回復手段が独占された世界に転移した悪徳霊能者。「身体が整う水」としてポーションを売り出す

フーツラ

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第5話 欠点

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 ニンニンの服は意外なほど高値で売れた。一点ものの高級品というのは本当だったらしい。安宿になら十日程泊まれるぐらいの金が手元に残った。

 そして今、俺はその安宿にいる。名前は野兎亭。コスパが良くて駆け出し冒険者に人気らしい。

 ベッドと小さな机、椅子だけの部屋だが、清潔感があってなかなかいい。

 一つだけある窓からは夜風が吹き込み、カーテンを揺らす。

 俺は屋台で買った夕食──パンと串焼き──を頬張りながら、ニンニンと今後について相談していた。

『ポーションを作る工程をざっくり教えてくれないか?』

 固い肉をやっと飲み下してから、質問した。ニンニンは張り切って話始めた。

『先ずは素材集め! 私は素材屋で購入してたけど、お金のないツボタは自分で採取することになると思う。次に精製。集めた素材からポーションに必要な成分だけを抜き出す。そして最後に合成。精製物を魔法陣の上に置いて、魔力を流してポーションの完成よ!』

 うん……? これは不味いな。

『ポーション合成には魔力が必要なのか?』
『あっ……!? ツボタ、魔力0じゃん!』

 俺をカスと呼んだハッサンの顔が脳裏に浮かんだ。ニヤニヤ笑ってやがる。

『何か手はないのか?』
『うーん、魔物からとれる魔石で代用する方法もあるけど、低級ポーションしかできないよ』

 低級……。

『それはそれでありだな。むしろ最初はその方がいいかもしれない』
『えっ、低級がいいってことがあるの?』
『ある。品が良ければ喜ばれるってのは、思考の停止だ。低品質で喜ばれることこそ、至高』

 ニンニンは難しい顔をして首を捻っている。

『まぁその内、魔力を持った人間を仲間に引き入れればいい。ちなみに、この世界には奴隷制度とかあるのか?』
『あるよ。お金さえだせば、誰でも奴隷は買えるよ』
『ならば、奴隷でもいい。ただ、当分先だな。しばらくは低級ポーションの作成を目標にして行動する。いいな?』
『うん!』

 すっかり俺の背後霊に収まったニンニンは希望に目を輝かせている。当分、こいつが成仏することは無さそうだ。
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