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ダンジョン攻略②
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「グルァァァァァァ!!」
双頭の巨大な犬──オルトロス──の吐いた焔がパトリシアに迫る。このままでは直撃をさけられない。
「させない」
パトリシアの前にワッと霧が広がり、凶悪な焔をこともなさげに霧散させた。ヨハンの魔法だ。
オルトロスは合計四つの紅い目をぱちくりとさせて驚いている。チャンス──。
「破ッ! 滅ッ!!」
一足で自分の間合いにしたパトリシアは一拍の間に二度、闘気を纏わせた短剣を振るった。ヨハンに見えたのは青白く輝く、二筋の線のみ。
パトリシアが短剣をしならせて、汚れを払う。
──ズルリ。ズルリ。一つ、また一つ。オルトロスの頭は胴体からずり落ち、煙となる。そして最後に体が朽ちて煙になると、ボス部屋が大きく揺れた。
「何が起きるの?」
「ボスを倒したから、道が開けるんだよ」
「次のフロアに行けるってこと?」
「たぶんそうだよ」
ボス部屋の壁の一部が崩れ落ち、通路が現れる。パトリシアは慎重に中の様子を窺う。このまま進んで大丈夫だろうか? 罠でもあるのではないか? ここまで順調だったことがかえって彼女を不安にさせた。
振り返るとすぐ後ろにヨハンがいた。「どうしたの?」と眉を動かす。ヨハンがいるから大丈夫。何かあっても守ってくれる。そう思い直し、パトリシアは通路へと踏み出した。
通路の奥は岩で出来たドーム状の部屋だった。真ん中には数字の「二」と書かれた石柱がある。そして入ってきた通路の逆側には扉があった。
「パトリシア。疲れたでしょ? 今日はここまでにしよう」
パトリシアはヨハンの言葉に不満を覚えた。マッチングダンジョンの外に出ればヨハンと離れてしまう。もっと一緒にいたい。そんな思いで胸がいっぱいになる。
「ふふふ。大丈夫だよ。そこの石柱に二人で触れれば、出会いの神様に覚えてもらえるらしいから。なんて言ったかな? えーとそう、"セーブポイント"だ。また七日後、一緒にダンジョンを攻略しよう」
そういえば、法衣の女にそんな説明を聞いた気がする。「マッチング!」や「チェンジ!」にばかり気を取られていたけど……。
「ほら、パトリシア。手を」
ヨハンがスッとパトリシアの手を取る。そして二人で石柱に触れると、部屋に鐘の音が響いた。祝福されたような気分になる。
「じゃぁ、パトリシア。七日後にまた会おう」
「うん。私は朝から待ってるから」
「僕も朝から来るよ」
次のダンジョン攻略の約束をし、二人は同時に「リタイア」をしてダンジョンの外に出た。
外はもう暗い。しかし、パトリシアの表情は明るく晴れやかだ。
どうやって察したのか? 神殿の中から法衣の女が出てきてパトリシアに話し掛ける。
「どうやら、上手くいったようですね」
「はい! 素敵な方とマッチングして、ダンジョン攻略に進めました。"二"と書かれた石柱のところまで行きました」
「それは素晴らしい。では、次回からは"続きの間"に案内しますね。そこから転移すると、今日の続きからダンジョン攻略を再開出来ますから」
では、七日後。そう言って法衣の女は神殿の中に戻っていった。
次のダンジョン攻略が待ち遠しい。ヨハンは時を進める魔法を使えないのかしら? そうすればすぐにでも会えるのに。
驚くほど軽い足取りで、パトリシアは屋敷へと帰るのだった。
双頭の巨大な犬──オルトロス──の吐いた焔がパトリシアに迫る。このままでは直撃をさけられない。
「させない」
パトリシアの前にワッと霧が広がり、凶悪な焔をこともなさげに霧散させた。ヨハンの魔法だ。
オルトロスは合計四つの紅い目をぱちくりとさせて驚いている。チャンス──。
「破ッ! 滅ッ!!」
一足で自分の間合いにしたパトリシアは一拍の間に二度、闘気を纏わせた短剣を振るった。ヨハンに見えたのは青白く輝く、二筋の線のみ。
パトリシアが短剣をしならせて、汚れを払う。
──ズルリ。ズルリ。一つ、また一つ。オルトロスの頭は胴体からずり落ち、煙となる。そして最後に体が朽ちて煙になると、ボス部屋が大きく揺れた。
「何が起きるの?」
「ボスを倒したから、道が開けるんだよ」
「次のフロアに行けるってこと?」
「たぶんそうだよ」
ボス部屋の壁の一部が崩れ落ち、通路が現れる。パトリシアは慎重に中の様子を窺う。このまま進んで大丈夫だろうか? 罠でもあるのではないか? ここまで順調だったことがかえって彼女を不安にさせた。
振り返るとすぐ後ろにヨハンがいた。「どうしたの?」と眉を動かす。ヨハンがいるから大丈夫。何かあっても守ってくれる。そう思い直し、パトリシアは通路へと踏み出した。
通路の奥は岩で出来たドーム状の部屋だった。真ん中には数字の「二」と書かれた石柱がある。そして入ってきた通路の逆側には扉があった。
「パトリシア。疲れたでしょ? 今日はここまでにしよう」
パトリシアはヨハンの言葉に不満を覚えた。マッチングダンジョンの外に出ればヨハンと離れてしまう。もっと一緒にいたい。そんな思いで胸がいっぱいになる。
「ふふふ。大丈夫だよ。そこの石柱に二人で触れれば、出会いの神様に覚えてもらえるらしいから。なんて言ったかな? えーとそう、"セーブポイント"だ。また七日後、一緒にダンジョンを攻略しよう」
そういえば、法衣の女にそんな説明を聞いた気がする。「マッチング!」や「チェンジ!」にばかり気を取られていたけど……。
「ほら、パトリシア。手を」
ヨハンがスッとパトリシアの手を取る。そして二人で石柱に触れると、部屋に鐘の音が響いた。祝福されたような気分になる。
「じゃぁ、パトリシア。七日後にまた会おう」
「うん。私は朝から待ってるから」
「僕も朝から来るよ」
次のダンジョン攻略の約束をし、二人は同時に「リタイア」をしてダンジョンの外に出た。
外はもう暗い。しかし、パトリシアの表情は明るく晴れやかだ。
どうやって察したのか? 神殿の中から法衣の女が出てきてパトリシアに話し掛ける。
「どうやら、上手くいったようですね」
「はい! 素敵な方とマッチングして、ダンジョン攻略に進めました。"二"と書かれた石柱のところまで行きました」
「それは素晴らしい。では、次回からは"続きの間"に案内しますね。そこから転移すると、今日の続きからダンジョン攻略を再開出来ますから」
では、七日後。そう言って法衣の女は神殿の中に戻っていった。
次のダンジョン攻略が待ち遠しい。ヨハンは時を進める魔法を使えないのかしら? そうすればすぐにでも会えるのに。
驚くほど軽い足取りで、パトリシアは屋敷へと帰るのだった。
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