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お見合いの話
連絡先を早々に交換して、彼がサッサとこの場を切り上げようと思っているのだと察した俺は頷いた。
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友人や名須さんの後輩の人の言葉掛けに応えるよう、三言四言は言葉を交わしたけれど、名須さんとはなかなか目が合わなくて、きっと早くこの時間が終わらないかと飽き飽きされているのは分かり易かった。
なのに俺の友人と来たら、
「明原くんはアニメとか好きで」
なんてあっさり言い、オタバレさせられてしまった俺は、気まずいのを誤魔化すようちょっとだけ笑った。
きっと、それが俺が彼に見せた最初の笑顔。
ものすごくコミュ症で、オタクぽくて、恋人どころか友人にするのだって躊躇うタイプの俺の笑みに、初めて名須さんと視線がぶつかった。
彼の細長いレンズが俺の方に真っ直ぐ向けられてはいたけれど、その眉間にはまた皺が刻まれている。
睨まれている!?
って怯えた俺に、視線はまたそれた。
――ああ、呆れてる。
いい歳をしてアニメやゲームなんかに夢中になってる男を、魅力的になど思わないタイプの人だって分かってる。
そう思って泣きたくなったけれど何も言えなくて、何か話をしなくてはとは思うのに、声を出したら震えてしまいそうだった。
きっと彼は仕事が出来る人なんだろう。
何となく、そういう自信のあり気な立ち振る舞いも苦手だった。
ちょっと冷たい印象を与える細く涼し気な目が更に細められると、鋭く突き刺さるよう感じた。
物語に出てくる嫌味なインテリっていうのともまた違ったけれど、俺が勝手に威圧されててちょっと怖い。
視線が合わないのは、むしろ幸いだったかも知れない。
だってあの視線をジッと向けられてしまっていたら、それこそ俺は瞬きも忘れて固まってしまっていただろう。
■
それなのに空気を読んでくれなかった俺の友人と彼の後輩は、俺らを二人残し席を立ってしまった。
いや、むしろ彼らもこのどうしようもない空気に耐えかねて、逃げ出したくなったのかも知れない。
俺と名須さんは無言のままコーヒーを飲み終えて、それからやっと連絡先を交換した。
「LINEでイイ?」
これきりなのだろうと思っていた俺が、思ったよりも軽く聞こえた彼の声に驚いて顔を上げると、やっぱり彼は俺を睨んでいた。
連絡先を早々に交換して、彼がサッサとこの場を切り上げようと思っているのだと察した俺は頷いて、差し出された友達登録用のQRコードを読み取った。
『よろしくお願いします』
なんてありきたりなメッセージを送って、確認してくれたのだろうか分からないほどにあっさりとした視線をほんの二秒ほどだけ落とした彼がスマホをポケットに戻したから、俺もスマホをポケットに入れた。
既読はついたけれど、きっとこの一往復だって交わされないだろうメッセージのやりとりに、いっそふっ切れるような気持ちになる。
例え俺からメッセージを送っても、日付が変わる前にはブロックされているかも知れない。
「アレはないだろ、アニメとかガキかよ?」
なんて彼の後輩はクレームを付けられて、そのクレームは巡り巡って俺の友人に届くのだろうか?
いや、それすら無かったことになるのかも知れない。
なのに俺の友人と来たら、
「明原くんはアニメとか好きで」
なんてあっさり言い、オタバレさせられてしまった俺は、気まずいのを誤魔化すようちょっとだけ笑った。
きっと、それが俺が彼に見せた最初の笑顔。
ものすごくコミュ症で、オタクぽくて、恋人どころか友人にするのだって躊躇うタイプの俺の笑みに、初めて名須さんと視線がぶつかった。
彼の細長いレンズが俺の方に真っ直ぐ向けられてはいたけれど、その眉間にはまた皺が刻まれている。
睨まれている!?
って怯えた俺に、視線はまたそれた。
――ああ、呆れてる。
いい歳をしてアニメやゲームなんかに夢中になってる男を、魅力的になど思わないタイプの人だって分かってる。
そう思って泣きたくなったけれど何も言えなくて、何か話をしなくてはとは思うのに、声を出したら震えてしまいそうだった。
きっと彼は仕事が出来る人なんだろう。
何となく、そういう自信のあり気な立ち振る舞いも苦手だった。
ちょっと冷たい印象を与える細く涼し気な目が更に細められると、鋭く突き刺さるよう感じた。
物語に出てくる嫌味なインテリっていうのともまた違ったけれど、俺が勝手に威圧されててちょっと怖い。
視線が合わないのは、むしろ幸いだったかも知れない。
だってあの視線をジッと向けられてしまっていたら、それこそ俺は瞬きも忘れて固まってしまっていただろう。
■
それなのに空気を読んでくれなかった俺の友人と彼の後輩は、俺らを二人残し席を立ってしまった。
いや、むしろ彼らもこのどうしようもない空気に耐えかねて、逃げ出したくなったのかも知れない。
俺と名須さんは無言のままコーヒーを飲み終えて、それからやっと連絡先を交換した。
「LINEでイイ?」
これきりなのだろうと思っていた俺が、思ったよりも軽く聞こえた彼の声に驚いて顔を上げると、やっぱり彼は俺を睨んでいた。
連絡先を早々に交換して、彼がサッサとこの場を切り上げようと思っているのだと察した俺は頷いて、差し出された友達登録用のQRコードを読み取った。
『よろしくお願いします』
なんてありきたりなメッセージを送って、確認してくれたのだろうか分からないほどにあっさりとした視線をほんの二秒ほどだけ落とした彼がスマホをポケットに戻したから、俺もスマホをポケットに入れた。
既読はついたけれど、きっとこの一往復だって交わされないだろうメッセージのやりとりに、いっそふっ切れるような気持ちになる。
例え俺からメッセージを送っても、日付が変わる前にはブロックされているかも知れない。
「アレはないだろ、アニメとかガキかよ?」
なんて彼の後輩はクレームを付けられて、そのクレームは巡り巡って俺の友人に届くのだろうか?
いや、それすら無かったことになるのかも知れない。
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