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プロローグ

その4 噂の後輩

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 近未来、仮想現実と現実世界が交差する時代。人々は没入型ゲームに夢中となり、現実を忘れるほどの体験を求めていた。そんな世界の片隅、日常と流行るゲームの狭間で揺れる青年がひとりいた。彼の名は山田健一。平々凡々な大学生活を送り、些細なことで喜びを見出す普通の男だ。特別な目標も夢もなく、ただ日々を愉しむことに幸せを感じていた。

「眠た……」

 しかし、彼の日常はある日、後輩の出現によって一変する。その彼女との初会合は、大学の喫煙所だった。

「あっ……すみません、火をくれません?」

 その少女、佐藤真理は周囲の視線を集める存在だった。独特な触覚と彼女のウルフカットの髪型、その整った容姿は、まるで周囲を魅了する魔法のようだった。

 普段、妹や母親、年配のバイト以外の女性との接点がなかった健一は、思わず間を置いた後、ポケットを弄りながら言った。

「ごめん、電子タバコなんだわ。すまんね。一年生?」
「はい、そうですよ」

 急な出来事に心臓が躍る。それでも、冷静を装いポケットから出した電子タバコを片手にそう答えた。

「もってないのか、てっきり同類かと」

 彼女は一言返し、咥えていたタバコを片付け、携帯を手に取った。思わず視線がその画面に吸い寄せられる。

『今日家どうする?』

 彼女の慣れた手つきに目が止まり、噂を思い出した──"様々な男を連れ込むビッチ"という言葉が頭に浮かぶ。そんな可愛い彼女が色んな男と関係を持っているのか・・・。

 生唾を飲み込み、彼女の画面越しのメッセージに愕然とする。その瞬間、目が合った彼女の視線に動揺する。

「見ました?」

 彼女がこちらを真っ直ぐに見据えてくる。戸惑いの中で、必死に否定を続ける。

「いや」
「見てましたよね?」
「いや、見てないです」
「私の裸写真」

 重圧に押しつぶされそうな瞬間、周りの男たちがこちらを横目で見ているのが分かる。きっと、聞き耳を立てているのだろう。その言葉がもたらす緊張感に、心臓が高鳴る。

「いや、なかったでしょ。そんなの……」
「そんなの?なんですか?」

 彼女の発言に、他の男たちの視線が一層鋭くなった。彼女の挑発的な笑みの中には、危険な香りが漂っていた。

「なんでもない」

 口を滑らせたことに一瞬後悔したが、彼女は満面の笑みを浮かべながら近づいてきた。

「ま、いいでしょう。私の裸写真なんて価値ないみたいですし」
「……」

 慣れない会話にほっと息をつき、震える電子タバコを一口吸う。

「アーー!もう断られた!見てくださいよ!こいつ、昨日一緒にオールしたのに裏切りましたよ!」
「へ、へーー」

 その瞬間、戸惑いの間に彼女の存在が一層鮮明になり、心の中で何かが弾けた。彼女の無邪気な笑顔の裏には、何か隠された秘密があるように思えた。

「先輩でいいです。ここでサボっているなら、ホームに行きませんか?」

 彼女は手を鉄砲の形に作り、俺の心臓に人差し指を突き立てた。

「ゲームをしませんか?」
「なんだゲームかぁ……」
「嫌ですか?CBF」

 CBFとは、流行中のシリーズ物ゲームだったはず。

 試合は三本一本勝負で、一戦目は各プレイヤーの特有の能力を最大限に生かした1発勝負となっており、瞬時の判断力と精密な狙いが試される。続く二戦目はスリル満点の銃撃戦で、プレイヤーは銃器を駆使して互いに戦う。最後の三戦目では護衛戦が展開され、自分の仲間を守りながら敵の攻撃を阻止する戦略が求められる。この3つの試合形式が、プレイヤーに多様な戦略とスリルを提供し、夢中にさせている理由となっている。

「苦手だわ……」
「手取り足取り教えますから!」
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