35 / 53
35話 案件?
しおりを挟む
ハンターズを「死ぬ負けハンターズ」に改名させた一件は「アキバ事変」と呼ばれてダンジョン配信者界隈を揺るがした。
なにせ業界最大手のプロダクションの看板に泥を塗ったのだ。死ぬ死ぬマンチャンネルにはアンチが激増し、元からの住人とコメント欄でレスバを繰り広げている。
また、ハンターズとAXXYの恋愛関係をバラしたのも不味かったらしい。街を歩いていると、「俺の夢を奪いやがったな!」と怒られることがよくある。しるかよ!
ただ、マイナスばかりではない。
チャンネル登録者は一気に跳ね上がり、通常の配信でも同時接続数五桁が当たり前になった。色々な声はあるものの、死ぬ死ぬマンチャンネルは伸びているのだ。劇的に。
その証拠として、遂に我々にもやってきたのだ。案件が!
「師匠。さっきからソワソワしすぎですよ」
新宿ダンジョン入り口。俺達はある会社の社長さんを待っていた。
「仕方ないだろ! 初めての案件なんだから! 俺はずっとこの日を夢見てたの! なあ、グミ!」
「ウゥ……!」
案件慣れしているマリナと違い、俺達は舞い上がっている。自分でも笑ってしまうぐらい落ち着きがない。
スマホを見ると、そろそろ約束の時間だ。
「死ぬ死ぬマンさん!」
やたらと通る声だった。
振り返ると、恰幅の良い男性がボディーガードを引き連れて歩いている。
「遅くなってすみませんでした! 小塚商会の小塚です」
「とんでもないです! 今回はお話を頂き、ありがとうございます!」
小塚さんと握手をしながら、頭を下げる。
「こちらこそ引き受けて頂き、ありがとうございます! 今、死ぬ死ぬマンチャンネルは飛ぶ鳥を落とす勢いですからね! ダンジョングッズを扱う会社は何処も注目していますよ」
そう。小塚商会はダンジョン探索者向けのアイテムを扱う会社である。それも、海外から輸入した変わり種ばかり。
「それでは小塚さん、早速ダンジョンに行きましょうか?」
「よろしくお願いします!」
今回は小塚さんと一緒にダンジョンに潜り、様々なダンジョングッズを試す企画なのだ。
#
新宿ダンジョン十二階。屈強な肉体を持つモンスター、オークが現れることで知られるフロアだ。
分厚い筋肉の鎧は厄介で、毎年何人もの探索者がオークにやられて帰らぬ人となっている。それぐらい、危ないモンスターだ。特に、女性にとって……。
「ウゥ……!」
転移部屋を出てすぐ、グミが反応した。モンスターの気配。
「来ます!」
現れたのは一体のオーク。こちらを認めてニヤリと笑った。そして腰につけていた布切れを雑に外し、股間を露わにする。
「ブイィィィ……!」
マリナに狙いをつけると、興奮した顔で走り始める。そう、オークは人間の女性に激しく欲情するのだ……!!
俺は弾丸のように突進してくるオークの軌道上に立つ。
──カチンッ!
HPの壁にぶち当たり、後方にゴロゴロと転がるオーク。
「今です!!」
小塚さんの声がダンジョンに響く。呼応して、グミとマリナは手に持っていたアイテムをオークに投げつけた。
なにせ業界最大手のプロダクションの看板に泥を塗ったのだ。死ぬ死ぬマンチャンネルにはアンチが激増し、元からの住人とコメント欄でレスバを繰り広げている。
また、ハンターズとAXXYの恋愛関係をバラしたのも不味かったらしい。街を歩いていると、「俺の夢を奪いやがったな!」と怒られることがよくある。しるかよ!
ただ、マイナスばかりではない。
チャンネル登録者は一気に跳ね上がり、通常の配信でも同時接続数五桁が当たり前になった。色々な声はあるものの、死ぬ死ぬマンチャンネルは伸びているのだ。劇的に。
その証拠として、遂に我々にもやってきたのだ。案件が!
