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7話 ご褒美
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さて、オナホが目の前にある。使い切りタイプの高級品だ。僕がこれを使うのは月一回の給料日だけだった。一ヶ月よく頑張りました。という自分へのご褒美だったのだ。
一度ベッドから立ち上がり、部屋の鍵をチェック。大丈夫。しっかり閉まっている。誰も入って来られない。安全で安心。
「ふぅ」
何故か緊張した。この世界では最初で最後のオナホかもしれない。じっくり堪能しないと。
慎重に包みを外し、開封の儀を執り行う。自分の鼻息が荒くなっているのを感じた。
そういえばオナホばかりに気を取られてネタを考えていなかった。どうしよう。
一度オナホをテーブルに置き、一呼吸。
この国の人々は大体白人で、僕の好みからは外れていた。やはり日本人がいい。
日本人で一番最初に思い浮かぶのは三田さんだが……。いや、駄目だ! 次会った時に変に意識してしまいそうだ。
しかし、脳裏に浮かぶのは三田さんの顔ばかり。
──カタカタカタッ!
急にオナホが震えだした。
おかしい。このオナホには振動機能なんて無いはずだ。まさか、中に何かが入っている? 未開封だったのに……。
恐る恐るオナホを手に取り、顔から遠ざけながら挿入口を見る。特に何もない。徐々に近づけ、奥の奥まで覗き込む。
「あれっ?」
オナホの向こう側で黒い何かが蠢いていた。これはこの世界に転移した時、空で見たものと同じ。
オナホが僕に近づいてくる。物凄い力だ。抗えない。
やばい……。吸い込まれる……。
僕が覚えているのは、必死にリュックに手を伸ばしたところまでだった。
#
蛍の光が聞こえる。なんだか懐かしい。
ぼやけていた視界が徐々にしっかりしてきた。そして俄かに焦点がピタリと合う。
目の前にはオナホが山となっていた。
「ここは……」
眼球をぐるりと回し、周囲を窺う。ここはアダルトショップ「フライングダッチワイフ」だ。間違いない。
僕は戻ってきたのか? 地球に。
最初の集落で出会った老人の言葉を思い出す。
『異世界転移のキーアイテムは人それぞれじゃ』
僕にとってのキーアイテムは目の前にある使い切りタイプの高級オナホだったのかもしれない。
オナホの山から、いつも買っていたのより更に上のグレードのモノに手を伸ばした。同じモノを買って、また異世界転移したら嫌だからね。
身体の向きを九十度変え、下を向きながら直進。レジカウンターに商品を置いた。
「1555円です」
女の子の声だ。
ふっと顔を上げると美少女と目が合った。艶のある黒髪ボブに悪戯っぽいアーモンドアイ。三田さんだ。
一瞬固まってしまった。
三田さんは不思議そうな顔をしている。もしかして、異世界での記憶は全て夢だったのかもしれない。
そういえば、給料日前は徹夜続きだった。電車で立ったまま寝落ちしたことは何度もある。アダルトショップで同じことになってもおかしくない。
身体は動きだす。
リュックから財布を取り出し、二千円を払ってお釣りをもらった。そして受け取ったオナホをリュックへ──。
やはり夢じゃない。
僕はリュックからあるモノを取り出し、レジカウンターに並べた。それはりんごによく似た赤い果実。
「あの、もしよかったら食べてください」
すこし声が震えてしまった。恥ずかしい。
「……森宮さん。ありがとうございます!」
「やっぱり、夢じゃなかったんですね!」
「そうみたいです! 森宮さん、私の顔を見ても何も言わないからびっくりしちゃいましたよ!!」
「だって! 僕も夢かと思ってたんです! あっちの世界のことを!」
やがて蛍の光すら終わり、店内は静かになる。
そんな中、僕と三田さんは異世界で起こった馬鹿げた出来事について朝まで語り合うのだった。りんごに似た、赤い果実をかじりながら。
ちなみに、三田さんとの関係はその後も続いている。シンプルに言うと、お付き合いしている。
やはり共通の秘密を持つというのは強いらしい。今のところ、大人のおもちゃについては禁止されているが、現状はとても満足です。
一度ベッドから立ち上がり、部屋の鍵をチェック。大丈夫。しっかり閉まっている。誰も入って来られない。安全で安心。
「ふぅ」
何故か緊張した。この世界では最初で最後のオナホかもしれない。じっくり堪能しないと。
慎重に包みを外し、開封の儀を執り行う。自分の鼻息が荒くなっているのを感じた。
そういえばオナホばかりに気を取られてネタを考えていなかった。どうしよう。
一度オナホをテーブルに置き、一呼吸。
この国の人々は大体白人で、僕の好みからは外れていた。やはり日本人がいい。
日本人で一番最初に思い浮かぶのは三田さんだが……。いや、駄目だ! 次会った時に変に意識してしまいそうだ。
しかし、脳裏に浮かぶのは三田さんの顔ばかり。
──カタカタカタッ!
