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ダンジョンに咲く薔薇
丘を目指して
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「はあ、はあ」
アナルローズを求める老人、ディルの息遣いは荒い。
「大丈夫か? 休憩してもいいぞ」
「……大丈夫です。なんとしてもハーピーダンジョンに一番乗りしないといけないので……」
ラムズ平原を南下すること半日、ようやく目的の丘に近付いてきた。ディルによると近い内に超巨大ハーピーが丘で休眠に入る筈。誰よりも早くダンジョンに入り、アナルローズを採取するのが目的だ。
「焦らなくてもいい。まだハーピーダンジョンはいないし、ライバルも見当たらない」
「……では、お言葉に甘えて……」
ディルは荷物を下ろすとそれにもたれ掛かるように座り、水筒の水を煽った。随分疲れていたようで、しばらくは立ち上がる気配がない。
「ベン殿はタフですなぁ。私より荷物も多いのに」
「最果ての村では三日三晩、寝ずに狩りをすることもある。これぐらいなんてことはない」
「……最果ての村が世界中で恐れられているのが分かります」
呆れた顔でディルは言い、もう一度水筒を煽った。
「【水生成】のスキルがあると気が楽だな。思う存分、水が飲める」
「体力を消耗するから無限というわけにはいきませんが、あるとないとでは大違いですよ」
長年冒険者をやっていたディルは数多くのスキルを持っているらしい。【水生成】もその一つ。
「今回はアナルローズを氷漬けにする必要があるので、ダンジョンに入ったらスキルは節約ですがね」
ディルが協力者を求めた理由はその辺にあるのだろう。年老いて体力が落ちるとスキルの使用回数は制限される。モンスターとの戦闘に割く体力はないのだ。
「……さて、行きますか」
人心地ついたのかディルは立ち上がり、再び荷物を背負った。瞳には力が戻っている。大丈夫そうだ。
「よし、丘の上まではもう休憩なしだ。一気に行くぞ」
ディルは頷き、力強い足取りで進み始めた。
#
「ベン殿!」
見張りをしていたディルの声にさっと意識を覚醒させる。緊迫感のある様子があることを示唆していた。
「来たのか? 超巨大ハーピーが」
「あちらを見てください!」
ディルは朝日が昇る方を指差す。まだ小さいが空に何かがいる。徐々に大きくなり、その姿はあるモンスターに似ていた。ハーピー。美しい女性の半身に鳥の羽と脚を持つ。
「来ますぞ! ちょっと離れましょう!」
野営地を目指して真っ直ぐ飛んでくる様子にディルは慌てる。超巨大ハーピーにとって人間など豆粒程度でしかない。踏み潰されないように充分な距離を取り、息を潜める。
ドドン! と地鳴りがし、着地した地面は大きく抉れる。眠そうな顔をした超巨大ハーピーはふらふらと2、3歩あるいた後に脚を折って丸くなり、尻を突き出したまま土下座するような体勢で眠り始めた。
「行きましょう!」
若返ったかのようにハツラツとした笑顔のディルはこちらの返事も聞かずに走り出す。
「全く。冒険者って奴等はどいつもこいつも──」
好奇心旺盛な馬鹿ばっかりだ。俺は呆れながらディルの後に続いた。
アナルローズを求める老人、ディルの息遣いは荒い。
「大丈夫か? 休憩してもいいぞ」
「……大丈夫です。なんとしてもハーピーダンジョンに一番乗りしないといけないので……」
ラムズ平原を南下すること半日、ようやく目的の丘に近付いてきた。ディルによると近い内に超巨大ハーピーが丘で休眠に入る筈。誰よりも早くダンジョンに入り、アナルローズを採取するのが目的だ。
「焦らなくてもいい。まだハーピーダンジョンはいないし、ライバルも見当たらない」
「……では、お言葉に甘えて……」
ディルは荷物を下ろすとそれにもたれ掛かるように座り、水筒の水を煽った。随分疲れていたようで、しばらくは立ち上がる気配がない。
「ベン殿はタフですなぁ。私より荷物も多いのに」
「最果ての村では三日三晩、寝ずに狩りをすることもある。これぐらいなんてことはない」
「……最果ての村が世界中で恐れられているのが分かります」
呆れた顔でディルは言い、もう一度水筒を煽った。
「【水生成】のスキルがあると気が楽だな。思う存分、水が飲める」
「体力を消耗するから無限というわけにはいきませんが、あるとないとでは大違いですよ」
長年冒険者をやっていたディルは数多くのスキルを持っているらしい。【水生成】もその一つ。
「今回はアナルローズを氷漬けにする必要があるので、ダンジョンに入ったらスキルは節約ですがね」
ディルが協力者を求めた理由はその辺にあるのだろう。年老いて体力が落ちるとスキルの使用回数は制限される。モンスターとの戦闘に割く体力はないのだ。
「……さて、行きますか」
人心地ついたのかディルは立ち上がり、再び荷物を背負った。瞳には力が戻っている。大丈夫そうだ。
「よし、丘の上まではもう休憩なしだ。一気に行くぞ」
ディルは頷き、力強い足取りで進み始めた。
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「ベン殿!」
見張りをしていたディルの声にさっと意識を覚醒させる。緊迫感のある様子があることを示唆していた。
「来たのか? 超巨大ハーピーが」
「あちらを見てください!」
ディルは朝日が昇る方を指差す。まだ小さいが空に何かがいる。徐々に大きくなり、その姿はあるモンスターに似ていた。ハーピー。美しい女性の半身に鳥の羽と脚を持つ。
「来ますぞ! ちょっと離れましょう!」
野営地を目指して真っ直ぐ飛んでくる様子にディルは慌てる。超巨大ハーピーにとって人間など豆粒程度でしかない。踏み潰されないように充分な距離を取り、息を潜める。
ドドン! と地鳴りがし、着地した地面は大きく抉れる。眠そうな顔をした超巨大ハーピーはふらふらと2、3歩あるいた後に脚を折って丸くなり、尻を突き出したまま土下座するような体勢で眠り始めた。
「行きましょう!」
若返ったかのようにハツラツとした笑顔のディルはこちらの返事も聞かずに走り出す。
「全く。冒険者って奴等はどいつもこいつも──」
好奇心旺盛な馬鹿ばっかりだ。俺は呆れながらディルの後に続いた。
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