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俺らの街では時々戒厳令が敷かれる。

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 俺らの街では時々戒厳令が敷かれる。


 それがいつからだったのか、いつまで続くのか、そしてその確乎たる理由も分からないのだけれど、物心がついた時からそれは始まっていた。


 とはいえ、その戒厳令もそう長く続く訳ではない。

 時々昼夜通してということもあるけれど、大抵は夜から朝方まで。


 俺らのような未成年がウロウロする時間でもないから、そんなに困ることはないし、頻度だって月1回か2回程度のもの。

 その間はテレビを観るか、寝て過ごしてしまえば過ぎ去っていく。


 だから俺はその日も独りで過ごしていた。

 俺は未成年とはいってももう大学生で、今夜は両親も不在。


 残業が長引いた父は今夜は戻れず社員寮泊りになったし、母は独り暮らしの祖母の家に泊ることになっている。

 俺には兄弟もペットもいないから、本当にひとりぼっち。


 だけどそんなに寂しくはないし、レポートの仕上げをやってしまったら撮り溜めていたアニメを観ようと思っていた。


 その時までは――。



 ガタンと大きな物音が聞こえ、俺は机の前で飛び上がった。

 今夜は戒厳令が敷かれているから、車の音も無く、終電も早くに終わっていた。


 シンと静かな夜で、曇天らしく月も星もない夜だった。

 俺はシャープペンを手にしたままイスを降りて、恐る恐るといったテイで窓辺へと近づいた。


 その途中でもしかして泥棒だったりしたらどうしよう?

 なんてことも思ったけれど、戒厳令を破ったら強盗の罪どころじゃない罰を受けるらしいと聞いていたから、それも考えられない。


 それにここはマンションの三階。

 あり得ないほど高くはないけれど、おいそれとよじ登って来られるほどの高さでもない。


 そして俺は、カーテンの隙間からこっそりとベランダを覗いた。
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