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第三章~悪魔の気持ち~
出会い
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「母さんの故郷いいとこだなぁー」
高校三年の夏休み。
先輩でも後輩でも同級生でも。
とりあえず誰とでも殴り合いの喧嘩して、何の努力をしてなくても女は寄ってきてた。
俺が金持ちだから。
親父が日本を代表する会社の社長である俺は、小さな頃から次期社長としての教育を受けてきた。
でも、そんなふうに大人しくしてたのは小学生まで。
親父が家を顧みなくなった頃から俺は遊び始めた。
女なんて、ただ抱ければなんでもよかった。
人間なんて殴るような価値しかなかった。
金だけはいくらでもあったから。
なんでもできた。
そんな俺に見かねた母さんが、俺を故郷につれてきたんだ。
今いる場所は、北海道の厚岸というところ。
「夏は暑すぎなくて最高でしょ?」
「あぁ。空気もめっちゃいい」
俺が唯一この世で信頼してるのは、母さんだけだった。
母さんの前だけは素直になれた。
「つーか人なんて住んでんのかよ」
「ばか、住んでるに決まってるじゃない!ほら、暁と同世代の子達じゃない?」
バスから降りてくる制服姿の女の子たちの姿。
「高校なんてあるんだな」
ちょうど、高校のまえだったようでバスからたくさんの生徒が降りてくる。
「いまはもうひとつだけだけどね。あたしもここ出身なの」
嬉しそうに校門にある学校名に触れる。
「ふーん」
あまり興味無さそうにしたけど、本当は嬉しかった。
親父が家に帰ってこなくなってからあまり笑顔を見れなくなってたから。
「ちょっとまってー!」
いま俺の横を通り過ぎた女の子を追いかけるであろう声。
後ろから元気に聞こえてくる。
──ドンっ
「いてっ」
走ってきたその子が俺の背中にぶつかってくる。
「わ!ごめんなさい!」
ぶつかったであろう鼻が赤くなっているその女の子。
「いや、大丈夫。ってか、鼻赤いよ?」
人差し指を彼女の鼻に乗せれば、たちまち赤くなる頬。
「……なっ!」
「ふは、顔も真っ赤」
初めてだった。
女に対して、こんなふうに笑ったの。
だから、興味が出た。
「ねぇ、連絡先教えてよ」
気がついたらそう言ってた。
「あんた何言ってるの!?」
母さんが驚くのも無理はない。
こんな初対面、しかも初めてきた場所でナンパみたいなことをしだすんだから。
「もっと知りたいと思ったんだよ」
「えっと……」
目の前の女の子は俺と母さんのやり取りにあたふたしてる。
「ごめん、連絡先だめ?」
「彼氏いるのでごめんなさい!」
ペコっと頭を下げて、そのまま走って校門をくぐり抜けた。
「振られてるー!」
「うるせー」
可愛いと思ったんだ。
俺の周りにはいないタイプで絶対に近づきたいって思った。
「母さん、俺この高校に入りたい」
「はい!?あんた自分の高校あるでしょ!?」
「編入させて」
俺の言葉にはぁーっとため息をつく。
「いい?あたしたちはまだ夏休みだけど、北海道はもう夏休み終わってるのよ?」
「それがどうしたよ。別に途中からでも編入できんだろ」
俺の言葉に再びため息をつく。
「こんなことして、お父さんにバレたらどうするの?」
「そのときはそのときだよ……」
「わかったわかった。校長に掛け合ってみるわ。お母さんの友達のお父さんのはずだから」
「やったー!」
一度言い出したらやめない性格をよく分かってる母さんは最終的に折れてくれた。
「でも、あの子彼氏いるって言ってたじゃない」
「手に入れられない女なんていない」
「どうしてこんな子に育ったんだろ」
今日何度目かわからないため息を零す。
「昔から、欲しい物はすべて手に入ってきた。だから必ず奪ってみせる」
「少し甘やかせすぎたのかしら」
「うるせーよ。いいから見とけよ」
俺には自信があった。
絶対に落とせる自信が。
「学校であえるといいんだけど……」
「そこは大丈夫。そんなに人数多くないし」
「なるほど」
「じゃあ、校長に会いに行ってくるからまってて」
母さんがそう言うと、校舎の中に入っていく。
