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高校2年の7月にはいってすぐのその日、教室に登校したばかりの私は親友の美玲《みれい》にゲームを勧められていた。
それはもう、熱烈《ねつれつ》に。
「そんなこと言われてもなぁ……」
「頼む~! だって露音《つゆね》、ゲームとか全くしないじゃん!」
「うん。だからこそ、やるのを渋ってるんだけど……」
「いやいや、だからこそのこそだよ! 今さ、『Fantasia・Land・Online』ってのがめっちゃ流行っててね、丁度良いから露音もそろそろゲームデビューしてみても良いと思うんだ! ね? 一緒にやろ? めっちゃ面白いから! 絶対満足できるから!」
ゲームを勧められてるだけなのに気迫が凄い……。
そこまでして私にゲームをプレイさせたい理由も気になるけど、そもそもそれって、そんな簡単に入手できるものでもなかったと思うんだけどなぁ……。
「それって、『VRMMM』とか言う最近話題になってるゲームなんでしょ? それを――」
「いや、『VRMMO』ね」
「そう、それ。どうせ高いんでしょ? 私のバイト代とかお小遣いだけじゃ買えないと思うけど」
「んー……勿論、普通のソフトよりかはちょびっとだけ高いけど、高校生でも買えない額じゃないと思うよ? たとえ少しくらい高くても…………露音なら余裕で買えるよ、うん」
「……今の間は何?」
「……働き過ぎだよ、露音……」
「うっさい」
「で、買うの? 買わないの?」
切り替え早ッ!
まあ、最近は家でダラダラすることも増えたし、もうすぐ夏休みで余計暇になるし、それを少しでも埋められるのなら。
「わかった、わかったよ。――って!? ちょっと、顔近いよ!?」
「勉強にしか興味のないあの露音がゲームを……! うんうん、成長したなあ…………うぅ、ぐすん」
「泣くほど!?」
◇ ◇ ◇
そんなこんなであの日放課後、下見のつもりでソフトやら機械やらが売ってるお店を周った。
結果、中古のVR機は見つかったんだけど、肝心のソフトが無かったからとりあえずVR機のほうも諦めたんだけど、ネット通販で探してみると良いのがあったからつい買ってしまった。
ソフトとVR機がセットかつ新品かつお得なやつ。迷わずポチッちゃった。
「で、さっき家に帰ってきたら届いてたんだけど」
『やっと届いた!?』
「そう言ってまーす」
スマホ越しから聞こえてくるのは、相変わらず元気な美玲の声。
なんとかかんとかオンラインが届いたら、すぐに報告してと言われていたから、それに従った結果、今こうして通話しているというわけだ。
「それにしても……この機械でゲームができるとは思えないんだけどなあ」
ヘルメットの、顎《あご》を固定する部分にあるゴム紐を調整しながらそう思った。
だってこれ、バイクに乗ってる人たちが被るやつじゃん。
こんな物で五感が再現されるなんて、買った今でも信じられない。
『本当に何も知らないんだね。露音、私心配だよ』
「美玲が勧めてきたんだけど??」
『明日は土曜だし、今から早速プレイしちゃう?』
「無視するなし。まあ、やるけど」
やったーと嬉しそうな声が聞こえて、私の顔が緩んでしまう。
おっと、こんな顔を美玲に見られたらからかわれる。と思ったけどビデオ通話じゃないからセーフ。
『オーケーオーケー、素直な露音ちゃん可愛いよ!』
「えっと……ここをこうして――っと。よし、セット完了かな」
『あ、無視ですかそうですか』
で、あとは電源を入れて……
「お、光った」
『あ、うん、私は影ですよ』
何言ってるの。
「さ、早く一緒にやろ」
『よーし! この私が手取り足取りレクチャーしてあげるよ!』
やっぱり切り替え早いなぁ。
なんかゲームする前から色々と疲れたけど……まあいっか、いつものことだし! 私も美玲を見習おう!
