打ち抜きレッドライン〜平々凡々な僕と噂のビッチゲーマーが大会Lv.99へ挑戦する〜

どっぽは苦手なんだ

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一章

第10話 混戦

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 強固な体制を敷いていたプレイヤーたちが突然、仲間内で攻撃し始めたその瞬間、ゲーム内の空気は一変した。

「ボスモンスターを放置しての乱戦って、今回のイベントは本当にめちゃくちゃですね!」
「誰の引き金でこうなったと思う?」
「私ですね!」

 真理が満面の笑みを浮かべて、自信満々に答えた。

 レイドボスである小悪魔リリー〈DevilLilly〉を無視して、プレイヤーたちが撃ち合う様子は、まさにカオスそのものだった。周囲の混乱の中で、一部のプレイヤーは小悪魔リリーの警戒を怠り、無情にもHPを削り取られて次々と姿を消していく。 

「ざまぁ、よそ見するからだよ!」

 誰かが嘲笑する声が響く。

「あの化け物の攻撃を避けながら乱闘って、なんかそそられるな!俺も混ざろっと!」

 別のプレイヤーが興奮した様子で仲間に呼びかける。それに続いて、「じゃあ、俺も!」と声が上がり、「私も!!」「俺も!」と、戦場に参加しようとする者がどんどん増えていく。

「面白そう!」と叫んだプレイヤーの言葉に、さらに賛同の声が続いた。混戦の始まりを感じさせる雰囲気が漂い始めた。

「今回のイベントは、勝っても負けても文句なし。残ったプレイヤーが貢献度ポイントを総取りで行こうぜ!あいつが攻撃を仕掛けたら開始だ!!」

 そう誰かが指揮を執り始める。すると、小悪魔リリー〈DevilLilly〉が鋭い鎌で一閃し、横に薙ぎ払う攻撃を放った。それが乱戦の開始を告げる鐘の音となった。

「早速だけど、ここは戦場だから、どう堂々と散ろうが文句は言わせないぞ!」

 どこからともなく響く大きな声と共に、銃声が戦場を駆け抜ける。

「なんだ!? 硬い!」

 身を守るために身体をひねる。ガキィンと聞こえる金属音が、撃たれた弾が体に当たった時の音を響かせた。

「スキルか?」
「正解だ」

 周囲のプレイヤーに目の前のプレイヤーが答える。攻撃後の余韻に浸る暇もなく、そのプレイヤーは再び狙いを定められた。

「なんだよ……あんなスキルがあったのか!」
「面白くなってきましたね!先輩!」

 驚きに目を見開く健一。

「こんなところに隠れて、何をしているのかな?」
「はや!」

 その瞬間、毛皮をまとった戦士が突進してくるのが見えた。

「たぶん、移動速度が上がるスキルかなにかですかね」

 真理が冷静に分析するが、その状況下で健一は冷静に考える余裕がなかった。

「じゃあ、先輩。私はあっちの乱戦に混じってきます!」

 真理は意気揚々と戦場へ向かおうとする。

「嘘でしょ?!俺、初心者なんだよ!!」

 健一は焦りを隠せなかった。

「あっちに初心者だって、カモ発見!」
「こいつは俺の獲物だ!」

 真理を見失った瞬間、突進してくるプレイヤーに向けて、健一は無造作に弾を撃ち続けた。

「よそ見しててもいいのかな?」

 すぐ横を通り過ぎる攻撃に「アブね!」と声が出る。身をひねると攻撃はかすめる。

「くそ!まだ遠かったか!」

 そのプレイヤーは銃口を下げて頭を掻きながら悔しがる。

「先輩、スキル!」

 遠くからの声が耳を打ち、健一は即座にその言葉に反応してスキルを発動する準備をした。石を手に持ち替え、スキルを発動すると同時に、突進してくるプレイヤーの銃と入れ替わった。手元に変わった銃の引き金が指にかかり、プレイヤーの頭を狙って渾身の一撃を放つ。

 銃声が響くと、瞬時に静寂が戦場を包み込んだ。その静けさはすぐに次の激闘へとつながる。周囲のプレイヤーたちも、その銃声に引き寄せられた。

スキルを使うタイミングも考えないとな、そう、健一は思った。一方では

「全然当たらねぇー!どうなってんだ!?」

 叫ぶプレイヤーの声が戦場に響く。あの乱射にも関わらず、攻撃が一切当たらないのは何かのスキルだろうか。その傍らで真理が発砲し、敵プレイヤーに掠った。

「おっ、当たってしまったか……裸装備だと掠っただけでもダメージがでかいな」

 そのプレイヤーは息を呑む。

「スキル発動!」

 赤いエフェクトが胴体に走り、撃たれたプレイヤーのHPは一瞬で消し去られた。

「なんだ?掠っただけで死んだぞ」

 驚きの声があがる。

「裸装備なんてするから」

 同時に冷静な声も聞こえる。

「しかし、まぁ残りも少ないな。おぃ、このミニガンで一斉掃射をするぞ!」
「おうよ!」

 小悪魔リリー〈DevilLilly〉とプレイヤーを挟み撃ちするように、真理も巻き込まれながら銃の雨が降りそそぐ。

「巻き込まれないように、なんとかしないと」

 その時、健一は後ろから近づき、親玉らしきプレイヤーに向けて引き金を引いた瞬間、直後に光とともに崩れる小悪魔リリー〈DevilLilly〉が目の前に現れた。だが、同時にミニガンの流れゆくいくつかの弾もモンスターに命中していたのだ。

 そして、訳もわからず報酬が手に入ると、目の前に「CONGRATULATIONS」という文字が浮かびあがった。

「ラッキーですね、先輩」
「いや、なにもできなかった」
「最初はそんなものですよ」

 真理が嬉しそうに言った。装備一覧を確認するとそこには、mk11 mod0と表示されていた。それは新しく追加されていたもので、最終クリア人数も最少で、初めてのイベント参加でのワンヒット討伐がレアアイテムをドロップさせていたのだ。

「私もプレイヤーを倒してたおかげで少しばかり報酬が入りました」
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