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風邪

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ルームシェアを始めて1ヶ月が経とうとしていた。

「ねぇ、ゴールデンウィークどうする?帰る?」
「バイトあるし、帰れても2日とかだよな。」
「休み合わなかったら厳しいよね~」
「でも、実家に帰って2時間かけてバイトの為にこっちに来るのは正直ダルいよな。」
「うん、それは嫌だよ…」
「でも、帰らないと母さん達の、めんどくせぇ妄想始まるぞ?」
「妄想??」
「母さん達のキャラ考えてみろよ。どうせ、あら?帰ってこないの?そんなに2人でいたいのね!なんて、言うぞ?絶対」
「あっ、うん。言いそうってより、絶対言うね。」
「だろ?まぁ、近くなったら考えるか。」
「うん。ねぇ、もう1回モノマネやって?」

俺は母さんと真夜母のモノマネをすると、真夜は涙目で笑っていた。

「言い方は似てるだろ!」
「めっちゃ似てる!でも、裕翔がそんなモノマネすると思わなくて、余計にツボにはいったわ…………クシュン!」

真夜がクシャミをした。
そういえば、さっきから鼻もすすってるような…

「もしかして、真夜風邪か?」
「わかんないけど、鼻水が止まらないの…」

真夜の体調もわるそうだし、少し早いけど、寝る事にした。
布団の中で真夜を軽くだき抱えると、直ぐに布団の中は暖かくなった。

夜中に目が覚めると、真夜が唸っている。
リビングから体温計を持ってきて、パジャマの上のボタンを外して、寝たまま体温計を真夜の脇に入れた。
インナーを着ているから、もちろん。何も見えていない。


ピピピッ

体温計を取り出すと、38℃を超えていた。
確実に風邪だな。

俺は上着を着て、近くのコンビニまでおでこを冷やすシートを買ってきて、真夜のおでこに貼った。
念の為、渡されていた水枕も作って。


朝起きると、真夜はまだ寝ていた。
というより、顔が赤い。

体温計を入れると、38.5℃
熱が上がっていた。

病院に連れていくにしても、何か食べさせないといけない。
処方された薬を飲む時に空腹ではダメだろう。


お粥…
お粥……
どうやって作るんだ?

スマホでレシピを探して、とりあえず作ってみよう。

炊飯器の中にはまだ、白米が残っていて、助かる。
レシピに書いてある通り作成してみた。
病人に食べさせるのに、冒険してはダメだ。

俺の部屋のドアが開いて、真夜が起きてきた。

「ん…裕翔?何してるの?」
「真夜が具合悪そうだから、お粥つくってるよ。もう少しで出来るけど。ここで食べる?部屋に持っていく?」
「ここで大丈夫。」
「じゃあ、出来るまでソファで横になってて。」
「うん、そうする。」

生姜は風邪に良さそうだから、バイトで得た包丁スキルを発揮して細かく切っていく。
スキルのおかげで、包丁の使い方を理解したから指を切らずに出来た。
梅干しも種を取って、別皿に盛り付けておこう。

試行錯誤して、なんとか完成。
リビングのテーブルへと運んだ。

「出来たぞ?真夜、起きれるか?」
「うん…」

真夜は少し怠そうに身体を起こした。
そうとう具合が悪いのだろう。背もたれに身を預けるように座った。

プラスチックのスプーンでお粥を掬って、真夜の口に運んだ。
「ん…ごめんね」

真夜は謝ってから、ゆっくり口に含んで咀嚼した。
「おいしい…」
茶碗半分くらいまで、食べると飲み込むまでのスピードが落ちてきている。

「お腹いっぱいか?」
「うん…でも食べる…」
「無理すんな」
「せっかく、作ってくれたのに…」
「また、いつでも作れるから。お腹空いたらまた、食べたらいいし。」
「うん…」
「病院に連れていくから、着替えるか?」
「うん…」

抱っこして、脱衣場の洗面台まで連れて行って歯磨きをさせた。

真夜はカラーボックスから下着を取り出して、抱っこして真夜の部屋に連れて行った。
開けっ放しのカーテンを閉めて。
クローゼットから、言われた通りのパーカーとジーンズを取り出して渡した。

「着替えたら呼んでくれな。」
「うん…」

5分くらい経過して、真夜から声が掛かった。

着替えた真夜は、胸まで伸びた亜麻色の髪の毛はポニーテールにしている。

病院へ向かう為にタクシーを呼んで、真夜を背負ってマンションのエントランスに向かった。

「今日は、バイト休みだよな?」
「うん…明日もダメそうだから。後で連絡する。」
「裕翔、学校は?」
「今日は午後からの講義だし、それに行かなくても大丈夫だ」
「ダメだよ…私は大丈夫だから。」
「とりあえず、病院に行ってからな。」
「ごめんね…」

病院では、普通の風邪と診断
でも慣れない環境で疲れが溜まったのではないか?と言われた。

無理させちゃってたのかな?
料理と洗濯も真夜が結局やっている。
家での負担は明らかに真夜の方が高い。

せめて、掃除はしっかりやらないとな。

家に帰ってから、処方された薬を飲ませた。
真夜の部屋に連れていき、パジャマのズボンと新しいシャツとトレーナーをクローゼットから取り出して渡した。
「水枕作るから、着替えててくれ。」
「うん…」

水枕とおでこに貼るシートを用意した。
「着替えたか?」
「大丈夫…」

部屋に入ると、布団に座って髪の毛を解いていた。
水枕をセットして、真夜のおでこにシートを貼って寝かせた。
タオルケットと布団を掛けて、お気に入りのクマのぬいぐるみを横に寝かせると、真夜はクスッと笑った。

夜に着ていたパジャマと病院に着ていったシャツと下着が布団の横にあった。

「これ、洗濯していいか?」
「うん…」

真夜の下着を俺が洗うことに抵抗はあったけど、真夜は俺ほど気にしていない様子だ。
負担を減らす為にも慣れないといけない。

「リビングにいるから、何かあったら呼んでくれな?」
「ありがとう」


そして、俺は洗濯をする事に。
下着を見ないように洗濯カゴの中身を一気に洗濯機に入れた。

洗濯機の横にあるネットが目に入った。
下着ってこれに入れるんだったか?

結局、見ないようにした事が仇となり、洗濯機の中を漁ることになった。中から発掘されたのは、ピンクの下着と水色の下着だった。

洗濯ひとつでも、分からない事があって。
学ばないといけないことが、沢山あることに気が付いた。

そして、普段それらをやってくれている真夜に更に感謝した。
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