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抹茶@小説家『僕には重すぎた』
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一生は重すぎる。
どんなにつらい過去があろうとも、楽になる方法などないのだから。
だが、僕はもう楽になったんだ。
墓参りの直後、僕は倒れたらしい。
周りの人に支えられながら、僕はやりたいことをやった。
きっと、あの子に──ゆりに、届いてればいいな……。
「届いてるよ──!」
ふと、僕の後ろから声がした。
振り返るとそこには──。
「──ゆり……?!」
僕の、大切な、大切な、ゆりがそこにいた。
あの日と、変わらない姿で、僕の目の前に現れてくれた。
僕の思いがゆりへ届いた。ただそれだけでも充分だが、僕は欲張った。
僕はゆりに近付くと正座して土下座をした。
「あの日は本当にごめんっ!」
「ま、待ってよ! それは私のセリフ、私が謝らなきゃいけないの!」
「でも……!」
ゆりは、僕の言葉を遮っては自分が謝ろうとしてくる。
そんな彼女の姿を見て僕は気付いてしまった。
結局ゆりに対する謝罪など僕の自己満足でしかなかったのだと。
幼いころのゆりに教えられてしまった気がしてならなかった。
あの日の事をゆりは教えてくれた。
あの時僕と別れたゆりは、山を下って一旦は自宅に帰ったらしい。
そこで水分を取りながら頭を冷やしたらしい。
それから山にいる僕の元へ戻る途中、いつも通っている過酷な道を通っていたが、足場が緩くなっていたらしく、崩れたのだという。
それだけなら良かったのだが、そこから土砂が流れ込み、生き埋めになってしまったのだという。
最後の事については僕が聞いたことと間違いはない。
いつも通っていた道が崩れていたこと、ゆりが生き埋めになってしまっていたこと。
だが、その間の話については一切聞かされていなかった。
そもそも、通っている道が崩れていたのはてっきりゆりの嫌がらせで、崩している途中で山場が崩れてしまったものだとずっと思っていた。
ゆりにそうさせてしまった僕自身を、強く強く恨んでいた。
なんて馬鹿なことをさせたんだ僕は、と。
だが、それはゆりの説明によって覆されてしまった。
いや、もしかしたら、ゆりは僕が自身を責めていることを知ってて噓を付いているのだろうか……?
僕に分かる由などない。
☆☆☆ ★★★ ☆☆☆
──あの日は夜にゆりが帰ってこないと騒ぎになった。
いつも一緒に遊んでいる僕は彼女の行方を大勢の大人から詰められた。
だが、彼女を怒らせて最後までの行方を僕は知らないのでどんなに詰められても答えを出すことなどできなかった。
結局大人たちとともに僕は山へ行き、ゆりの行方を捜すことになった。
いつも通る山道を辿って僕はあの場所にたどり着いた。
僕の話を聞く大人は顔面蒼白になりながら崖下へと急ぎ足で下って行った。
大人たちが土を手で丁寧に剥がして行くうちに重機のショベルカーがやってきた。
二、三回ショベルカーですくったのち、見覚えのある服が出てきた。
ゆりだった。
僕は彼女の姿を見て目の前が真っ白になった。
計り知れないほどの感情が溢れ出て、目から涙があふれてきた。
言わなくてもわかると思うが、この事故は全責任を僕が背負うこととなって村八分になって引越しすることとなった。
墓参りに来た時も村人は最初歓喜の表情を浮かべていたが僕がユリとともに過ごしていた人間だとわかるとすぐさま白い目を向けてきた。
口にはしていなかったがおそらく今すぐ帰れと思っていたのだろう。
墓参りの際も訝しむ表情で僕を監視し続けていた。
病に伏していた僕がこれ以上何かできるわけではないのだが、あの日のことを許してもらうためにきっと演技しているのだろう、と思われていたのかもしれない。
だが、僕の限界はそこまでだったという事だ。ゆりのそばで死ぬなどこれ以上の幸せなどない。
これ以上などなにも求めないつもりでいた。
ゆりが僕の前に現れるまでは。
僕はゆりに告げる
「僕は、ゆりの事がずっと好きだった。だが、あの一件で僕はゆりの隣にいる資格などないとずっと思っていた。だけど、ゆりがあの後どうなったのかを聞いて、この気持ち、伝えなきゃいけないって思ったんだ」
「ありがとう。でも、ダメ。それは生まれ変わってから。今はまだ──」
