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第15話 ハッサンと低級ポーション
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『次は何処にいくの?』
一度宿に戻り、俺はまた仙人の壺を抱えていた。中には勿論、【仙人水】が入っている。
『付いてくれば分かる』
冒険者ギルドからほど近い飲み屋街。
ここには昼間から飲んだくれた冒険者がいる。目当ての奴も……。
俺はある酒場の前で足を止めた。店の名前は「冒険者の宴」。そのまんまだ。
店は繁盛しているようで、昼間にも関わらず賑やかな雰囲気が外まで伝わってきている。
『よし。入るぞ』
ニンニンとグラスは戸惑いつつも、頷いた。
壺で押すように扉を開ける。喧騒が俺達を出迎えた。
テーブル席には若い冒険者達が座り、ジョッキに入ったエールをカパカパ飲んでいる。
カウンター席はベテランが多い。
その一番奥。大きな身体を小さくして一人で静かに飲んでいる男が今回のターゲットだ。
俺は男の隣りまで歩き、声を掛ける。
「ハッサン、隣りいいか?」
「ひっ……!? ツボタ?」
ハッサンは仰け反った。俺にびびっているらしい。
俺はカウンターに壺を置いて、隣りに座る。
「マスター。こいつと同じ酒を」
「はいよ」
茶色の蒸留酒をもらい、一口飲んでから話し掛ける。
「ハッサン。お前最近、冒険者稼業を休んでいるそうじゃないか? どうした?」
「どうしたって……お前……」
ハッサンは言い淀む。
「まさか冒険者ギルドで恥をかいて、行きにくくなったとか?」
「……そうだ……」
冒険者なんてヤクザみたいな稼業。面子が大事なのだろう。ほとぼりが冷めるまで、大人しくしてるって感じか。
「お前、冒険者ギルドで痙攣したのは俺が何かやったからだと思っているだろ?」
「違うのか?」
「違うな」
ハッサンの方に身体を向け、真剣な表情を作る。
「あの時、ハッサンの身体が痙攣したのは、整っていなかったからだ!」
「整って……いなかった……?」
よし。
「そうだ。整っていないと、あーいうことはよく起こる」
「整えるにはどうしたらいいんだ?」
ハッサンの縋るような声。こいつ、相当弱っているな。
「簡単だ。この仙人の壺の中に入っている【仙人水】を毎日、一口飲めばいい。その際、この壺に手を合わせて、感謝を伝えるのを忘れるな」
俺は合唱して壺に一礼をした。見本を見せるように。
「壺……仙人水……」
ハッサンは眩しいモノを見るように、壺を見つめる。
「今回だけ、タダで仙人水をやる。騙されたと思って試してみろ。【整う】と自信も出る。また、冒険者として働けるようになるだろう」
「……ツボタ。なんで、俺にここまでしてくれるんだ……? 俺はお前を馬鹿にしていたのに……」
瞳に涙を溜めるハッサン。
「冒険者ギルドで、俺に声を掛けてくれたのはハッサンだけだ。確かに馬鹿にはされたが、あれ以降、他の冒険者とも交流できるようになった。ハッサンのおかげだと思っている」
「ツボタ……」
俺は蒸留酒を飲み干して金を置き、席を立つ。
「一か月、感想を聞かせてくれ。じゃあな」
俺は壺をハッサンに押し付け、「冒険者の宴」を後にした。
一度宿に戻り、俺はまた仙人の壺を抱えていた。中には勿論、【仙人水】が入っている。
『付いてくれば分かる』
冒険者ギルドからほど近い飲み屋街。
ここには昼間から飲んだくれた冒険者がいる。目当ての奴も……。
俺はある酒場の前で足を止めた。店の名前は「冒険者の宴」。そのまんまだ。
店は繁盛しているようで、昼間にも関わらず賑やかな雰囲気が外まで伝わってきている。
『よし。入るぞ』
ニンニンとグラスは戸惑いつつも、頷いた。
壺で押すように扉を開ける。喧騒が俺達を出迎えた。
テーブル席には若い冒険者達が座り、ジョッキに入ったエールをカパカパ飲んでいる。
カウンター席はベテランが多い。
その一番奥。大きな身体を小さくして一人で静かに飲んでいる男が今回のターゲットだ。
俺は男の隣りまで歩き、声を掛ける。
「ハッサン、隣りいいか?」
「ひっ……!? ツボタ?」
ハッサンは仰け反った。俺にびびっているらしい。
俺はカウンターに壺を置いて、隣りに座る。
「マスター。こいつと同じ酒を」
「はいよ」
茶色の蒸留酒をもらい、一口飲んでから話し掛ける。
「ハッサン。お前最近、冒険者稼業を休んでいるそうじゃないか? どうした?」
「どうしたって……お前……」
ハッサンは言い淀む。
「まさか冒険者ギルドで恥をかいて、行きにくくなったとか?」
「……そうだ……」
冒険者なんてヤクザみたいな稼業。面子が大事なのだろう。ほとぼりが冷めるまで、大人しくしてるって感じか。
「お前、冒険者ギルドで痙攣したのは俺が何かやったからだと思っているだろ?」
「違うのか?」
「違うな」
ハッサンの方に身体を向け、真剣な表情を作る。
「あの時、ハッサンの身体が痙攣したのは、整っていなかったからだ!」
「整って……いなかった……?」
よし。
「そうだ。整っていないと、あーいうことはよく起こる」
「整えるにはどうしたらいいんだ?」
ハッサンの縋るような声。こいつ、相当弱っているな。
「簡単だ。この仙人の壺の中に入っている【仙人水】を毎日、一口飲めばいい。その際、この壺に手を合わせて、感謝を伝えるのを忘れるな」
俺は合唱して壺に一礼をした。見本を見せるように。
「壺……仙人水……」
ハッサンは眩しいモノを見るように、壺を見つめる。
「今回だけ、タダで仙人水をやる。騙されたと思って試してみろ。【整う】と自信も出る。また、冒険者として働けるようになるだろう」
「……ツボタ。なんで、俺にここまでしてくれるんだ……? 俺はお前を馬鹿にしていたのに……」
瞳に涙を溜めるハッサン。
「冒険者ギルドで、俺に声を掛けてくれたのはハッサンだけだ。確かに馬鹿にはされたが、あれ以降、他の冒険者とも交流できるようになった。ハッサンのおかげだと思っている」
「ツボタ……」
俺は蒸留酒を飲み干して金を置き、席を立つ。
「一か月、感想を聞かせてくれ。じゃあな」
俺は壺をハッサンに押し付け、「冒険者の宴」を後にした。
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