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クリスマスに一緒に過ごす、それだけが望みです
番外編(エピローグ)
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私には誰にも言えない秘密がある。
それは、中学時代にとある事情で、可愛く愛しい妹と、離れなければならなくなってしまったこと。私が十三歳、妹が二歳の時の出来事だった。
その事は家族と親戚を除いて、どんなに仲が深い相手であっても秘密にしている。
これはそんな私、紬雛葵と、妹である雛の物語。
☆☆☆ ★①★ ☆☆☆
妹と離れて数年後に高校に入り、私は一人の先輩と出会った。
名前を向陽と言う彼は、私の進んだ学科の先輩で、かなり優秀な人として人気だった。
そんな彼は、どういうわけか私とよく話したがる。
最初は断っていたが、どうしても、と言い続ける彼の姿勢に押された私は、人前だと恥ずかしいので、人気のない所で話すことを条件に、話すことを受け入れた。
色々と話をしているうちに、彼には、一人のかわいい妹がいるのだと言う話になった。
それを聞いたとき、私はふと雛の事を思い出した。彼女は今どこで何をしているのだろうか、元気にしているのだろうか。
私は十五歳だから、彼女は四歳だろう。そう思いながら話を聞いていると、その妹も四歳なんだという。
すごい偶然だな、そう思いながら聞いていると、さらに驚く事を彼は告げた。
名前を雛と言い、彼が十四のころに新しく家族になった事。新しい環境になって不安もあっただろうけど、今まで病気もせずに元気に過ごしている事。
勢い余って続けられる近況に、私はいつの間にか満面の笑みを浮かべていたようで、先輩は「嬉しそうだね」と漏らしてしまうほどであった。
そうして、私たちは毎日のように色々な話をすることに。そのほとんどは妹、雛の話だった。
だが、そんな日々もそう長くなかった。二年もすれば、先輩は卒業する。
卒業後、先輩はとある情報系の大学へ進学するそうだ。どうやら、システムエンジニアと言う技術職になりたいのだとか。
将来の夢なんて、私は考えることなどなかったのだが、先輩の行く先についていきたい。ずっと雛の話を聞いていたい。
雛に会うことなど叶わなくても、先輩から雛の話を聞いているだけで、私は幸せなのだから──。
☆☆☆ ★②★ ☆☆☆
それから一年が経った。私は勉強を頑張り、何とか先輩と同じ大学へ進学することが出来た。
パソコンに関して、ほぼ初心者の私は、入学直後からまずはパソコンの使い方から学ばなければならなかったため、大変だった。
タイピングも一本指でぽちぽちと打つことしか出来なかった。
それでも、先輩と一緒の道を歩みたい、その一心で先輩の助力の元で私はブラインドタッチやハイスピード入力も容易にこなすことも出来るようになった。
そして、数年。私はストレートで大学を卒業出来ることになった。そのころには向陽さんは就職し、地元で名の知れているシステム開発の企業で働いていた。
卒業研究には、その企業から課されたシステム構築に関する研究をすることとなり、出来る限りの力を尽くした私は、無事に就職を果たした。向陽さんの元に引き続いて付いていく事が出来るようになったのだ。
嬉しい。向陽さんの元でまた一緒になれるんだ……!
☆☆☆ ★③★ ☆☆☆
向陽さんとともに仕事を始めた私。今まで学んできたことを活かし、システム開発に尽力した。夜も寝る間を惜しまず、開発のために時間を費やす。
いつしか、私は妹のことなど忘れるほどに開発一筋な生活を送っていた。
そんな中、向陽さんから、体調について心配されることがあった。私は、特に体調に変化など感じる事は無かったため、大丈夫だと言い、開発を続けた。
時期は冬になり、寒空を仰ぎながら、私は開発を進める。
ふとカレンダーを見ると、月末にはクリスマスが控えていた。
そこで私は妹のことを思い出すこととなった。彼女とは幼いころに別れ、きっと会ったとしても私のことなど分からないだろう。
それでも──
☆☆☆ ★④★ ☆☆☆
日付はクリスマスとなり、私はいつも通り朝早くから開発を進める。
オフィスのドアが開く音がした。向陽先輩が出勤したのだ。
「あ、向陽さん。おはようございます。今日もまた続きやって行きましょうか」
「おはよ、うん。そうだね、頑張ろう」
私の開発の傍ら、向陽さんは最近何やら新企画の計画を立て始めたようだ。とても大きな計画のようで、向陽さんはずっとうんうん言いながら少しずつ計画を練って行っているようだった。
