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魔花鉱石
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「マルスちゃん! 起きなさい!! 魔花鉱石取りに行くわよ! ピンクよ! ピンク!!」
うぅ。そんな起こし方あるかよ……。
ローズの声で目を覚ますと、テトが俺の腹の上で寝ていた。少々重い。何だか頭がボーッとする。よく眠れなかったかようだ。
テトをどかして木レンガの小屋から出ると、ローズは早くもリュックを背負って準備万端だ。そんなに楽しみなのか……。
「あらっ……? マルスちゃん、ちょっと顔色が悪いわね? 何かあったのかしら?」
「なんかよく眠れなくて」
「私もよ! ワクワクして何度も起きちゃったわ!!」
いや、俺はそーいうわけではないのだが……。なんだろう。身体に違和感がある。
「準備するのでちょっと待ってください。アヒムさんやゴルジェイさんはもう揃っているんですか?」
「まだよ! 起こしてくるわね!」
パタパタと走っていくローズの後姿を見ながら、俺は違和感の正体を突き止めようと全身の神経を研ぎ澄ます。そしてハッと気が付いた。この感覚……。これはジョブのレベルアップの時に感じるものだ。
ただ、前回の時よりもかなり症状がはっきりしている。ジョブのレベルアップに身体が追い付いていっていないのかもしれない。まぁ、ちょっと経てば収まるだろう。それよりも──。
脳裏に浮かぶ新しいスキルの名前。
「これは、どうやって使うんだ……?」
「ミャオ?」
小屋の中から出てきたテトが俺の声に首を傾げている。
「どうやらジョブのレベルが上がったみたいなんだ」
「ミャオ!」
テトは喜んでくれているけど、このスキル、どうしよう……。
#
「最初に見つけたのはこの川の上流でした。流れのないワンドのところで見つけたんです」
俺達は開拓村の近くを流れる川の上流を目指していた。アヒムによると、魔花鉱石は川の支流の一つを登ったところで採れるらしい。
「よくそんなところまで探しに行きましたね」
「ウチの村には何人か冒険者上がりの奴がいるんですよ。そいつ等と一緒に探しました。少しでも金を作る必要があるので……」
開拓民の暮らしはなかなか厳しいようだ。魔の森の土地は肥沃らしいが、農作物は直ぐには出来ない。開拓民達は川での漁や森での狩をしながら、開墾をしているのだ。
「その貪欲な姿勢がローズちゃんの元にピンク色の素敵な石をもたらしたのね……! 素晴らしいわ……!!」
「ローズ。森の中ではしゃぐな。で、アヒム。魔花鉱石の採掘場所は危険ではないのか?」
ゴルジェイは浮かれるローズと違って慎重だ。
「私達は装飾品用の小さな魔花鉱石を支流で拾ってくるだけなんでそんなに危険ではないですよ。ただ鉱床はもっと奥にある筈です。そこまでは私達も行っていないので……」
「つまり、要注意ということだな」
気を引き締める必要がありそうだ。
#
「ピ! ン! ク!!」
そう叫びながらローズが支流にザバザバ入って行き、魔花鉱石を拾い上げた。コイツ……全く気を引き締めてない……!!
