぽさもあるし。
どっちにも見えるよなぁ。どっちかと言ったら、うーん、おっさんよりかな?
がっしとした顎に生えているまばらに髭が生えているし。
多分、朝は剃ったんだと思うけれど、夜になってまた生えてきたんだろうな・・・
まずい。
先生の雄味を意識してしまった。
ゴクリ。
思わず喉を鳴らしてしまった。
我ながらわかりやすいと呆れてしまう。
さっき、俺は何を決意していたんだっけ?
しかし、その決意なんて、簡単に折れてしまい、俺の身体はさっと寝ている先生のそばに移動してしまっていた。
散らかっている感じではないけれど、きれいでもない、そんな感じだ
それは、まぁ、当たり前なんだけど。
「お邪魔しま~す」
俺はいつになく、改まった感じで部屋に入る。
初めてこの部屋に入ったときには、本当に緊張していた。
今では、なんというか、別の意味で緊張している。
先生は、ちゃぶ台の上に、お惣菜や飲み物を広げている。
先生の家に来る途中でひと通り買い揃えたものだ。
"今日は俺の部屋でメシを食っていけよ。"
部活の居残り練習のとき、唐突に先生にそう言われた俺は、頭が真っ白になってけど、承諾した。
先生の考えがよくわからなかった。あんなことをした生徒を、また部屋に呼び出すとは・・・
一体、何を考えているんだろう。
「なぁ、筒井。今日のお前は変な感じだったぞ。どうしたんだ?」
晩ご飯の最中、先生は、何でもないかのように聞いてきた。
表情を見ても、いかにもいつも通りって感じだ。
俺との関係が、生徒と教師であるだけ、というような。
あぁ、どうすればいいんだろう。
もう、ここで、切り出してしまいたい。先月の道場での、先生との行為・・・
それから、もうあんなことはしないと言って懺悔したい。
でも、あのことをぶり返してもいいものかどうかわからない。
今でも俺は先生が好きだし、やっぱりエロい目で見てしまう。
それが先生には、おかしな様子に見えてしまったのかもしれない。
「あのね、先生。俺将来どうしよっかなって」
あれ、俺何言ってるんだ?
唐突に口から出た言葉に、俺自身が驚いてしまった。
全部が嘘ってわけではないのだけれど、考えていったわけでもない。
まぁ、将来についての悩みがあるのは本当だけど。
この場で言うべきことを考えているうちに、無意識に出ていた台詞だ。
多分、あの時の道場でのことは、お互いに口に出さないようにしている、というのを、本能的に感じたんだと思う。
先生は、俺の発した言葉に、うんうんとうなずきながら、その後も俺の話を聞いてくれた。
それからは、先生との会話は、俺と先生の間柄としては、とても健全なものだった。
先生の高校時代の話。
部活のこと。
学校の裏の噂話。
スマホゲームアプリ。
貯金。
今までに話した内容の繰り返しのものもあった。
なんとなく、沈黙のときの空気を恐れた俺は、矢継ぎ早に会話のネタを切り替えていった。
楽しい夜だった。
何度か先生の部屋に来たけれど、一番会話できたんじゃないかと思った。
先生のことをもっと知れたような気がする。
普段よりも喉を使って頭を使って、会話を回して。
気づいたら甘いジュースをたくさん飲んでしまっていた。
先生もそんな俺に合わせるように、缶ビールを何本も消費していた。
「先生、おトイレかりま~す」
「おう」
用を足して手を洗いながら、考える。
大丈夫。上手くできている。と思う。
顧問の部屋に来ているのは変かもしれないけれど、今の俺と先生の雰囲気は、全然おかしくないはずだ。
どこにでもいる、顧問と生徒のように見えるはずだ。
濡れた両手で両頬を叩いて気合を入れる。
かといって、必要以上に意識しすぎるのも変だ。
先生が、これまでと同じような感じで接してくれるんだから、俺もそれに応じないと。
よし。いける。俺、できる!
そうやって考えながら、トイレの扉を開けた。
「あれぇ・・・」
トイレをを出て部屋に戻ったら、気の抜けた声を出してしまった。
先生は横になっていたのだ。
フローリングの床の上で、デカい身体を大の字にしている。
完全に眠ってしまっているようだ。寝息とともに、うっすらとしたいびきまで聞こえている。
酒のせいで顔が赤みを帯びている。
また飲み過ぎたのだろうか。
相変わらず、酒の量の調節ができない人のようだ。
まぁ、明日は学校も部活も休みだし、問題ないだろう。
とはいえ、俺はどうすればいいんだろう。
家主が眠ってしまった部屋というのも、どうも居心地が良くない。
とりあえず、今日の晩御飯の片づけでもしておこうか。
その間に、先生が目を覚ますかもしれないし。
しかし。勝手に部屋のモノを使ってもいいのだろうか・・・?
できる範囲で、ゴミをゴミ箱っぽいところに入れて、食器はシンクに戻して。ちゃぶ台を拭いて。
簡単に終わってしまった。
まだ先生は寝ているようだ。
やれやれ。
呆れて座りなおしながら、改めて寝ている先生を見つめてみる。
厳つい雄臭い顔なのだが、寝顔になると気が抜けた感じで可愛いのだ。
閉じているけど、目が可愛い感じで、太い眉毛も少し垂れぎみになるし、ほっぺも緩んだ感じになるし。
ほんわかした気分で眺めていた。
おっさんぽさもあるし、青年ぽさもあるし。
どっちにも見えるよなぁ。どっちかと言ったら、うーん、おっさんよりかな?
がっしとした顎に生えているまばらに髭が生えているし。
多分、朝は剃ったんだと思うけれど、夜になってまた生えてきたんだろうな・・・
まずい。
先生の雄味を意識してしまった。
ゴクリ。
思わず喉を鳴らしてしまった。
我ながらわかりやすいと呆れてしまう。
さっき、俺は何を決意していたんだっけ?
しかし、その決意なんて、簡単に折れてしまい、俺の身体はさっと寝ている先生のそばに移動してしまっていた。
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