そんな彼の姿を見ながら、私は夜に向けて仕事を早く進めた。
夜になり、終業時刻となった。向陽さんは一足先に退勤した。その後を追う形で私は向陽さんについていく。
車に乗った彼は、自宅へ進み始めた。私も車に乗り、後を追う。
途中で寄り道をした彼は無事に自宅まで到着した。そしてその中へと入っていった。
しばらく楽しそうな声が聞こえてくる。そんな声を聞きながら私は少し考えた。
この楽しそうなところに入って良いのだろうか、それを邪魔して私も楽しんでもいいのだろうか。
妹の姿を見れただけでも良いじゃないか。
しばらくの間悩み、私は決心した。突撃しよう。
そうして、私は玄関のインターホンを押した──。
☆☆☆ ★⑤★ ☆☆☆
玄関が開くと、そこにいたのは、小学生の女の子だった。
年頃から察するに、彼女が……
「こんばんは……どちらさまですか?」
彼女から発された言葉に、私は頭を抱えた。そうか……そうか……。
幼いころに別れて以来、会ったことが無いのだから、忘れられてて当然だ……。
「あれっ紬じゃん、どうしたの?」
続けざまに、向陽さんがやってきた。
忘れられていてショックを受けていた私だったが、彼の姿を見てハッとなった。
「紬……そっか、この人が……。いつもお兄ちゃんから聞いています。可愛い後輩さんだー……って」
「えっ」
そんな……可愛い後輩だなんて……恥ずかしい。
向陽さん、そんな風に思ってたんだ……。
「こら、雛! 恥ずかしいから言わないの!」
「ごめんなさーい」
不貞腐れたようにして、雛は返事をする。
その反応を私は見覚えと少しよぎることがあった。
「こんな日の夜に、突然どうしたの? 何か用?」
向陽さんは私の顔を覗くように聞いてくる。
その表情はどこか心配そうだった。
「向陽さんの妹さん──雛ちゃんについて話したいことがあって……」
「ほう、雛について……? 一体何だろう?」
「前から雛ちゃんの話は聞かせていただいておりました。実は私、向陽さんが雛ちゃんを迎えたころに幼く、それも雛ちゃんと同じ年頃の妹と生き別れる事となりましてそれで──」
「ちょっと待って……それって……」
私の話を聞いた向陽さんは、まさか、と言う表情を浮かべ雛の方を見る。少し考えた後、向陽さんは私の方を見て言葉を続けた。
「分かった。とりあえず、話しが長くなりそうだから、上がって。玄関先だと寒いだろう?」
「はっはい。お邪魔します……」
そう言って、向陽さんは私を家へ上げてくれた。
そんな中、雛は何が起きているのかさっぱり分かっていない様子で、呆然としていた。
☆☆☆ ★⑥★ ☆☆☆
「──それで、雛は元々紬の妹で、家庭の事情で俺の家に来ることになった……という事か。なるほどな。それで、あの時俺の話を嬉しそうに聞いていたんだな」
「恥ずかしながら……元気だという話をきいていたので、当時それで十分だと思っていました。でも、やっぱり雛に会いたい、そう思って来てしまいました」
頬をポリポリとしながら、私は答える。神妙な表情で向陽さんは聞いていた。
「そうだったのか。じゃあ、一つだけ聞きたい。紬は、どうしたい?」
「どうって……?」
「雛と一緒に暮らしたいのか? それとも、今日は会いに来て、それだけで充分なのか?」
「私は……」
どうしたいんだろう。私は向陽さんが好きだ、雛も同じくらい好きだ。そんな二人を引き離してまで私は雛と一緒に暮らすほど鬼じゃない。
じゃあどうするべきか? 答えは決まっている。
「私は、向陽さんが好きです。大好きです。雛も、同じくらい好きです。叶うのであれば、私は“二人”と一緒に暮らしたいです」
──言った。言ったぞ。後は向陽さんがどう思うか、だ。
「はぇ!? 俺が好き……? マジか……それに二人と一緒にって事は、三人で暮らしたいって事か。突然のことすぎて、処理が出来ない……」
向陽さんは頭を抱え始めた。
「とにかく、雛はこの話を聞いてどう思っているか、それをまず聞いて見るとしよう。どうだ? 雛」
「私は……よく分からない……お兄ちゃんがお兄ちゃんじゃなくて、紬さんが、お姉ちゃん……? よく分からないよぉ……」
雛も頭を抱えてしまった。これは悪手だったか……自分の私欲のために会いに来たとは言え、この状況を望んだわけではない。
我慢できなかった過去の私を恨んでいたその時
「でも、私に家族が増えるのなら、私は嬉しいよ……」
雛からの言葉に私は目の前が明るくなった、そんな気がした。
☆☆☆ ★⑦★ ☆☆☆
それから数日後。
