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1限目を僕と滝君は公欠にしてもらって、構内を案内してもらうことになった。
「そう言えば、滝君さ」
「滝でいいよ。」
ポケットに手を突っ込んだまま滝が言った。
化学室、音楽室、視聴覚室ーと次々紹介してもらう。
それから階段をのぼり、ドアをガチャッと開けた。
「ここが屋上。」
「すご·····!」
「そんなにすごいか?」
ひっくりしたように少しはにかんで、滝が俺の方を見た。
元々居た高校の屋上は常時封鎖されていたから、学校の屋上にはいるのは初めてだった。
高校生ならではの、青春を感じる。
「萩原、ごめん。」
「ん?」
一言謝ってから、滝は俺の腕を掴んだ。佐久間くんみたいに。
「·····ど、どうしたの?」
滝はすぐに手を離してその手の感触を確かめるように、手を開いたり閉じたり、を繰り返した。
「んー·····やっぱ、お前細いな。」
俺はまたギグっと体を強ばらせた。
「·····そう?なんでかな、部活とか、やってなかったせいかも。」
若干言葉は詰まったけど、上手く話せているはずだ。
屋上に吹く、夏の暑い日差しにさらされた涼しい風が滝の前髪をかきあげるようにした。
「いいじゃん。なんか、めんこいし。」
そう言って滝は、白い歯を少しだけ見せて笑った。奥二重の瞼もゆるい弧を描く。
「·····っあ、ありがと·····。滝さ、もしかしてめんこいって·····。」
ハッとしたように彼はポッケから手を出し、口元に当てた。
「バレたかあ。俺、北海道出身なんだ。中2まではそっちに居たんだ。」
厳しい日差しが、薄いシフォンのような雲に覆われて柔らかな物になる。
それから、2人で屋上に寝っ転がって他愛も無い話をした。
「萩原、自己紹介でバンドが好きって言ってたよね。実は俺も好きでさ。」
「う·····た、滝。」
「何?」
穏やかな切れ目だけをこちらに向けてそういった。
「それ、嘘なんだ。」
クラス全員の前でこんなしょうもない嘘をついたことを今更後悔する。
え、なんでなんで、と面白そうにニヤニヤした滝が起き上がる。
「その·····あんま笑わないで欲しいんだけど·····。バンドが好きって言った方が、量産型って感じがして。」
俺はその後に、最初の印象とかって大事じゃん、と小声で付け足した。
滝は流れる雲を見て、うーんと少し悩んだような声を出してから、つまり、と切り出した。
「萩原は、なりきりたかったわけだ。」
俺の方をじっと見て、ゆっくりと筋肉質な腕を伸ばした。
その指先が、俺の目の前まで迫った時、反射的に目をつぶった。
滝は俺の髪に触れていた。
「じゃあこのヘタクソなセットも、なりきり、だな。」
「なっ!」
イタズラそうに笑う滝と反面に、俺の顔は赤くなるのが分かる。
「ははははは!!からかって悪かった!」
そう言って滝は立ち上がって、俺に手を貸してくれた。
「う·····この話は秘密な!」
「わかってるよ。俺と萩原の秘密。」
そのまま俺たちは屋上の階段をおりた。
起きあがる時に貸してくれた手で、滝はちゃっかり俺の手を握ったままだ。
「滝?いつまで握ってんの?」
「俺達が手繋いで教室入ったら、みんなどんな顔するだろうな。」
「は?!だ、ダメに決まってるだろ!」
「はいはい、ごめんな。」
「う·····すぐ意地悪するもんなあ。」
滝は、記念すべき俺の一人目の友達だ。
「そう言えば、滝君さ」
「滝でいいよ。」
ポケットに手を突っ込んだまま滝が言った。
化学室、音楽室、視聴覚室ーと次々紹介してもらう。
それから階段をのぼり、ドアをガチャッと開けた。
「ここが屋上。」
「すご·····!」
「そんなにすごいか?」
ひっくりしたように少しはにかんで、滝が俺の方を見た。
元々居た高校の屋上は常時封鎖されていたから、学校の屋上にはいるのは初めてだった。
高校生ならではの、青春を感じる。
「萩原、ごめん。」
「ん?」
一言謝ってから、滝は俺の腕を掴んだ。佐久間くんみたいに。
「·····ど、どうしたの?」
滝はすぐに手を離してその手の感触を確かめるように、手を開いたり閉じたり、を繰り返した。
「んー·····やっぱ、お前細いな。」
俺はまたギグっと体を強ばらせた。
「·····そう?なんでかな、部活とか、やってなかったせいかも。」
若干言葉は詰まったけど、上手く話せているはずだ。
屋上に吹く、夏の暑い日差しにさらされた涼しい風が滝の前髪をかきあげるようにした。
「いいじゃん。なんか、めんこいし。」
そう言って滝は、白い歯を少しだけ見せて笑った。奥二重の瞼もゆるい弧を描く。
「·····っあ、ありがと·····。滝さ、もしかしてめんこいって·····。」
ハッとしたように彼はポッケから手を出し、口元に当てた。
「バレたかあ。俺、北海道出身なんだ。中2まではそっちに居たんだ。」
厳しい日差しが、薄いシフォンのような雲に覆われて柔らかな物になる。
それから、2人で屋上に寝っ転がって他愛も無い話をした。
「萩原、自己紹介でバンドが好きって言ってたよね。実は俺も好きでさ。」
「う·····た、滝。」
「何?」
穏やかな切れ目だけをこちらに向けてそういった。
「それ、嘘なんだ。」
クラス全員の前でこんなしょうもない嘘をついたことを今更後悔する。
え、なんでなんで、と面白そうにニヤニヤした滝が起き上がる。
「その·····あんま笑わないで欲しいんだけど·····。バンドが好きって言った方が、量産型って感じがして。」
俺はその後に、最初の印象とかって大事じゃん、と小声で付け足した。
滝は流れる雲を見て、うーんと少し悩んだような声を出してから、つまり、と切り出した。
「萩原は、なりきりたかったわけだ。」
俺の方をじっと見て、ゆっくりと筋肉質な腕を伸ばした。
その指先が、俺の目の前まで迫った時、反射的に目をつぶった。
滝は俺の髪に触れていた。
「じゃあこのヘタクソなセットも、なりきり、だな。」
「なっ!」
イタズラそうに笑う滝と反面に、俺の顔は赤くなるのが分かる。
「ははははは!!からかって悪かった!」
そう言って滝は立ち上がって、俺に手を貸してくれた。
「う·····この話は秘密な!」
「わかってるよ。俺と萩原の秘密。」
そのまま俺たちは屋上の階段をおりた。
起きあがる時に貸してくれた手で、滝はちゃっかり俺の手を握ったままだ。
「滝?いつまで握ってんの?」
「俺達が手繋いで教室入ったら、みんなどんな顔するだろうな。」
「は?!だ、ダメに決まってるだろ!」
「はいはい、ごめんな。」
「う·····すぐ意地悪するもんなあ。」
滝は、記念すべき俺の一人目の友達だ。
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