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「ローズさん。今日の昼にはこの拠点にコボルト達がやってきます。これまでの我々の攻撃で、普通のコボルトは五百体以上減らしてはいるが──」
「うんうん!」
早朝の作戦本部の会議卓。ボーワダッテ……がローズに現在の状況について説明している。
「まだ五百体以上のハイコボルト、そしてコボルトキングが残っています」
「ローズちゃんの担当はコボルトキングってことでいい?」
「そうですね。トドメはローズさんにお願いしたいと思っています」
「了解! 早くコボルト来ないかなぁ~」
なんでローズはこんなに楽しそうなんだ? ボーワダッテ……や他の冒険者も困惑したような表情だ。
「コボルトキングが生き残れば、また何処かでコボルトの大発生が起きます。コボルトキングだけは必ず倒さなければなりません」
「ローズちゃんの爆炎魔術でイチコロよ!」
「そう願います」
しかし、コボルトキングとはどのような魔物なのか? コボルトキングが発生することによって、周囲のコボルトの成長や進化が爆発的に進むことは分かっている。だが、コボルトキング自体の情報は少ない。
「ミャオ?」
膝の上にいたテトが俺の顔を見上げている。
「テトも手伝ってね」
「ミャオオ~」
「テトちゃん? コボルトキングの首はローズちゃんの獲物だからね!? 譲らないわよ……!?」
「シャー!!」
テトがテーブルの上に躍り出て、ローズを威嚇する。
「こら、テト。仲良くしろよ」
こんな気楽な雰囲気でいられるのも、もう少しだ。決戦の時は近い……。
#
『見えました! ハイコボルトの集団です!!』
偵察に出ていた風魔術師の声がマルス領全体に響いた。その瞬間、冒険者達が一斉にテントから出て作戦本部を取り囲むように集まった。
「総員! 位置に!!」
ボーワダッテ……の指示で冒険者達が一斉に散らばり、城壁へと向かっていく。
「ローズさんは物見塔へ」
「了解よ!!」
ローズや、他の魔術系のジョブを持つものは物見塔から遠方のコボルトキングを狙うことになっている。
冒険者達がいなくなり、作戦本部の周りは急に静かになった。
「後は、我々に任せてくれたまえ」
いつになく真剣な顔のボーワダッテ……。
「そうですね。僕は戦闘系のジョブではないので、大人しくしています」
「ミャオ」
テトが鳴いてから物見塔の方へ駆けていく。ローズからコボルトキングの首を奪うつもりだろうか?
「待ってよ、テト。俺も行くから」
ローズとテトだけにしたらコボルトそっちのけで喧嘩を始めかねない。せっかくここまで準備したんだ。台無しにしたくない。
「物見塔までコボルトが来ることはないと思いますけど、気を付けてくださいね?」
「大丈夫ですよ。自分の身ぐらい、自分で守ります」
ザックから受け取ったまま腰にある短剣を軽く叩く。
「やっぱり、マルス君は剣を扱えるのですね?」
「握ったことがある程度ですよ」
そう。まだ侯爵家の人間だった頃は毎日剣を握っていた。物心ついた時からずっと。それが今ではレンガ職人。人生とは不思議なものだ。
「マルス君、勝ちましょう」
「ええ」
作戦本部に残るボーワダッテ……に勝利を誓い、俺は物見塔へ登り始めた。
「うんうん!」
早朝の作戦本部の会議卓。ボーワダッテ……がローズに現在の状況について説明している。
「まだ五百体以上のハイコボルト、そしてコボルトキングが残っています」
「ローズちゃんの担当はコボルトキングってことでいい?」
「そうですね。トドメはローズさんにお願いしたいと思っています」
「了解! 早くコボルト来ないかなぁ~」
なんでローズはこんなに楽しそうなんだ? ボーワダッテ……や他の冒険者も困惑したような表情だ。
「コボルトキングが生き残れば、また何処かでコボルトの大発生が起きます。コボルトキングだけは必ず倒さなければなりません」
「ローズちゃんの爆炎魔術でイチコロよ!」
「そう願います」
しかし、コボルトキングとはどのような魔物なのか? コボルトキングが発生することによって、周囲のコボルトの成長や進化が爆発的に進むことは分かっている。だが、コボルトキング自体の情報は少ない。
「ミャオ?」
膝の上にいたテトが俺の顔を見上げている。
「テトも手伝ってね」
「ミャオオ~」
「テトちゃん? コボルトキングの首はローズちゃんの獲物だからね!? 譲らないわよ……!?」
「シャー!!」
テトがテーブルの上に躍り出て、ローズを威嚇する。
「こら、テト。仲良くしろよ」
こんな気楽な雰囲気でいられるのも、もう少しだ。決戦の時は近い……。
#
『見えました! ハイコボルトの集団です!!』
偵察に出ていた風魔術師の声がマルス領全体に響いた。その瞬間、冒険者達が一斉にテントから出て作戦本部を取り囲むように集まった。
「総員! 位置に!!」
ボーワダッテ……の指示で冒険者達が一斉に散らばり、城壁へと向かっていく。
「ローズさんは物見塔へ」
「了解よ!!」
ローズや、他の魔術系のジョブを持つものは物見塔から遠方のコボルトキングを狙うことになっている。
冒険者達がいなくなり、作戦本部の周りは急に静かになった。
「後は、我々に任せてくれたまえ」
いつになく真剣な顔のボーワダッテ……。
「そうですね。僕は戦闘系のジョブではないので、大人しくしています」
「ミャオ」
テトが鳴いてから物見塔の方へ駆けていく。ローズからコボルトキングの首を奪うつもりだろうか?
「待ってよ、テト。俺も行くから」
ローズとテトだけにしたらコボルトそっちのけで喧嘩を始めかねない。せっかくここまで準備したんだ。台無しにしたくない。
「物見塔までコボルトが来ることはないと思いますけど、気を付けてくださいね?」
「大丈夫ですよ。自分の身ぐらい、自分で守ります」
ザックから受け取ったまま腰にある短剣を軽く叩く。
「やっぱり、マルス君は剣を扱えるのですね?」
「握ったことがある程度ですよ」
そう。まだ侯爵家の人間だった頃は毎日剣を握っていた。物心ついた時からずっと。それが今ではレンガ職人。人生とは不思議なものだ。
「マルス君、勝ちましょう」
「ええ」
作戦本部に残るボーワダッテ……に勝利を誓い、俺は物見塔へ登り始めた。
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