「マルスちゃん見て! こんな鮮やかなピンク、初めて見たわ!!」
自分で採取した補正で、とても良いものに見えているようだ。
「私達が魔花鉱石を採取しているのはこの辺です」
見ると川底にちらほらピンク色が見える。しかし、ローズの家をピンク色のレンガで覆うには全然足りそうにない。
「更に上流に行けば魔花鉱石の鉱床がありそうですね」
「だな。この程度じゃナイフ一本作れそうにないし、覚悟を決めて探しにいくか」
ゴルジェイが腰につけたハンマーを手に取った。いつでも戦えるように。
「大丈夫よ! 爆炎魔術師のローズちゃんがついているんですもの!!」
「ミャオ~」
ローズとテトがアピールする。確かにこの二者は強力だ。大抵のことは何とかなる気がする。
「よし。進みましょう」
俺の声を合図に、一同は更に奥を目指し始めた。
うぅ。そんな起こし方あるかよ……。
ローズの声で目を覚ますと、テトが俺の腹の上で寝ていた。少々重い。何だか頭がボーッとする。よく眠れなかったかようだ。
テトをどかして木レンガの小屋から出ると、ローズは早くもリュックを背負って準備万端だ。そんなに楽しみなのか……。
「あらっ……? マルスちゃん、ちょっと顔色が悪いわね? 何かあったのかしら?」
「なんかよく眠れなくて」
「私もよ! ワクワクして何度も起きちゃったわ!!」
いや、俺はそーいうわけではないのだが……。なんだろう。身体に違和感がある。
「準備するのでちょっと待ってください。アヒムさんやゴルジェイさんはもう揃っているんですか?」
「まだよ! 起こしてくるわね!」
パタパタと走っていくローズの後姿を見ながら、俺は違和感の正体を突き止めようと全身の神経を研ぎ澄ます。そしてハッと気が付いた。この感覚……。これはジョブのレベルアップの時に感じるものだ。
ただ、前回の時よりもかなり症状がはっきりしている。ジョブのレベルアップに身体が追い付いていっていないのかもしれない。まぁ、ちょっと経てば収まるだろう。それよりも──。
脳裏に浮かぶ新しいスキルの名前。
「これは、どうやって使うんだ……?」
「ミャオ?」
小屋の中から出てきたテトが俺の声に首を傾げている。
「どうやらジョブのレベルが上がったみたいなんだ」
「ミャオ!」
テトは喜んでくれているけど、このスキル、どうしよう……。
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俺達は開拓村の近くを流れる川の上流を目指していた。アヒムによると、魔花鉱石は川の支流の一つを登ったところで採れるらしい。
「よくそんなところまで探しに行きましたね」
「ウチの村には何人か冒険者上がりの奴がいるんですよ。そいつ等と一緒に探しました。少しでも金を作る必要があるので……」
開拓民の暮らしはなかなか厳しいようだ。魔の森の土地は肥沃らしいが、農作物は直ぐには出来ない。開拓民達は川での漁や森での狩をしながら、開墾をしているのだ。
「その貪欲な姿勢がローズちゃんの元にピンク色の素敵な石をもたらしたのね……! 素晴らしいわ……!!」
「ローズ。森の中ではしゃぐな。で、アヒム。魔花鉱石の採掘場所は危険ではないのか?」
ゴルジェイは浮かれるローズと違って慎重だ。
「私達は装飾品用の小さな魔花鉱石を支流で拾ってくるだけなんでそんなに危険ではないですよ。ただ鉱床はもっと奥にある筈です。そこまでは私達も行っていないので……」
「つまり、要注意ということだな」
気を引き締める必要がありそうだ。
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「ピ! ン! ク!!」
そう叫びながらローズが支流にザバザバ入って行き、魔花鉱石を拾い上げた。コイツ……全く気を引き締めてない……!!
「マルスちゃん見て! こんな鮮やかなピンク、初めて見たわ!!」
自分で採取した補正で、とても良いものに見えているようだ。
「私達が魔花鉱石を採取しているのはこの辺です」
見ると川底にちらほらピンク色が見える。しかし、ローズの家をピンク色のレンガで覆うには全然足りそうにない。
「更に上流に行けば魔花鉱石の鉱床がありそうですね」
「だな。この程度じゃナイフ一本作れそうにないし、覚悟を決めて探しにいくか」
ゴルジェイが腰につけたハンマーを手に取った。いつでも戦えるように。
「大丈夫よ! 爆炎魔術師のローズちゃんがついているんですもの!!」
「ミャオ~」
ローズとテトがアピールする。確かにこの二者は強力だ。大抵のことは何とかなる気がする。
「よし。進みましょう」
俺の声を合図に、一同は更に奥を目指し始めた。
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