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38話 余った金
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コメント欄に母親が降臨──辰子事変により、俺の貯金残高は大きく減った。リフォーム費用として母親に渡したからである。
とはいえ、まだ一千万ちょっとのお金が浮いているのは事実。これを使わずに寝かせておくことは出来ない。配信者たるもの、守りに入っては駄目なのだ。
とにかく景気良く使う。それは確定だった。
では何に使うのか……? 視聴者に聞くとまた母親が出てきておねだりされる恐れがある。
そこで三人で話し合った。結果……。
「本日はガチャオーブを買いに行きたいと思います!!」
『ガチャオーブかっ……!! あち~』
『ほとんどの場合、カススキルしか手に入らないけど!!』
『呪いのスキル引いちゃうんやろなぁ~』
『どこのダンジョン野郎に買いに行くの?』
「新宿のダンジョン野郎でガチャオーブを買って、そのまま新宿ダンジョンで使います!!」
『やっぱり死ぬ死ぬマンは攻めるよね!』
『どんなカススキルを引くか楽しみ~』
『カススキルに一千万使うのかぁ~』
『うほ~たまんねぇ~』
「まだカススキルを引くって決まってないでしょ! レアスキル引くかもしれないじゃん!!」
「ウゥ……」
グミが慰めるように、俺の肩に手を置く。まだ何もしてないのに……!
「とにかく、今から新宿のダンジョン野郎に行きます! さぁ、出発!!」
二人を連れ、部屋を出た。
#
『ダンジョン野郎』新宿店は探索者に必要なものが全て揃う大型店舗だ。武器や防具、その他アイテムが五階建ての店舗の中に所狭しと並べられている。
「師匠! 店内の配信オッケーだそうです!」
「よし! 五階に直行だ!!」
ガラス戸を押して店内に入り、エレベーターで五階へ。
そこに他のフロアのような雑然とした雰囲気はない。
分厚いガラスケースの中に整然と輝く球体が並べられていた。
「さて! スキルオーブのフロアに来ました! ウッヒョ~高え~!! 【初級水魔法】のオーブが五千万しますよ!」
「ウゥ……」
「高い……」
魔法系のスキルオーブは人気なので初級でも五千万円は下らない。その他のスキルオーブだって最低三千万円はする。それぐらい、スキルオーブは高価なのだ。
「残念ながら、死ぬ死ぬマンには一千万円しかありません。この値段で買えるのはガチャオーブだけです! 知らない人に説明すると、ガチャオーブとは使用するまでなんのスキルを取得出来るか分からないスキルオーブのことをいいます! 鑑定しても分からないので、本当に運です!」
フロアを横切り、レジカウンター近くのガラスケースに向かう。そこには『ガチャオーブ 税込1000万円』の札のついたオーブが五つほど並べられてあった。
「店員さん! ガチャオーブ買いたいです! この五つの内、お勧めはどれですか……!?」
カウンターに立っていたスキルヘッドの厳つい店員がジロリとこちらを向いた。
「どれもお勧めしないな。真面目に三千万円貯めて、鑑定済みの普通のオーブを買った方がいい」
「うおおおぉぉぉ!! 正論だぁぁああ!! でも、死ぬ死ぬマンはガチャオーブを買います!! この真ん中のやつください!!」
「本当にいいのか? カススキルを引いても、一切のクレームは受け付けないぞ?」
「大丈夫っす!!」
店員は手袋をはめてケース真ん中のガチャオーブを取り出し、専用のケースに入れた。このフロアで最も安いとはいえ、税込1000万円の品だ。流石に丁寧に扱うようだ。
「支払いは?」
「もちろん現生っす!」
リュックの中から封帯付きの札束を十取り出す。カメラ映えするようにカウンターに並べた。
「確かめさせてもらう」
千枚の一万円札は計数機を何回も通される。
「確かに、一千万円だ。毎度あり」
とうとう、ガチャオーブが手渡された。もう後戻りは出来ない。
