回復手段が独占された世界に転移した悪徳霊能者。「身体が整う水」としてポーションを売り出す

フーツラ

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第12話 魔の森②

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 正午を回って少し経った頃。ついに目当ての魔物がやってきた。

 オーク。ただし、単体ではない。ペア、二体いる。

『ニンニン。オークって雄と雌がいるのか? 二体の内一体は筋肉質で、もう一体はちょっと丸みを帯びているが……』
『そりゃーオークにも雄雌がいるわよ。あれはカップルかもしれないわね』

 木の影に身体を隠しながら観察する。二体のオークは泉のほとりに屈み、それぞれ水を飲み始めた。やるなら今だな。

『グラス! 雌のオークに【憑け】!』
『ウォン!』

 グラスは疾風の如く飛び出し、雌オークに取り憑く。途端、激しく震え始める。

「ブイブイブイブイ!! ──ぶくぶくぶく……」

 雌オークは体を痙攣させ、そのまま泉に飛び込んでしまった。雄オークが慌てる。

「ブイ!? ブイブイブー?」

 おい!? 大丈夫か? と言っているように聞こえた。雄オークは雌オークを助けようと自分も泉に飛び込む。狙い通りの展開。

 雄オークは必死に引き上げようとするが、痙攣する雌オークの体は重い。次第に雄オークの体まで沈み始める。やがて……。

『あっ、動かなくなった……。何だろう。涙が零れそう』
『うん。美しいシーンだったな。オーク同士の愛を感じた』
『オークの愛を利用する人間の醜さも感じたけど!』

 結果としてカップルオーク、仲良く溺死。こちらの被害はゼロだ。素晴らしい。

『グラス。もういいぞ』

 俺が指示を下すと、グラスは俺の元に戻ってきた。

『俺はオークの足にロープを結んで引き上げる。ニンニンとグラスは周囲を警戒していてくれ』
『分かった』
『ウォン!』

 俺はリュックからロープを二本取り出し、軽装になってから泉に飛び込んだ。

 苦労しながらもなんとか、二体のオークの足にロープを結ぶことが出来た。

 それからはさらに重労働だった。なんとか泉のほとりにオークの死体を引き上げた頃には夕暮れ間近。

 急いで魔石と睾丸を抉り取り、俺達はヘルガートの街へと戻った。
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