【側妻になった男の僕。】【何故か正妻になった男の僕。】アナザーストーリー

selen

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#32

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アルヴァマー帝国城下町郊外菜の花畑ー
「…… …… ……よし、終わったぞ。」
「ん、じゃあ城に戻るか。」
菜の花の丘の上には、『英雄』とだけ彫られた墓石が立っている。
真四角の墓石の周りには、3人が持ち寄せた色とりどりな花で溢れている。
「ヘルツシュさん、喜んでっかなあ。……あ、そうだ!」
ゼリムが突然大きな声を出す。
「…… ……っうるっせえよてめぇ!!大した事じゃなきゃぶっ潰すぞ!」
今にも噛みつきそうなゲルガーを馬のようにどうどう、とゼルダが牽制した。
「今朝、ウィル様と国王から手紙が来たんだよ!」
「は?」
「……いやそれは早く言えよ。」
ゲルガーは眉間に寄せていたシワを力無く脱力させて、ゼルダはため息を吐き頭を支えるように手を当てて、ゼリムの抜けっぷりに二人は呆れたようにぽかんとする。
「ほら、見てみろって!」
そう言ってゼリムは自分のジャケットの内ポケットから、白い封筒を取り出して見せた。
3人で頭を寄せて便箋に綴られた文章を覗き込んだ。


『 ゼリム・バリヤード様
ゲルガー・レム様
ゼルダ・サイライト様


ウィル・フリードです。
3人ともお元気ですか?

僕達の生活はやっと安定してきました。
本当は、アルヴァマー帝国に行くことはもうちょっと先延ばしにしようとしていたんですけど、ルイスが行きたい行きたいってしつこいので、この手紙が届く頃に3人で行こうと思います。

ルイスはこの日を、今か今かと首を長くして待っていました。
是非歓迎して頂けると嬉しいです。


ウィル・フリード』


「え?なに?ちょっとまって?」
一番最初に喉に突っかかる声を捻り出したのはゼルダだった。
「え?じゃあ国王とウィル様は今日あたりに来るってこと?」
「うん、そうじゃね?」
手紙を隠し持っていた(?)本人ゼリムは呑気に菜の花の香りを楽しんでいる。
「いやお前ら着目点そこじゃないだろ。」
最後まで文章に釘付けのゲルガーがここを見ろ、とある部分に指をさした。

『3人で行こうと思います。』

「……あ……ほんとだ。」
「ごめん多分信じられないから無意識に風化してたんだと思う。」
「え、誰と誰と誰?」
男3人はのどかな菜の花畑の丘の上で見つめ合った。
「ルイス国王でしょ?」
「あと、ウィル様……。」
「あと誰か居る?」
何処か遠くで小鳥が囀る。

「「「あと一人は!?!」」」

地平線まで続く菜の花畑に3人の叫び声が響いた。
「お、おい!緊急事態だ!」
目を血走らせて手紙を取り上げたのはゼルダだった。
ゲルガーはわなわなと手をふるわせ、ゼリムは尻もちを着き人生の最後に直面しているかのような顔をしている。
「こんな畑で話し合っている場合じゃない!」

「三銃士会議だ!」

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