「よし! 新宿ダンジョンで検証だ!」
「ウゥ……!」
「はい……!」
滞在時間15分。俺はダンジョン野郎を後にした。
とはいえ、まだ一千万ちょっとのお金が浮いているのは事実。これを使わずに寝かせておくことは出来ない。配信者たるもの、守りに入っては駄目なのだ。
とにかく景気良く使う。それは確定だった。
では何に使うのか……? 視聴者に聞くとまた母親が出てきておねだりされる恐れがある。
そこで三人で話し合った。結果……。
「本日はガチャオーブを買いに行きたいと思います!!」
『ガチャオーブかっ……!! あち~』
『ほとんどの場合、カススキルしか手に入らないけど!!』
『呪いのスキル引いちゃうんやろなぁ~』
『どこのダンジョン野郎に買いに行くの?』
「新宿のダンジョン野郎でガチャオーブを買って、そのまま新宿ダンジョンで使います!!」
『やっぱり死ぬ死ぬマンは攻めるよね!』
『どんなカススキルを引くか楽しみ~』
『カススキルに一千万使うのかぁ~』
『うほ~たまんねぇ~』
「まだカススキルを引くって決まってないでしょ! レアスキル引くかもしれないじゃん!!」
「ウゥ……」
グミが慰めるように、俺の肩に手を置く。まだ何もしてないのに……!
「とにかく、今から新宿のダンジョン野郎に行きます! さぁ、出発!!」
二人を連れ、部屋を出た。
#
『ダンジョン野郎』新宿店は探索者に必要なものが全て揃う大型店舗だ。武器や防具、その他アイテムが五階建ての店舗の中に所狭しと並べられている。
「師匠! 店内の配信オッケーだそうです!」
「よし! 五階に直行だ!!」
ガラス戸を押して店内に入り、エレベーターで五階へ。
そこに他のフロアのような雑然とした雰囲気はない。
分厚いガラスケースの中に整然と輝く球体が並べられていた。
「さて! スキルオーブのフロアに来ました! ウッヒョ~高え~!! 【初級水魔法】のオーブが五千万しますよ!」
「ウゥ……」
「高い……」
魔法系のスキルオーブは人気なので初級でも五千万円は下らない。その他のスキルオーブだって最低三千万円はする。それぐらい、スキルオーブは高価なのだ。
「残念ながら、死ぬ死ぬマンには一千万円しかありません。この値段で買えるのはガチャオーブだけです! 知らない人に説明すると、ガチャオーブとは使用するまでなんのスキルを取得出来るか分からないスキルオーブのことをいいます! 鑑定しても分からないので、本当に運です!」
フロアを横切り、レジカウンター近くのガラスケースに向かう。そこには『ガチャオーブ 税込1000万円』の札のついたオーブが五つほど並べられてあった。
「店員さん! ガチャオーブ買いたいです! この五つの内、お勧めはどれですか……!?」
カウンターに立っていたスキルヘッドの厳つい店員がジロリとこちらを向いた。
「どれもお勧めしないな。真面目に三千万円貯めて、鑑定済みの普通のオーブを買った方がいい」
「うおおおぉぉぉ!! 正論だぁぁああ!! でも、死ぬ死ぬマンはガチャオーブを買います!! この真ん中のやつください!!」
「本当にいいのか? カススキルを引いても、一切のクレームは受け付けないぞ?」
「大丈夫っす!!」
店員は手袋をはめてケース真ん中のガチャオーブを取り出し、専用のケースに入れた。このフロアで最も安いとはいえ、税込1000万円の品だ。流石に丁寧に扱うようだ。
「支払いは?」
「もちろん現生っす!」
リュックの中から封帯付きの札束を十取り出す。カメラ映えするようにカウンターに並べた。
「確かめさせてもらう」
千枚の一万円札は計数機を何回も通される。
「確かに、一千万円だ。毎度あり」
とうとう、ガチャオーブが手渡された。もう後戻りは出来ない。
「よし! 新宿ダンジョンで検証だ!」
「ウゥ……!」
「はい……!」
滞在時間15分。俺はダンジョン野郎を後にした。
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