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2年04月
2年04月 2
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弓道場の玄関前で雑巾で矢を拭いているときだった。
「なぁ、筒井。部員がお前ひとりになったのってさ」
筒井は、立成の顔が、少し神妙になっていることに気づいた。
あぁ、気まずいことがあったのか、気にしているんだな。見た目は少し体育会系な感じではあるが、案外気を使うタイプなのかもしれない。それとも、今どきの教育手法としてはそういうものなのだろうか。
「先生が気にするようなことはなかったよ。4月に俺入れて4人入ったんだけどさ。4月に1人が合わなくてやめて、1人は学業に専念するからってやめた。もう1人は親の都合で転校してっただけ。」
「そうか。でも、せっかくの高校の部活で同学年がいないってのは、寂しいだろう?」
「・・・まぁ、そうかもね。でも、先輩たちもいるし。」
あまり考えていなかったことだ。1人で部活は寂しいのだろうか?あまりピンとこない。正直、1人だから気楽でやっている部分もある。
「でも、3年生は6月で引退だろう?まぁ、インターハイに出るかもしれないけど、それでも夏までだ。そのあとは1年生の指導もあるし、自分の練習だってあるんだぞ。」そうか、たしかにそうだ。
「うーん。でも、俺は1人でも楽しくやれるし。」
「そうか?あまり強がるなよ。先生なんて、弓道はやったことはないけどさ。筒井の力になりたいって思うぞ。まぁ、今はなんにもできないけどさ。」
びっくりした。顧問1日目でそこまで生徒に関わってくるのか。
俺は改めて先生を見る。見た目の印象は体育会系を思わせるが、そこまで強引な雰囲気を感じていなかった。だから、生徒との関係もがつがつ踏み込んでこないかと思いきや、ずばっと思ったことを言ってくる。
「そう?じゃあ、先生を頼りにさせてもらうかな。」
「おう。せっかくだからな。」
「じゃあ、先生、最初のお願い。先生って彼女いるの?」
「はぁ?何だいきなり?」
「協力してくれるっていうから」
「関係ないと思うのだが」
「いいじゃん。俺、同学年いないんだからさ、その代わりだと思って!俺、先生と仲良くなりたいしさ。こういうのって、お互いのことを知ることから始まるじゃん。」
それは嘘ではなかった。自分でも驚くほど自然に言葉がでてくる。
筒井はこれまで、自分の性的嗜好のこともあるが、そうでなくても、教師とは一定の距離を置いていた。教師は教師。授業をする職業。自分との関係は、特にない存在。ただ毎日顔を合わせるだけの存在。
そうだというのに、立成との会話では、調子にのったようなタメ口が、自然と湧き出てくる。
「そういわれると、こっちからは何も言えんなぁ。」立成は苦笑いする。
「で、どうなの?あ、もしかしてもう結婚してる?でも指輪はしてないよね」
「華の独身だ。相手も募集中の身だ」
「そうなんだ。こんなに恰好いいのに」
いかにも冗談ぽい言い方で、でも言葉は本心で筒井は言ってしまう。
実際、立成は背が高い。体格もいい。顔は、まぁ、所謂イケメンとは違うけれど、不細工ってわけではない。一重だけど目は小さくないし、鼻や口もも変な形をしているわけではない。と思った。
「・・・馬鹿にしてるだろ」
「あはは。してないしてない!先生はかっこいいから!」
「くそっ。そういうお前はどうなんだよ。まぁ、男子校だから難しいか。」
「勝手に決めないでよ」
「へぇ、いるのか」
「ふふ。秘密」
「あぁ?なんじゃそりゃ。まぁ、うまくやれよ」
立成はにやっと笑った。筒井も思わず笑う。
立成が見せた笑顔は、初めて会ったときの笑顔と同じだった。
「なぁ、筒井。部員がお前ひとりになったのってさ」
筒井は、立成の顔が、少し神妙になっていることに気づいた。
あぁ、気まずいことがあったのか、気にしているんだな。見た目は少し体育会系な感じではあるが、案外気を使うタイプなのかもしれない。それとも、今どきの教育手法としてはそういうものなのだろうか。
「先生が気にするようなことはなかったよ。4月に俺入れて4人入ったんだけどさ。4月に1人が合わなくてやめて、1人は学業に専念するからってやめた。もう1人は親の都合で転校してっただけ。」
「そうか。でも、せっかくの高校の部活で同学年がいないってのは、寂しいだろう?」
「・・・まぁ、そうかもね。でも、先輩たちもいるし。」
あまり考えていなかったことだ。1人で部活は寂しいのだろうか?あまりピンとこない。正直、1人だから気楽でやっている部分もある。
「でも、3年生は6月で引退だろう?まぁ、インターハイに出るかもしれないけど、それでも夏までだ。そのあとは1年生の指導もあるし、自分の練習だってあるんだぞ。」そうか、たしかにそうだ。
「うーん。でも、俺は1人でも楽しくやれるし。」
「そうか?あまり強がるなよ。先生なんて、弓道はやったことはないけどさ。筒井の力になりたいって思うぞ。まぁ、今はなんにもできないけどさ。」
びっくりした。顧問1日目でそこまで生徒に関わってくるのか。
俺は改めて先生を見る。見た目の印象は体育会系を思わせるが、そこまで強引な雰囲気を感じていなかった。だから、生徒との関係もがつがつ踏み込んでこないかと思いきや、ずばっと思ったことを言ってくる。
「そう?じゃあ、先生を頼りにさせてもらうかな。」
「おう。せっかくだからな。」
「じゃあ、先生、最初のお願い。先生って彼女いるの?」
「はぁ?何だいきなり?」
「協力してくれるっていうから」
「関係ないと思うのだが」
「いいじゃん。俺、同学年いないんだからさ、その代わりだと思って!俺、先生と仲良くなりたいしさ。こういうのって、お互いのことを知ることから始まるじゃん。」
それは嘘ではなかった。自分でも驚くほど自然に言葉がでてくる。
筒井はこれまで、自分の性的嗜好のこともあるが、そうでなくても、教師とは一定の距離を置いていた。教師は教師。授業をする職業。自分との関係は、特にない存在。ただ毎日顔を合わせるだけの存在。
そうだというのに、立成との会話では、調子にのったようなタメ口が、自然と湧き出てくる。
「そういわれると、こっちからは何も言えんなぁ。」立成は苦笑いする。
「で、どうなの?あ、もしかしてもう結婚してる?でも指輪はしてないよね」
「華の独身だ。相手も募集中の身だ」
「そうなんだ。こんなに恰好いいのに」
いかにも冗談ぽい言い方で、でも言葉は本心で筒井は言ってしまう。
実際、立成は背が高い。体格もいい。顔は、まぁ、所謂イケメンとは違うけれど、不細工ってわけではない。一重だけど目は小さくないし、鼻や口もも変な形をしているわけではない。と思った。
「・・・馬鹿にしてるだろ」
「あはは。してないしてない!先生はかっこいいから!」
「くそっ。そういうお前はどうなんだよ。まぁ、男子校だから難しいか。」
「勝手に決めないでよ」
「へぇ、いるのか」
「ふふ。秘密」
「あぁ?なんじゃそりゃ。まぁ、うまくやれよ」
立成はにやっと笑った。筒井も思わず笑う。
立成が見せた笑顔は、初めて会ったときの笑顔と同じだった。
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