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第一章~悪魔との同居~

おかえりの× × × 。

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「おかえり」



仕事が終わって帰ると、ソファーに座って読んでいた雑誌を置く悪魔。



「……ただいま」



家族以外の誰かが家にいるなんて初めてのことで、なんだか照れてしまう。



「おかえりのキスでもしようか?」



なんて、いつの間にか近づいてきていて気づけば腕を掴まれていた。



「キスなんて……んっ!」



するわけないって言いたいのに、今度は言葉じゃなくて彼の唇によって遮られる。



「ちょ……っ」



トンっと彼を突き飛ばすけど、何も気にしてない風の悪魔。



「キスされて気持ちよさそうだったけどね?」


「そんなこと……っ「嬉しいっていいなよ」



相変わらず、否定なんてさせてくれないこの悪魔。

絶対に言ってやるものか。



「嬉しいっていうのは、本当に嬉しいって思ったときに……っんんっ!」



何度も同じ手には乗りたくないのに、同じ手に乗せられてしまう。



「もっと甘い声出せよな」



そんなこと言われたって、話してる途中に唇を塞ぐからわるいんじゃないか。



「ま、そんな不貞腐れた顔もかわいいけどね」



そっと唇に乗せられた指にさえもドキドキしてしまう。



「おいで」



向かいに立つ悪魔に両手を掴まれてて、ソファーのまえに連れていかれる。



「なぁ、顔赤いよ?」


「なっ……」



キスをされて普通でなんていられない。



「キス、嬉しかったんだ?」


「……わかんない」



嬉しいとか嬉しくないとか。
そんなのわからない。

ただ、わかることはこと悪魔にドキドキしたってこと。



「でも、欲しがってるだろ」


「な、なにを……」


「俺を」


「俺を!?」



オレ!?
オレをホシガル!?

ど、ど、どういう意味ですか!?それ。



「ちょ、ちょちょっと待って!」



今にもあたしをソファーに押し倒しそうな勢いの悪魔の胸を押して必死に止める。



「もしかして、初めてなの?」


「それはない」



さすがに20にもなれば、それなりの経験がある。



「ふーん、じゃあ遠慮いらないね」


「ちょっ!遠慮しなさいよ!」



あたしの言葉なんかまったくお構いなし。
そのままあたしをソファーに座らせる。



「遠慮なんて、できるかよ」


「え?」


「目の前にある欲しいものを我慢したことなんてない」


「は?」



お金もちといえば、というような発言ですかね。
そもそもあたしはものじゃない。
あ、欲しいものってあたしの体……だけでしょ。



「俺たちカレカノだからね」


「は?」


「一つ屋根の下にいてやることなんて一つでしょ」



そのまま、悪魔の手によってあっという間に押し倒されてる。



「慣れすぎ……」



こうしていろんな女の子を弄んできたんだろう。



「黙ってよ。そして俺で頭ん中いっぱいにしてよ」


「んっ!」



あたしの上に覆いかぶさった、悪魔の顔が少し赤く染まっていたのは気のせいだろうか。



「やっ、んっ」


「やっ、とか言ってさ……全然嫌じゃないくせに」



あたしに唇を落としながら、短調にそんなことを言う。



「やめるつもりなんてないからね」


「え?あ、うん……」



こんなとこでやめてもらえるほど、甘くはないってことくらいわかってる。

嫌なのに。
イヤなはずなのに嫌じゃない。

悪魔の動きに合わせて翻弄される自分が嫌なのに。
嫌でそして恥ずかしいのに。

でも、とくんとくんと胸は高なっていて。



「これだけじゃないよ、お前を飼うって言ったのもカノジョになれって言ったのも」



身体中にキスを刻みながら、悪魔はつぶやく。



「んっ……え?」



甘い声が漏れてしまうのを抑えながら、聞き返すけどどうしても声が漏れてしまうのが恥ずかしい。



「お前はもう俺のもんってこと」


「あっ、んっ……」



その言葉を最後に悪魔があたしに溶け込んで、旋律を描く。


……好きな子、いるくせに。

ラーメン屋での話を思い出して、胸がちくんとなったけど、それがなんなのかは分からなかった。


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