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プロローグ
その5 きっかけ『CBF(Crowded・BattleField)』
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『A』社が各都道府県に整備した専用フロアの一つにいる。周囲にはたくさんの個室が配置されており、その内部には鍵がかけられている。個々の個室はしっかりと区分けされ、他の利用者とすれ違うことはない。一方通行の通路を進むと、そこにはパネルがあり、点灯しているボタンを押すことで、自分の好きな部屋を選べる仕組みだ。
主に料金の差があるが、部屋のタイプはAタイプとBタイプの2種類。Aタイプは約半径8.5メートルの円錐状の個室、Bタイプは約半径22.5メートルの同じく円錐状の個室だ。
「先輩はどの部屋がいいですか?」
「えっと……ここかな」
心臓がドキドキと鼓動を打つのを感じながら、彼女の後を追っている。たかがゲームのために、変哲もない建物に入ったはずが、ここに辿り着いていた。
カップルがまるで天空のどこかへ消え入るような光景が視界に入り、どこか噂が耳に残る。期待に胸が高鳴っていた。手に握る汗の感触に、彼女はどう思っているのだろうか、と少し不安になった。
「先輩、期待してます?」
「なにを?」
「先輩もやっぱ男なんですね」
「初めて知り合った男と二人っきりで平気な君が言うのもどう?」
「確かにそれもそうですね。それと、真理と言います。経済学一年生の佐藤真理です」
「……あー、名前」
真理は後ろ手に組みながら少し先を歩いている。
「今更ですが、先輩の名前を教えてください」
「健一、山田健一。同じく経済学三年生です」
自己紹介してみると、彼女は振り向き、微笑んだ。その笑顔に少し気持ちが和む。
「健一さんですね」
「先輩呼びじゃないんだ」
「先輩呼びの方が萌えますか?」
「萌えるね」
何気ない会話を重ねるうちに、徐々に緊張が解けてきた。そして、気持ちも少し落ち着き、この状況に馴染み始めていた。
「さて、期待しているところの先輩。ホームといっても、これから行くのは私の家でも、そういうことをするところでもないですよ」
「……」
「あれ?渾身のツッコミを期待していたのですけど」
口角を上げて微笑む彼女の視線を感じつつ、どこともないところを見つめる。
「先輩」
両手を限りなく広げながら、勢いよく中指を立てた。
「変態」
「中指を立てられるほどのことをしていないよ」
「期待してた……」
「そうだね、うんうん」
不意に彼女のその行動に頭を撫でた。
「なんですか?」
「あ、ごめん。いつもの癖で」
彼女の頭から手を抜く。
「いいですよ、頭を撫でるくらい。私の頭には御利益があります」
「へー、どんな効能が?」
「不能になります」
「ふざけるなよ」
「あれ?本当に不能なんですか?」
挑発めいた彼女の言葉に、会話の中で彼女はずっとからかった。
「うざっ……」
「ね、先輩。もう私たち結構な仲良しじゃないですか?」
真理は右手を遊ばせながらそう言った。
「そうだね、君のおかげで緊張がほぐれたよ」
そう告げると、彼女はむすっと頬を膨らませた。
「真理です」
「えっ?」
「えっじゃないです。名前。漫画じゃあるまいし」
「真理?」
「まぁ、及第点?」
首を傾げ、彼女は少し照れたような笑みを浮かべる。
「さ、ゲームしましょう!」
その言葉に、心が躍る。これからどうなるのか、期待と緊張が入り混じりながら、彼女と一緒に新たななにかが始まるのを感じていた。二人はその部屋の扉を開ける準備を整えた。
こうして、彼らの物語は緩やかに始まってゆく。
主に料金の差があるが、部屋のタイプはAタイプとBタイプの2種類。Aタイプは約半径8.5メートルの円錐状の個室、Bタイプは約半径22.5メートルの同じく円錐状の個室だ。
「先輩はどの部屋がいいですか?」
「えっと……ここかな」
心臓がドキドキと鼓動を打つのを感じながら、彼女の後を追っている。たかがゲームのために、変哲もない建物に入ったはずが、ここに辿り着いていた。
カップルがまるで天空のどこかへ消え入るような光景が視界に入り、どこか噂が耳に残る。期待に胸が高鳴っていた。手に握る汗の感触に、彼女はどう思っているのだろうか、と少し不安になった。
「先輩、期待してます?」
「なにを?」
「先輩もやっぱ男なんですね」
「初めて知り合った男と二人っきりで平気な君が言うのもどう?」
「確かにそれもそうですね。それと、真理と言います。経済学一年生の佐藤真理です」
「……あー、名前」
真理は後ろ手に組みながら少し先を歩いている。
「今更ですが、先輩の名前を教えてください」
「健一、山田健一。同じく経済学三年生です」
自己紹介してみると、彼女は振り向き、微笑んだ。その笑顔に少し気持ちが和む。
「健一さんですね」
「先輩呼びじゃないんだ」
「先輩呼びの方が萌えますか?」
「萌えるね」
何気ない会話を重ねるうちに、徐々に緊張が解けてきた。そして、気持ちも少し落ち着き、この状況に馴染み始めていた。
「さて、期待しているところの先輩。ホームといっても、これから行くのは私の家でも、そういうことをするところでもないですよ」
「……」
「あれ?渾身のツッコミを期待していたのですけど」
口角を上げて微笑む彼女の視線を感じつつ、どこともないところを見つめる。
「先輩」
両手を限りなく広げながら、勢いよく中指を立てた。
「変態」
「中指を立てられるほどのことをしていないよ」
「期待してた……」
「そうだね、うんうん」
不意に彼女のその行動に頭を撫でた。
「なんですか?」
「あ、ごめん。いつもの癖で」
彼女の頭から手を抜く。
「いいですよ、頭を撫でるくらい。私の頭には御利益があります」
「へー、どんな効能が?」
「不能になります」
「ふざけるなよ」
「あれ?本当に不能なんですか?」
挑発めいた彼女の言葉に、会話の中で彼女はずっとからかった。
「うざっ……」
「ね、先輩。もう私たち結構な仲良しじゃないですか?」
真理は右手を遊ばせながらそう言った。
「そうだね、君のおかげで緊張がほぐれたよ」
そう告げると、彼女はむすっと頬を膨らませた。
「真理です」
「えっ?」
「えっじゃないです。名前。漫画じゃあるまいし」
「真理?」
「まぁ、及第点?」
首を傾げ、彼女は少し照れたような笑みを浮かべる。
「さ、ゲームしましょう!」
その言葉に、心が躍る。これからどうなるのか、期待と緊張が入り混じりながら、彼女と一緒に新たななにかが始まるのを感じていた。二人はその部屋の扉を開ける準備を整えた。
こうして、彼らの物語は緩やかに始まってゆく。
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