母さんが校長に言ってくれたおかげで、俺は次の日から学校に通うことができた。
高校三年の夏休み。
先輩でも後輩でも同級生でも。
とりあえず誰とでも殴り合いの喧嘩して、何の努力をしてなくても女は寄ってきてた。
俺が金持ちだから。
親父が日本を代表する会社の社長である俺は、小さな頃から次期社長としての教育を受けてきた。
でも、そんなふうに大人しくしてたのは小学生まで。
親父が家を顧みなくなった頃から俺は遊び始めた。
女なんて、ただ抱ければなんでもよかった。
人間なんて殴るような価値しかなかった。
金だけはいくらでもあったから。
なんでもできた。
そんな俺に見かねた母さんが、俺を故郷につれてきたんだ。
今いる場所は、北海道の厚岸というところ。
「夏は暑すぎなくて最高でしょ?」
「あぁ。空気もめっちゃいい」
俺が唯一この世で信頼してるのは、母さんだけだった。
母さんの前だけは素直になれた。
「つーか人なんて住んでんのかよ」
「ばか、住んでるに決まってるじゃない!ほら、暁と同世代の子達じゃない?」
バスから降りてくる制服姿の女の子たちの姿。
「高校なんてあるんだな」
ちょうど、高校のまえだったようでバスからたくさんの生徒が降りてくる。
「いまはもうひとつだけだけどね。あたしもここ出身なの」
嬉しそうに校門にある学校名に触れる。
「ふーん」
あまり興味無さそうにしたけど、本当は嬉しかった。
親父が家に帰ってこなくなってからあまり笑顔を見れなくなってたから。
「ちょっとまってー!」
いま俺の横を通り過ぎた女の子を追いかけるであろう声。
後ろから元気に聞こえてくる。
──ドンっ
「いてっ」
走ってきたその子が俺の背中にぶつかってくる。
「わ!ごめんなさい!」
ぶつかったであろう鼻が赤くなっているその女の子。
「いや、大丈夫。ってか、鼻赤いよ?」
人差し指を彼女の鼻に乗せれば、たちまち赤くなる頬。
「……なっ!」
「ふは、顔も真っ赤」
初めてだった。
女に対して、こんなふうに笑ったの。
だから、興味が出た。
「ねぇ、連絡先教えてよ」
気がついたらそう言ってた。
「あんた何言ってるの!?」
母さんが驚くのも無理はない。
こんな初対面、しかも初めてきた場所でナンパみたいなことをしだすんだから。
「もっと知りたいと思ったんだよ」
「えっと……」
目の前の女の子は俺と母さんのやり取りにあたふたしてる。
「ごめん、連絡先だめ?」
「彼氏いるのでごめんなさい!」
ペコっと頭を下げて、そのまま走って校門をくぐり抜けた。
「振られてるー!」
「うるせー」
可愛いと思ったんだ。
俺の周りにはいないタイプで絶対に近づきたいって思った。
「母さん、俺この高校に入りたい」
「はい!?あんた自分の高校あるでしょ!?」
「編入させて」
俺の言葉にはぁーっとため息をつく。
「いい?あたしたちはまだ夏休みだけど、北海道はもう夏休み終わってるのよ?」
「それがどうしたよ。別に途中からでも編入できんだろ」
俺の言葉に再びため息をつく。
「こんなことして、お父さんにバレたらどうするの?」
「そのときはそのときだよ……」
「わかったわかった。校長に掛け合ってみるわ。お母さんの友達のお父さんのはずだから」
「やったー!」
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「でも、あの子彼氏いるって言ってたじゃない」
「手に入れられない女なんていない」
「どうしてこんな子に育ったんだろ」
今日何度目かわからないため息を零す。
「昔から、欲しい物はすべて手に入ってきた。だから必ず奪ってみせる」
「少し甘やかせすぎたのかしら」
「うるせーよ。いいから見とけよ」
俺には自信があった。
絶対に落とせる自信が。
「学校であえるといいんだけど……」
「そこは大丈夫。そんなに人数多くないし」
「なるほど」
「じゃあ、校長に会いに行ってくるからまってて」
母さんがそう言うと、校舎の中に入っていく。
母さんが校長に言ってくれたおかげで、俺は次の日から学校に通うことができた。
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