でもちょっとだけ楽しみだったりもするんだよね、人生初のゲーム。
『露音、準備オーケー? せーので行くよ? …………せぇーのっ!』
勿論、恥ずかしいから美玲には内緒だけど。
『「ゲームスタート!」』
それはもう、熱烈《ねつれつ》に。
「そんなこと言われてもなぁ……」
「頼む~! だって露音《つゆね》、ゲームとか全くしないじゃん!」
「うん。だからこそ、やるのを渋ってるんだけど……」
「いやいや、だからこそのこそだよ! 今さ、『Fantasia・Land・Online』ってのがめっちゃ流行っててね、丁度良いから露音もそろそろゲームデビューしてみても良いと思うんだ! ね? 一緒にやろ? めっちゃ面白いから! 絶対満足できるから!」
ゲームを勧められてるだけなのに気迫が凄い……。
そこまでして私にゲームをプレイさせたい理由も気になるけど、そもそもそれって、そんな簡単に入手できるものでもなかったと思うんだけどなぁ……。
「それって、『VRMMM』とか言う最近話題になってるゲームなんでしょ? それを――」
「いや、『VRMMO』ね」
「そう、それ。どうせ高いんでしょ? 私のバイト代とかお小遣いだけじゃ買えないと思うけど」
「んー……勿論、普通のソフトよりかはちょびっとだけ高いけど、高校生でも買えない額じゃないと思うよ? たとえ少しくらい高くても…………露音なら余裕で買えるよ、うん」
「……今の間は何?」
「……働き過ぎだよ、露音……」
「うっさい」
「で、買うの? 買わないの?」
切り替え早ッ!
まあ、最近は家でダラダラすることも増えたし、もうすぐ夏休みで余計暇になるし、それを少しでも埋められるのなら。
「わかった、わかったよ。――って!? ちょっと、顔近いよ!?」
「勉強にしか興味のないあの露音がゲームを……! うんうん、成長したなあ…………うぅ、ぐすん」
「泣くほど!?」
◇ ◇ ◇
そんなこんなであの日放課後、下見のつもりでソフトやら機械やらが売ってるお店を周った。
結果、中古のVR機は見つかったんだけど、肝心のソフトが無かったからとりあえずVR機のほうも諦めたんだけど、ネット通販で探してみると良いのがあったからつい買ってしまった。
ソフトとVR機がセットかつ新品かつお得なやつ。迷わずポチッちゃった。
「で、さっき家に帰ってきたら届いてたんだけど」
『やっと届いた!?』
「そう言ってまーす」
スマホ越しから聞こえてくるのは、相変わらず元気な美玲の声。
なんとかかんとかオンラインが届いたら、すぐに報告してと言われていたから、それに従った結果、今こうして通話しているというわけだ。
「それにしても……この機械でゲームができるとは思えないんだけどなあ」
ヘルメットの、顎《あご》を固定する部分にあるゴム紐を調整しながらそう思った。
だってこれ、バイクに乗ってる人たちが被るやつじゃん。
こんな物で五感が再現されるなんて、買った今でも信じられない。
『本当に何も知らないんだね。露音、私心配だよ』
「美玲が勧めてきたんだけど??」
『明日は土曜だし、今から早速プレイしちゃう?』
「無視するなし。まあ、やるけど」
やったーと嬉しそうな声が聞こえて、私の顔が緩んでしまう。
おっと、こんな顔を美玲に見られたらからかわれる。と思ったけどビデオ通話じゃないからセーフ。
『オーケーオーケー、素直な露音ちゃん可愛いよ!』
「えっと……ここをこうして――っと。よし、セット完了かな」
『あ、無視ですかそうですか』
で、あとは電源を入れて……
「お、光った」
『あ、うん、私は影ですよ』
何言ってるの。
「さ、早く一緒にやろ」
『よーし! この私が手取り足取りレクチャーしてあげるよ!』
やっぱり切り替え早いなぁ。
なんかゲームする前から色々と疲れたけど……まあいっか、いつものことだし! 私も美玲を見習おう!
でもちょっとだけ楽しみだったりもするんだよね、人生初のゲーム。
『露音、準備オーケー? せーので行くよ? …………せぇーのっ!』
勿論、恥ずかしいから美玲には内緒だけど。
『「ゲームスタート!」』
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