「師匠。さっきからソワソワしすぎですよ」
新宿ダンジョン入り口。俺達はある会社の社長さんを待っていた。
「仕方ないだろ! 初めての案件なんだから! 俺はずっとこの日を夢見てたの! なあ、グミ!」
「ウゥ……!」
案件慣れしているマリナと違い、俺達は舞い上がっている。自分でも笑ってしまうぐらい落ち着きがない。
スマホを見ると、そろそろ約束の時間だ。
「死ぬ死ぬマンさん!」
やたらと通る声だった。
振り返ると、恰幅の良い男性がボディーガードを引き連れて歩いている。
「遅くなってすみませんでした! 小塚商会の小塚です」
「とんでもないです! 今回はお話を頂き、ありがとうございます!」
小塚さんと握手をしながら、頭を下げる。
「こちらこそ引き受けて頂き、ありがとうございます! 今、死ぬ死ぬマンチャンネルは飛ぶ鳥を落とす勢いですからね! ダンジョングッズを扱う会社は何処も注目していますよ」
そう。小塚商会はダンジョン探索者向けのアイテムを扱う会社である。それも、海外から輸入した変わり種ばかり。
「それでは小塚さん、早速ダンジョンに行きましょうか?」
「よろしくお願いします!」
今回は小塚さんと一緒にダンジョンに潜り、様々なダンジョングッズを試す企画なのだ。
#
新宿ダンジョン十二階。屈強な肉体を持つモンスター、オークが現れることで知られるフロアだ。
分厚い筋肉の鎧は厄介で、毎年何人もの探索者がオークにやられて帰らぬ人となっている。それぐらい、危ないモンスターだ。特に、女性にとって……。
「ウゥ……!」
転移部屋を出てすぐ、グミが反応した。モンスターの気配。
「来ます!」
現れたのは一体のオーク。こちらを認めてニヤリと笑った。そして腰につけていた布切れを雑に外し、股間を露わにする。
「ブイィィィ……!」
マリナに狙いをつけると、興奮した顔で走り始める。そう、オークは人間の女性に激しく欲情するのだ……!!
俺は弾丸のように突進してくるオークの軌道上に立つ。
──カチンッ!
HPの壁にぶち当たり、後方にゴロゴロと転がるオーク。
「今です!!」
小塚さんの声がダンジョンに響く。呼応して、グミとマリナは手に持っていたアイテムをオークに投げつけた。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
最強のコミュ障探索者、Sランクモンスターから美少女配信者を助けてバズりたおす~でも人前で喋るとか無理なのでコラボ配信は断固お断りします!~
尾藤みそぎ
ファンタジー
陰キャのコミュ障女子高生、灰戸亜紀は人見知りが過ぎるあまりソロでのダンジョン探索をライフワークにしている変わり者。そんな彼女は、ダンジョンの出現に呼応して「プライムアビリティ」に覚醒した希少な特級探索者の1人でもあった。
ある日、亜紀はダンジョンの中層に突如現れたSランクモンスターのサラマンドラに襲われている探索者と遭遇する。
亜紀は人助けと思って、サラマンドラを一撃で撃破し探索者を救出。
ところが、襲われていたのは探索者兼インフルエンサーとして知られる水無瀬しずくで。しかも、救出の様子はすべて生配信されてしまっていた!?
そして配信された動画がバズりまくる中、偶然にも同じ学校の生徒だった水無瀬しずくがお礼に現れたことで、亜紀は瞬く間に身バレしてしまう。
さらには、ダンジョン管理局に目をつけられて依頼が舞い込んだり、水無瀬しずくからコラボ配信を持ちかけられたり。
コミュ障を極めてひっそりと生活していた亜紀の日常はガラリと様相を変えて行く!
はたして表舞台に立たされてしまった亜紀は安らぎのぼっちライフを守り抜くことができるのか!?
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜
夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。
不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。
その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。
彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。
異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!?
*小説家になろうでも公開しております。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
テイマーは死霊術師じゃありませんっ!
さんごさん
ファンタジー
異世界に転生することになった。
なんか「徳ポイント」的なのが貯まったらしい。
ついては好きなチートスキルがもらえるというので、もふもふに憧れて「テイム」のスキルをもらうことにした。
転生と言っても赤ちゃんになるわけではなく、神様が創った新しい肉体をもらうことに。いざ転生してみると、真っ暗な場所に歩く骸骨が!
ひぃぃい!「テイム!テイム!テイム!」
なんで骸骨ばっかり!「テイム!テイムテイム!」
私は歩く。カタカタカタ。
振り返ると五十体のスケルトンが私に従ってついてくる。
どうしてこうなった!?
6/26一章完結しました
この作品は、『三上珊瑚』名義で小説家になろうにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる