上 下
8 / 53

8話 一日の終わり

しおりを挟む
『絶対チャイナだろ!』
『馬鹿が! ナース服こそ至高!!』
『バスタオルのままがいい!!』


 グミに何を着せるかで視聴者同士が揉めている。

 当の本人は何の事か分からず、ソファーに座ってぼんやり。ノートパソコンの画面に物凄い勢いで流れるコメントを見つめていた。

「分かりました! 日替わりにしましょう!! 今日はチャイナドレスです。明日はナース服。明後日はバスタオル」

 俺の提案に一応、視聴者は落ち着いた。しかしある一人が次の爆弾を落とす。


『パンツはどうする? はかせる?』


 ……パンツのことは考えていなかった。流石にウチのホテルでも下着の貸し出しはしていない。勿論、母親のモノを付けさせるわけにもいかない。


『馬鹿野郎! グールは元々パンツなんて穿いてないだろ?』
『そうだ! 下着なんていらない!!』
『はぁ? ランジェリーはいるに決まってるだろ!!』
『あの灰色の肌には赤い下着が似合う』
『ちょっと! 男の人キモ過ぎる!!』
『女子供は黙ってろ!!』


 駄目だ。収集がつかない。もう本人に決めさせるしかない……!!

 俺はバスローブを脱ぎ捨てパンツ一丁になった。そしてグミに問いかける。

「パンツはく?」

「ウゥ?」

 両手の人差し指でパンツを指し示し、もう一度尋ねる。

「パンツはく?」

「ウゥ!!」

 コクコクと頷く。どうやら穿くらしい。

「ちょっと今は女モノのパンツはないんだ。まだ穿いてない俺のパンツがあるから、とりあえずそれで我慢してくれ」

 タンスから新品のボクサーパンツを出してグミに渡すと、俺の真似をして器用に穿いてみせた。そしてその上からチャイナドレス(ミニ)を着せる。

「とりあえず今日のところは! これで許してください!!」

 グミをカメラの前に立たせ、クルクルと回す。


『お、ぉぉおん。まぁ、いいんじゃないかな』
『グミちゃん可愛い!!』
『風呂入ったら綺麗になったね』
『ボクサーパンツの安心感』
『身体のラインが強調されてなんとも……』


 概ね好評だな。女用の下着はまた今度入手しよう。欲しいモノリストを公開して、視聴者から貢がせるのもアリだな。

 グミはなんとなくカメラの役割を理解したようで、パソコンのモニターに映る自分の姿に興味深々だ。色んな格好をしてモニターに映し出される自分の姿確認している。

 しばらくはこれで視聴者数が稼げそうだ。

「ちょっと今日は色々あり過ぎたので、少し眠りたいと思います。勿論配信は続けたまま。グミは起きていると思いますので、俺が寝ている間に何をやっていたか、明日教えて下さい!」


『オッケー死ぬ死ぬマン! 任せとけ』
『死ぬ死ぬマンのHPは俺達が守る!!』
『グミちゃんで命拾いしたな』
『死ぬ死ぬマンさん! お疲れ様でした!!』


 据え置きカメラを寝室に移動し、ベッドの映る場所に置く。メインチャンネルは寝室、サブチャンネルは首元のアクションカメラ、サブサブチャンネルはリビング。合計三ちゃんねる3チャンネル配信だ。

 これだけやっていれば、視聴者がゼロになることはない。そもそも自分のパソコンで接続しているしね。

 安心してベッドに横たわる。

 ついて来たグミが、何も言わずにベッドの端に腰を下ろした。あまり側から離れるつもりはないらしい。

 しかし眠い。瞼が重い。

 意識が落ちる前に脳内ステータスを確認すると、HPの上限は4000を超えていた。

 たった一日でとんでもない躍進だ。めちゃくちゃ気分がいい。もしかして俺は天才なのでは? と感じている。

 しかし、油断は禁物。配信者の世界は群雄割拠。常に新しいチャレンジが必要だ。何か大きな目標をぶち上げて、それに向かって行動していかなければ……。

 考えをまとめているうちに、意識は落ちていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

強制的にダンジョンに閉じ込められ配信を始めた俺、吸血鬼に進化するがエロい衝動を抑えきれない

ぐうのすけ
ファンタジー
朝起きると美人予言者が俺を訪ねて来る。 「どうも、予言者です。あなたがダンジョンで配信をしないと日本人の半分近くが死にます。さあ、行きましょう」 そして俺は黒服マッチョに両脇を抱えられて黒塗りの車に乗せられ、日本に1つしかないダンジョンに移動する。 『ダンジョン配信の義務さえ果たせばハーレムをお約束します』 『ダンジョン配信の義務さえ果たせば一生お金の心配はいりません』 「いや、それより自由をください!!」 俺は進化して力を手に入れるが、その力にはトラップがあった。 「吸血鬼、だと!バンパイア=エロだと相場は決まっている!」

達也の女体化事件

愛莉
ファンタジー
21歳実家暮らしのf蘭大学生達也は、朝起きると、股間だけが女性化していて、、!子宮まで形成されていた!?

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

処理中です...