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第4話 ニンニンの家で
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『なんで馬鹿にされっ放しだったのよ……!?』
ギルドから出た途端、ニンニンが怒り始めた。素直な性格だな。
『侮られていた方が行動しやすいだろ? 警戒されるよりも遥かにいい』
『あれだけ言われて、悔しくないの?』
『あそこで喧嘩を始めても、なんの得にもならない』
『んんん……』
ニンニンは納得いかないらしい。
『そんなことより、ニンニンの家に案内してくれ。ポーションを作るのには道具が必要だろ? それを回収したい』
『えっ……!? アスター教をやっつけるだけじゃなく、【安価なポーションを世界に広げる】って私の夢を、ツボタは引き継いでくれるの……!?』
『まぁ、そんなところだ。ただし、俺のやり方でな』
『ありがとう……!!』
ニンニンは後ろから俺の身体を抱きしめようとする。もちろん、霊体なのでするりとすり抜けた。
『気持ちだけ受け取っておく。で、どっちにいけばいい?』
『……次を左に曲がって真っ直ぐよ。ちょっと遠いけど……』
申し訳なさそうにする。
『俺は足で稼ぐタイプの霊能者だから、気にするな』
『レイノウシャって何?』
『普通の人が見えないモノを相手にする人のことだ』
『それって、儲かるの?』
『めちゃくちゃ儲かる』
『儲かるのか~』と不思議そうにするニンニンに指示に従って、家を目指した。
#
『ちょっとこれ…!? どういうことよ……!!』
ニンニンの家に足を踏み入れた途端、脳内に悲鳴が響いた。
確かにひどい有様だ。
あらゆる引き出しの中身が床に散乱し、ソファもベッドもひっくり返され、おまけに天井の板まで外されていた。
『お前、部屋の掃除が出来ないタイプだったのか?』
『そんなわけないでしょ! 私を殺した後に教会の奴等が家探ししたのよ! きっと!!』
俺の頭をバンバン叩きながら、ニンニンは怒る。霊なのでもちろん痛くない。
『ポーションとそれを合成する魔法陣を狙っていたのか? あの箱の中にあった』
『間違いなくそうよ! 家のどこかに隠していると思ったんでしょうね! ざまぁみろだわ!』
腰に手をあててドヤる。殺された癖に……。
『この辺に散らばってるフリフリの服。高級品か?』
『そうよ! 私、レースのついた服が好きだったの! 王都で買った一点モノばかりなんだから!』
『ふむ。売ろう』
『えぇぇぇ……!』
ニンニンは叫び声が脳内で響く。
『もう死んだんだから、着られないだろ? 少しでもアスター教の奴等に仕返しする為の資金にさせてもらう』
『……しどい!』
口元に手をやって抗議しているが、無視だ。
『で、錬金術で使う機材はどこにある?』
『作業部屋よ。寝室の奥の扉』
言われた通りの扉を開けると、ずらりと器具が並ぶ棚が見えた。ビーカーやフラスコ、漏斗やすり鉢、まるで理科実験室だ。
『ここはあまり荒らされていないな』
『作業台や棚に引き出しもないしね」
落ち着いたニンニンは、懐かしそうに作業部屋を眺めている。
『とりあえず持って行けるものは全部持っていく』
『いいわ。そうして』
俺は寝室で見つけたリュックの口を広げ、器具と売れそうな服を突っ込んだ。
『あまり長居して誰かに見られるのもまずい。そろそろいこう』
『そうね……』
物憂げな表情のニンニンを連れて、俺は家を後にした。
ギルドから出た途端、ニンニンが怒り始めた。素直な性格だな。
『侮られていた方が行動しやすいだろ? 警戒されるよりも遥かにいい』
『あれだけ言われて、悔しくないの?』
『あそこで喧嘩を始めても、なんの得にもならない』
『んんん……』
ニンニンは納得いかないらしい。
『そんなことより、ニンニンの家に案内してくれ。ポーションを作るのには道具が必要だろ? それを回収したい』
『えっ……!? アスター教をやっつけるだけじゃなく、【安価なポーションを世界に広げる】って私の夢を、ツボタは引き継いでくれるの……!?』
『まぁ、そんなところだ。ただし、俺のやり方でな』
『ありがとう……!!』
ニンニンは後ろから俺の身体を抱きしめようとする。もちろん、霊体なのでするりとすり抜けた。
『気持ちだけ受け取っておく。で、どっちにいけばいい?』
『……次を左に曲がって真っ直ぐよ。ちょっと遠いけど……』
申し訳なさそうにする。
『俺は足で稼ぐタイプの霊能者だから、気にするな』
『レイノウシャって何?』
『普通の人が見えないモノを相手にする人のことだ』
『それって、儲かるの?』
『めちゃくちゃ儲かる』
『儲かるのか~』と不思議そうにするニンニンに指示に従って、家を目指した。
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『ちょっとこれ…!? どういうことよ……!!』
ニンニンの家に足を踏み入れた途端、脳内に悲鳴が響いた。
確かにひどい有様だ。
あらゆる引き出しの中身が床に散乱し、ソファもベッドもひっくり返され、おまけに天井の板まで外されていた。
『お前、部屋の掃除が出来ないタイプだったのか?』
『そんなわけないでしょ! 私を殺した後に教会の奴等が家探ししたのよ! きっと!!』
俺の頭をバンバン叩きながら、ニンニンは怒る。霊なのでもちろん痛くない。
『ポーションとそれを合成する魔法陣を狙っていたのか? あの箱の中にあった』
『間違いなくそうよ! 家のどこかに隠していると思ったんでしょうね! ざまぁみろだわ!』
腰に手をあててドヤる。殺された癖に……。
『この辺に散らばってるフリフリの服。高級品か?』
『そうよ! 私、レースのついた服が好きだったの! 王都で買った一点モノばかりなんだから!』
『ふむ。売ろう』
『えぇぇぇ……!』
ニンニンは叫び声が脳内で響く。
『もう死んだんだから、着られないだろ? 少しでもアスター教の奴等に仕返しする為の資金にさせてもらう』
『……しどい!』
口元に手をやって抗議しているが、無視だ。
『で、錬金術で使う機材はどこにある?』
『作業部屋よ。寝室の奥の扉』
言われた通りの扉を開けると、ずらりと器具が並ぶ棚が見えた。ビーカーやフラスコ、漏斗やすり鉢、まるで理科実験室だ。
『ここはあまり荒らされていないな』
『作業台や棚に引き出しもないしね」
落ち着いたニンニンは、懐かしそうに作業部屋を眺めている。
『とりあえず持って行けるものは全部持っていく』
『いいわ。そうして』
俺は寝室で見つけたリュックの口を広げ、器具と売れそうな服を突っ込んだ。
『あまり長居して誰かに見られるのもまずい。そろそろいこう』
『そうね……』
物憂げな表情のニンニンを連れて、俺は家を後にした。
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