ゴブリンさんと......

ユタカ

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第一部

ゴブリンさんと......

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「ついに、ここまで来たか。」
俺は今とある村までやってきた。森の奥深いところにあるこの村は一見するとのどかな田舎にある村だ。ただひとつ、普通と違うところがある。それは村に住んでいる住人がゴブリンであるということ。俺たち、人間にとってゴブリンの印象はすごく悪い。森の中でたまに出会うあいつらはものすごく臭い。それはなんといえばいい臭いなのだろう?動物のフンのようであり、なおかつ甘い香り、そして何かが腐った臭いが混ざっているという最悪なものだ。森の中で遭遇してしまえばたちまち鼻が利かなくなってしまう。森の中でその状態になってしまえばいろんな危険な目にもあいやすくなる。それにやつらは女性をさらうと言われている。攫われた女性は孕む道具として扱われるらしい。そんなことからもゴブリンは物凄く嫌われていた。

 しかしながら、あることをきっかけにゴブリンに対する俺たちの常識が根底から覆されてしまった。それは数十年前におきた。俺がすんでいる町にとある人物がやってきた。名はイエスタ様。そして種族はエルフだと言う。エルフという種族はこの世界では珍しい存在だ。とても長命な種族で、魔法や学問に長けている。彼もまた能力が高く。俺たちの町の冒険者ギルドに入って早々幹部クラスの人材になったらしい。あの方がゴブリンについて色々と教えてくれた。その結果、今では町と村としての交流ができるようにまでなった。


「いらっシャイ。おキャク人。」

「あぁ、じゃまするよ。」
門番であるゴブリンに挨拶をし、村の中に入る。村にあるゴブリンたちの家は丸太でできており、一階建ての平屋だった。さらに彼らの体に合わせているのか俺たち、人間の家に比べるとだいぶ小さめに作られている。

「意外にかわいい家なんだなぁ。それにしても・・・・・・。イエスタ様の言うとおりなんだ。」
あたりを見回しながらスンスンと臭いを嗅ぐしぐさをする。何かわからないが花のような甘くいい香りが鼻腔をくすぐる。おれも村に来るまで信じがたい話だと思った。まさかゴブリンがきれい好きだとは思いもしなかったなぁ。あたりをキョロキョロと見ながら村の門からまっすぐに進むと少し大きめの建物が見える。

ゴブリンたちの家のように木造ではあるが、もっとしっかりとした作りで大きさも二周り、いやそれ以上の大きさはあるだろうな。木製のドアをゆっくりと開いて中に入る。手前にカウンターがあり、そこで座って何かを見ているゴブリンがドアを開ける音に気づいてこちらをみる。

「ギギッ。いらっしゃいマセ。お泊リデスカ??」

「あぁ、一泊たのむ。」

「カシコマリました。」

「そ、それと・・・・・・例のもおねがいしていいか??」

「わかりマシタ。ユウハン後でもいいでスか??」

受付を済ませて鍵を渡され、止まる部屋を案内される。部屋はベッドとアームチェアにミニテーブルがあるくらいの小ぢんまりとしているがとても奇麗だ。村全体を香るあの甘い香りも部屋全体に漂っている。

「ギー。デハ、およびするマデゆっくりしてクダさい。」
案内してきたゴブリンはそのまま扉を閉めると部屋を後にした。荷物を床に置き、外套ガイトウをチェアにかける。そのままベッドに転がるように寝る。

「本当に大丈夫か。俺、できるか不安になってきた。」
今回俺が村に来た大きな理由がある。先ほど宿の店員にもお願いしたのもそれに大きく関わっている。なぜ、俺がわざわざゴブリンの村にまでやってきたのかそれは数日前の話にさかのぼる。







『よう、ラト。』
その日はいつものように冒険者ギルドへ依頼達成の報告をすませ、近くの酒場で飲んでいるときだった。

『お、久しぶりだな。どこに依頼に行って来てたんだ??』
声をかけてきたのは昔馴染みの冒険者のひとりだ。俺は普段、ひとりで依頼をこなしているのだがたまにパーティを組む時などでよく世話になっている。そういえば、最近しばらくこいつらの姿を見かけてなかった事を思い出す。

『あ、あぁ-。ちょっと野暮用でな。』
歯切れが悪くいつもより言葉を濁している。普段みている彼の姿からは180度違う姿に疑問が浮かぶ。

『なんだよ野暮用って、気になるだろ。なあ、教えろって!』
最初は頑なに理由ワケを話そうとはしなかったが何度も教えろと相手に問いただす。よほど、しつこかったかついに諦めて教えてくれた。


『おめぇ、絶対他の奴らに言うなよ。実はな……最近、イエスタ様のおかげでゴブリン村と交流できるようになったろ?』

『あぁ、そうだな。』

『噂なんだけどな、村のゴブリンが子供が欲しいらしくて俺たち、冒険者と子作りしてぇって話らしいってのを聞いてよ。まぁ、面白半分で行ってみたんだわ。』

『はぁ!?』

『おまっ!静かにしろ!』
あまりに衝撃的な内容で叫んでしまい、慌ててそいつが俺の口を塞いできてぎろっとにらんでくる。店内は賑やかだったため俺の声に気にかけるものがいないのは幸いだと思いつつ謝罪を口にする。そのまま顔をつき合わせるように近づけて小声で話し始めた。

『わ、悪い。で?それでやったのか?』

『あ、あぁ-。』

『ゴブリンだろ?できるか普通、それにあいつらって雄だけだろ?どうやってやんだよ。』

『いや、あいつら雄でも雌でもねぇな。正確には両性ってとこだな。』

『え!?両性って女の部分もあるって奴だよな。すげぇ……あ!でもさ、両性つったって、俺たちと同じもんぶらさがってるんだろ?普通そういう奴らを抱けるか?』

『まぁ、俺も最初はいけるかなとか思ってたんだけどよ。むこうもその辺気を使ってるのか色々工夫してくれるてそこまで気にならなかったんだよ。それに俺たち姉ちゃんとこ行けるほど金なんかねえだろ?姉ちゃんたちの購入までのつなぎとか練習とか思えばいいしな。やる時も安い宿代しかからんし。』
そいつの言ってることにも一理ある。俺たちが言ってる姉ちゃんとは要するに娼婦の事だ。この街にも娼婦はいる。しかしながら管理自体を町が請け負ってるため、金額が通常の町に比べて高い。他に安い金額の街娼などもこの町には存在していない。正直にいって、下っ端冒険者である俺達が手を出すには厳しい。だからといっても他の遠い町までいってわざわざ娼婦を買う余裕だってない。

『お前もやってみたらどうだ。具合は良かったぞ。それに出し放題だ。』










彼女も伴侶もおらず、底辺の冒険者であり、娼婦すら買う金もない俺は結局そいつの誘惑に勝つことができなかった。結果としてゴブリンの村までやってきてしまったというわけなのだが……。

「だめだだめだ!!これ以上考えても埒があかねぇ。とりあえず会って駄目なとき帰ってもらえばいいか。」
色々考えすぎたがいまひとつこの状況を打破する考えも浮かばず思考することすら放棄して夕飯の呼び出しがあるまで眠ることにした。
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