急にオナホが震えだした。
おかしい。このオナホには振動機能なんて無いはずだ。まさか、中に何かが入っている? 未開封だったのに……。
恐る恐るオナホを手に取り、顔から遠ざけながら挿入口を見る。特に何もない。徐々に近づけ、奥の奥まで覗き込む。
「あれっ?」
オナホの向こう側で黒い何かが蠢いていた。これはこの世界に転移した時、空で見たものと同じ。
オナホが僕に近づいてくる。物凄い力だ。抗えない。
やばい……。吸い込まれる……。
僕が覚えているのは、必死にリュックに手を伸ばしたところまでだった。
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蛍の光が聞こえる。なんだか懐かしい。
ぼやけていた視界が徐々にしっかりしてきた。そして俄かに焦点がピタリと合う。
目の前にはオナホが山となっていた。
「ここは……」
眼球をぐるりと回し、周囲を窺う。ここはアダルトショップ「フライングダッチワイフ」だ。間違いない。
僕は戻ってきたのか? 地球に。
最初の集落で出会った老人の言葉を思い出す。
『異世界転移のキーアイテムは人それぞれじゃ』
僕にとってのキーアイテムは目の前にある使い切りタイプの高級オナホだったのかもしれない。
オナホの山から、いつも買っていたのより更に上のグレードのモノに手を伸ばした。同じモノを買って、また異世界転移したら嫌だからね。
身体の向きを九十度変え、下を向きながら直進。レジカウンターに商品を置いた。
「1555円です」
女の子の声だ。
ふっと顔を上げると美少女と目が合った。艶のある黒髪ボブに悪戯っぽいアーモンドアイ。三田さんだ。
一瞬固まってしまった。
三田さんは不思議そうな顔をしている。もしかして、異世界での記憶は全て夢だったのかもしれない。
そういえば、給料日前は徹夜続きだった。電車で立ったまま寝落ちしたことは何度もある。アダルトショップで同じことになってもおかしくない。
身体は動きだす。
リュックから財布を取り出し、二千円を払ってお釣りをもらった。そして受け取ったオナホをリュックへ──。
やはり夢じゃない。
僕はリュックからあるモノを取り出し、レジカウンターに並べた。それはりんごによく似た赤い果実。
「あの、もしよかったら食べてください」
すこし声が震えてしまった。恥ずかしい。
「……森宮さん。ありがとうございます!」
「やっぱり、夢じゃなかったんですね!」
「そうみたいです! 森宮さん、私の顔を見ても何も言わないからびっくりしちゃいましたよ!!」
「だって! 僕も夢かと思ってたんです! あっちの世界のことを!」
やがて蛍の光すら終わり、店内は静かになる。
そんな中、僕と三田さんは異世界で起こった馬鹿げた出来事について朝まで語り合うのだった。りんごに似た、赤い果実をかじりながら。
ちなみに、三田さんとの関係はその後も続いている。シンプルに言うと、お付き合いしている。
やはり共通の秘密を持つというのは強いらしい。今のところ、大人のおもちゃについては禁止されているが、現状はとても満足です。
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