上 下
16 / 22

攻めが女体化して受けが目覚める(念のため肉体NL注意)

しおりを挟む
 先週から依頼されていた案件がようやくひと段落しようやく落ち着いた朝を迎えることができた。

「さすがに1週間で納品してくれってのは酷かった。」
グラフィックデザイナーとして独立し、最近は余裕のある仕事日程しかこなしていなかった。今回のようなハードなスケジュールは本当に久々だった。納品が終わった後に爆睡したはずなのになんだか体の疲れが取れない気がする。腕や腰を回しながら久しぶりに恋人へ連絡しようと携帯を取り出したタイミングで携帯電話がなりだした。着信の画面には先ほどまで思い浮かべていた恋人の名前が表示されている。

「おはよう。朋幸ひs。『悠斗、助けてくれ!』ッ!」
「どうしたの?朋幸?なにがあったの!」
恋人の焦った声を聞いて驚いてしまう。いつも冷静で落ち着いている彼にしては珍しいことだ。声の感じもいつもより高く可愛らしい感じがした。

『おまえしか頼れる奴がいなくて。』
「わかった、今どこにいるの?家?すぐに行くからね。」
電話越しに彼の不安そうな声が伝わる。少しでも早く案心させたくて電話を切ると彼の家へと向かった。


 彼には本当に驚かせられた。家についてインターフォンを鳴らすとすぐに彼が出てくれた。と思ったら何故か見知らぬ可愛らしい女性が立っていた。さらに彼女の出で立ちは男性物のワイシャツを羽織る状態でいわゆる彼シャツ状態であった。一瞬浮気を疑ったが、それならわざわざ連絡などしないはずだ。もしかすると目の前の女性が何か彼に危害を加えようとしているのではと思い、彼女を睨みつけ怒鳴ってしまった。すると目の前の女性は泣きそうな顔で俺に抱きついてきた。『悠斗助けてくれ!!』何度も叫ぶ彼女の真剣な声にある嫌な思いが浮かぶ。

「もしかして・・・・・・朋幸?」

 あの後、大泣きしている朋幸を宥めながら部屋の中へ移動する。リビングにある二人がけ用のソファに座らせる。本来だと自分よりも一回り以上大きい彼が今は自分よりも小さくてなんだかドギマギしてしまう。勝手知ったる彼の家のキッチンでコーヒーをいれる。愛用の大きめのカップを彼に手渡す。少し泣いて落ち着いたのか目元を赤くしながら素直にコーヒーを受け取った。自分も彼の隣に腰を落とした。


「大丈夫?」
「あぁ、問題ない。取り乱してすまなかった。」
「にしても、何がどうなってそうなったの?」
「わからない。朝起きたらこうなってたんだ。」
「にしても、ファンタジーみたいだね。女性になるなんて。」
まさか朝起きたら彼氏が女性になっているなんて誰が想像できるだろう。あまりの変わりように驚きを通り越しておかしくなってしまう。彼を見ながらついおかしくて笑ってしまった。俺の様子にむっとした表情を浮かべてこちらを睨んでくるがその可愛らしい顔のせいで怖さが半減してしまっている。

「笑い事ではないぞ。仕事だってあるしどうすればいいんだ。」
「うーん、とりあえず悩んでいてもしょうがないわけだし。会社に連絡したら?」
「あぁ、そうだな。席を外して悪いな。」
スッと立ち上がると携帯をもって別な部屋へといってしまう。パタパタと大きくなったスリッパを履いて歩く姿は実に可愛らしい。先ほどから彼に対して今まで持ったことのない気持ちが湧いてきている気がする。数分すると彼がもどってきて自分の横に座りなおした。

「電話してきたの?」
「あぁ、とりあえず残っていた有給をつかって2,3日休むことにしたよ。すまなかったな。悠斗の方は仕事は大丈夫なのか?」
「うん、案件は一段落しているからね。」
少しさめたコーヒーを一口、一口ゆっくりと飲む姿はまるで絵になるなぁとついついジッと見つめてしまう。

「どうした?じっと見つめてきて。」
「いや、朋幸が女の子だとすっごくかわいいなぁ。」
「な!からかってるのか?」
訝しげにこちらを向いた朋幸の頬を指の背でなでるように触れる。俺の言葉に恥ずかしかったのか顔を赤らめている。

「いやいや、ごく普通の感想です。何となくだけど綺麗な女性になるイメージだったからこんなカワイイ感じになるとは思わなかった。」
「カワイイというのは悠斗みたいな奴を言うんだ。」
いつもの彼もかっこよくて大好きだけど、今の女性になったかれも可愛くてステキだと本当に感じる。他のどの可愛い女性にもそのような思いは抱かなかった。彼が女性になったからこそこんなに胸がときめくんだろう。

「そっかなぁ?いつもと違うからなんかドキドキしてきた。」
「ちょ、待った。なんか怖いんだが?」
いつもと違う俺の様子を感じて朋幸は後ろに仰け反る。途惑った彼の様子をきにすることなくさらに近づいていく。

「えぇ、いつもと逆になるのもいいんじゃない?」
「や、やめ。俺はそういうつもりでは・・・・・・。」
「待てないなぁ。」
拒否をする彼の手を掴むと俺は唇にキスをするため顔を近づけた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

理香は俺のカノジョじゃねえ

中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

処理中です...