打ち抜きレッドライン〜平々凡々な僕と噂のビッチゲーマーが大会Lv.99へ挑戦する〜

どっぽは苦手なんだ

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一章

第9話 小さな悪魔

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 目の前には、体長3メートルを誇る異形の生物が立ちはだかっている。ボロ切れのようなローブをまとい、赤黒い羽根をしなやかに広げ、口は人間を丸呑みにできるほどに裂けている。EXレイドの開始時刻と共に、そのモンスターは光の粒子と共に突然姿を現したのだ。

「小悪魔リリー〈DevilLilly〉なんて聞いたから、可愛いモンスターかなと思っていたんだけど……これは全然可愛くないですね」

 健一は、目の前の化け物に圧倒され、口をあんぐりと開けたまま呆然としていた。その様子は、まぎれもなく間抜けそのものだった。

「大きいな……」

 健一の声は震えていた。

「とりあえず、先輩。遠くへ一旦離れましょう」

 その様子に冷静に健一に提案した。健一は真理の言葉に従い、一時的に距離を取る決断をする。遠目に目を向けると、盾を構えたプレイヤーが激しい攻撃を受けている様子が見え、周囲の銃を持つ仲間たちが各々の位置から撃ち合っている。混乱した戦場の中、悪魔とも呼ばれるモンスターを前に、貢献度を稼ぐべく戦っている者たちの姿があった。

「貢献度を稼げ!今のうちに!」

 耳障りな叫び声が戦場に響く。しかし、一方で近くにいるプレイヤーの行動が目に引っかかる。あの女に扮したプレイヤーは何もせず、ただわけのわからない立ち位置で走り回っているのだ。全く理解できないその行動に、真理は眉をひそめた。

「さて、私達も参加しないと」

 真理はライフルを取り出し、岩陰からモンスターを睨みつけた。冷静に、狙いを定める。

「うっ……邪魔。まずは、あの動き回っているあの人を」

 真理はそのプレイヤーに向けて一発発砲した。銃声が響くと同時に、弾は見事に右足に着弾。赤いエフェクトがその頭上で輝き、たちまちその場に伏せ込んだ。

「何が!?」

 撃たれたプレイヤーは驚愕の表情を浮かべ、痛む足を見ながら叫んだ。それほどの大ダメージではなかったようだが、視線は瞬時にこちらを向いた。

「お前!こんなことしていいと思っているのか!?」

 プレイヤーは自らの命の危機を感じ、声を張り上げた。

「ここは既に戦場。生きるも死ぬも自己責任ですよ」

 真理は冷静に応じる。

「私は後ろから撃たれたくないから撤退する。残念だけど、次回の参加を期待している」
「恨み買うぞ」

 健一は同じプレイヤーを撃たったことで、驚いた。そのプレイヤーのHPは徐々に減っていったが、必死に冷静さを保とうとしているのが感じ取れた。

「だって、走り回って人の顔を窺っている人がいつ後ろに回るかわからないじゃないですか。あっ、見てください。あの人、別のプレイヤーに撃たれましたよ」

 興奮した様子で健一に告げた。健一の目の前で、先ほどのプレイヤーが他の男プレイヤーによって撃たれていた。痛みをこらえ、叫び声を上げた。

「お前のせいで、うちのパーティーはめちゃくちゃだ!」

 その叫びは怒りに満ちていた。

「先輩も撃ったほうがいいですよ。プレイヤーといっても貢献度に加算されますから」
「そういうものなんか」
「はい」

 健一は自らのライフルを手に取った。そして、彼の身体を掠めるように弾を撃ち込んだ。HPは一気に減り、瞬時にその場に伏せ込む。

 轟音と共に戦場の緊迫感が高まり、悪魔リリーとの戦いは激しさを増していた。生き残るためには、無情な手段を選ぶしかない。しかし、同じプレイヤーを撃ってしまったことへの罪悪感が頭をもたげる。
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