──わがままで身勝手な私をどうか許さないでください
どんなにつらい過去があろうとも、楽になる方法などないのだから。
だが、僕はもう楽になったんだ。
墓参りの直後、僕は倒れたらしい。
周りの人に支えられながら、僕はやりたいことをやった。
きっと、あの子に──ゆりに、届いてればいいな……。
「届いてるよ──!」
ふと、僕の後ろから声がした。
振り返るとそこには──。
「──ゆり……?!」
僕の、大切な、大切な、ゆりがそこにいた。
あの日と、変わらない姿で、僕の目の前に現れてくれた。
僕の思いがゆりへ届いた。ただそれだけでも充分だが、僕は欲張った。
僕はゆりに近付くと正座して土下座をした。
「あの日は本当にごめんっ!」
「ま、待ってよ! それは私のセリフ、私が謝らなきゃいけないの!」
「でも……!」
ゆりは、僕の言葉を遮っては自分が謝ろうとしてくる。
そんな彼女の姿を見て僕は気付いてしまった。
結局ゆりに対する謝罪など僕の自己満足でしかなかったのだと。
幼いころのゆりに教えられてしまった気がしてならなかった。
あの日の事をゆりは教えてくれた。
あの時僕と別れたゆりは、山を下って一旦は自宅に帰ったらしい。
そこで水分を取りながら頭を冷やしたらしい。
それから山にいる僕の元へ戻る途中、いつも通っている過酷な道を通っていたが、足場が緩くなっていたらしく、崩れたのだという。
それだけなら良かったのだが、そこから土砂が流れ込み、生き埋めになってしまったのだという。
最後の事については僕が聞いたことと間違いはない。
いつも通っていた道が崩れていたこと、ゆりが生き埋めになってしまっていたこと。
だが、その間の話については一切聞かされていなかった。
そもそも、通っている道が崩れていたのはてっきりゆりの嫌がらせで、崩している途中で山場が崩れてしまったものだとずっと思っていた。
ゆりにそうさせてしまった僕自身を、強く強く恨んでいた。
なんて馬鹿なことをさせたんだ僕は、と。
だが、それはゆりの説明によって覆されてしまった。
いや、もしかしたら、ゆりは僕が自身を責めていることを知ってて噓を付いているのだろうか……?
僕に分かる由などない。
☆☆☆ ★★★ ☆☆☆
──あの日は夜にゆりが帰ってこないと騒ぎになった。
いつも一緒に遊んでいる僕は彼女の行方を大勢の大人から詰められた。
だが、彼女を怒らせて最後までの行方を僕は知らないのでどんなに詰められても答えを出すことなどできなかった。
結局大人たちとともに僕は山へ行き、ゆりの行方を捜すことになった。
いつも通る山道を辿って僕はあの場所にたどり着いた。
僕の話を聞く大人は顔面蒼白になりながら崖下へと急ぎ足で下って行った。
大人たちが土を手で丁寧に剥がして行くうちに重機のショベルカーがやってきた。
二、三回ショベルカーですくったのち、見覚えのある服が出てきた。
ゆりだった。
僕は彼女の姿を見て目の前が真っ白になった。
計り知れないほどの感情が溢れ出て、目から涙があふれてきた。
言わなくてもわかると思うが、この事故は全責任を僕が背負うこととなって村八分になって引越しすることとなった。
墓参りに来た時も村人は最初歓喜の表情を浮かべていたが僕がユリとともに過ごしていた人間だとわかるとすぐさま白い目を向けてきた。
口にはしていなかったがおそらく今すぐ帰れと思っていたのだろう。
墓参りの際も訝しむ表情で僕を監視し続けていた。
病に伏していた僕がこれ以上何かできるわけではないのだが、あの日のことを許してもらうためにきっと演技しているのだろう、と思われていたのかもしれない。
だが、僕の限界はそこまでだったという事だ。ゆりのそばで死ぬなどこれ以上の幸せなどない。
これ以上などなにも求めないつもりでいた。
ゆりが僕の前に現れるまでは。
僕はゆりに告げる
「僕は、ゆりの事がずっと好きだった。だが、あの一件で僕はゆりの隣にいる資格などないとずっと思っていた。だけど、ゆりがあの後どうなったのかを聞いて、この気持ち、伝えなきゃいけないって思ったんだ」
「ありがとう。でも、ダメ。それは生まれ変わってから。今はまだ──」
──わがままで身勝手な私をどうか許さないでください
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