打ち抜きレッドライン〜平々凡々な僕と噂のビッチゲーマーが大会Lv.99へ挑戦する〜

どっぽは苦手なんだ

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一章

第4話 その1 チュートリアル

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 健一は、顔が引き攣りながらも不敵に笑う目の前の冷淡で機械的な印象を与えるアバターのNPC、アルファを進める。アルファの口から発せられた言葉は、更に緊張させた。

「確認致しました。それでは、チュートリアルに移行します」

 一瞬の静寂の後、アルファが指をパチンと弾くと、周囲の風景が驚くべき速さで変貌を遂げた。草原での穏やかな風景が、一瞬にして殺伐とした射撃場へと移り変わってしまったのである。健一は、その不意の変化に呆気にとられ、気が抜けたように立ち尽くす。

 しばらくの間、何も考えることができずにいたが、やがてアルファが続けて口を開く。

「左上の方に緑色のゲージで表示されているHP。青色のゲージであるポイントスキル、そしてニックネームが表示されています。攻撃を受けると緑のゲージであるHPが減少し、「」となりますと、事実上の戦闘復帰が不可となります。PTの場合、スキルを使用するたびに青色のゲージが消費されますが、強力なスキルほどより多くのポイントを消費します。自然回復は存在しますが、どちらも一定の値に達すると回復が中断されます。説明は以上です。それでは、まずは――」

 アルファが再び指を鳴らす。その瞬間、健一の目の前に現れたのは、限りなく黒に近い緑色の光沢を持つ液体が固まった物体だった。まるで生き物のように小刻みに震えており、見た目は不気味で、健一の胃の底がひゅっとなる。

「うわっ、きもい……」と健一は心の中でそう叫んだ。動かずにプルプルと震えるその物体は、動揺を引き起こすだけでなく、好奇心も同時に引き出していた。

「こちらの的の名は、【黒毒塊】といいます。行動範囲は狭いですが、触れるとダメージを負います。もちろん、チュートリアル仕様にプログラムされていますので、動作を行うことはありませんのでご安心ください。触れる際に生じるHP消費は、本来のダメージ量よりも軽減されています。では、まずは接触してみてください」

 アルファが右手を胸部あたりまで上げ、こちらをどうぞと招くように微笑んでいる。真理は、アルファの指示に従い、緊張した手を伸ばして、その不気味な塊に触れてみることにした。ふわりとした感覚が彼を襲い、小動物をなでるかのような感触が広がっていく。接触するたびに、【黒毒塊】はプルプルと震えだした。

「なんか、可愛い……」  

 真理は思わず呟いてしまう。

「正気か?ただのヘドロにしか見えないが?」
「その言い方やめてください」

 真理は不満を口にする。余裕を持った笑みを浮かべながら、その【黒毒塊】を持ち上げ、健一のほうに突き出そうとする。

「……」

 一瞬の沈黙が流れる。

「はい、先輩」

「……ありがとう」と健一はその不気味な塊を受け取る。微かに感じる冷たさが、手にしっかりと伝わった。

 彼らの間に流れる一瞬の和やかな空気は、時に緊張感を和らげてくれる。しかし、彼の心中には大きな不安が渦巻いていた。

 アルファが続ける。

「それでは、今からこの【黒毒塊】を用いて、実際の攻撃練習を行います。準備はいいですか?」
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