私たちは三人で年を越し、正月と年末休みを楽しく過ごしていた。
あの後、向陽さんも一緒に過ごすことを承諾し、私は仮で一緒に暮らすこととなった。
そして、私と雛は──。
「お兄ちゃんは私の!」
「いーや! 向陽さんは私のだもん!」
毎日のように、向陽さんを取り合う日々を過ごしていた。
実妹ではなくなったが故に、今まで言えなかった思いを爆発させたのだろう。
いいライバルとなっている。
これからも、楽しい日々を、三人で過ごすこととなるのだろう。
いつまでも、楽しい日々を過ごしていたい。
この日々を受け入れてくれた二人には感謝だ。
ずっと、このままで──。
☆☆☆ ★⑧★ ☆☆☆
──雛と雛葵と、向陽。三人で永遠に過ごす日々を過ごしていた。
会社に向陽と雛葵の関係を知る者はいない。
三人で過ごす日々はとても楽しく、かけがえのないものとなっていた。どれだけ喧嘩しても、離れがたい存在となっていた。
そしていつしか、向陽の両親が帰ってくることになるのだが、それはまた今度の話である。
~ The End ~ Merry Christmas ~
それは、中学時代にとある事情で、可愛く愛しい妹と、離れなければならなくなってしまったこと。私が十三歳、妹が二歳の時の出来事だった。
その事は家族と親戚を除いて、どんなに仲が深い相手であっても秘密にしている。
これはそんな私、紬雛葵と、妹である雛の物語。
☆☆☆ ★①★ ☆☆☆
妹と離れて数年後に高校に入り、私は一人の先輩と出会った。
名前を向陽と言う彼は、私の進んだ学科の先輩で、かなり優秀な人として人気だった。
そんな彼は、どういうわけか私とよく話したがる。
最初は断っていたが、どうしても、と言い続ける彼の姿勢に押された私は、人前だと恥ずかしいので、人気のない所で話すことを条件に、話すことを受け入れた。
色々と話をしているうちに、彼には、一人のかわいい妹がいるのだと言う話になった。
それを聞いたとき、私はふと雛の事を思い出した。彼女は今どこで何をしているのだろうか、元気にしているのだろうか。
私は十五歳だから、彼女は四歳だろう。そう思いながら話を聞いていると、その妹も四歳なんだという。
すごい偶然だな、そう思いながら聞いていると、さらに驚く事を彼は告げた。
名前を雛と言い、彼が十四のころに新しく家族になった事。新しい環境になって不安もあっただろうけど、今まで病気もせずに元気に過ごしている事。
勢い余って続けられる近況に、私はいつの間にか満面の笑みを浮かべていたようで、先輩は「嬉しそうだね」と漏らしてしまうほどであった。
そうして、私たちは毎日のように色々な話をすることに。そのほとんどは妹、雛の話だった。
だが、そんな日々もそう長くなかった。二年もすれば、先輩は卒業する。
卒業後、先輩はとある情報系の大学へ進学するそうだ。どうやら、システムエンジニアと言う技術職になりたいのだとか。
将来の夢なんて、私は考えることなどなかったのだが、先輩の行く先についていきたい。ずっと雛の話を聞いていたい。
雛に会うことなど叶わなくても、先輩から雛の話を聞いているだけで、私は幸せなのだから──。
☆☆☆ ★②★ ☆☆☆
それから一年が経った。私は勉強を頑張り、何とか先輩と同じ大学へ進学することが出来た。
パソコンに関して、ほぼ初心者の私は、入学直後からまずはパソコンの使い方から学ばなければならなかったため、大変だった。
タイピングも一本指でぽちぽちと打つことしか出来なかった。
それでも、先輩と一緒の道を歩みたい、その一心で先輩の助力の元で私はブラインドタッチやハイスピード入力も容易にこなすことも出来るようになった。
そして、数年。私はストレートで大学を卒業出来ることになった。そのころには向陽さんは就職し、地元で名の知れているシステム開発の企業で働いていた。
卒業研究には、その企業から課されたシステム構築に関する研究をすることとなり、出来る限りの力を尽くした私は、無事に就職を果たした。向陽さんの元に引き続いて付いていく事が出来るようになったのだ。
嬉しい。向陽さんの元でまた一緒になれるんだ……!
☆☆☆ ★③★ ☆☆☆
向陽さんとともに仕事を始めた私。今まで学んできたことを活かし、システム開発に尽力した。夜も寝る間を惜しまず、開発のために時間を費やす。
いつしか、私は妹のことなど忘れるほどに開発一筋な生活を送っていた。
そんな中、向陽さんから、体調について心配されることがあった。私は、特に体調に変化など感じる事は無かったため、大丈夫だと言い、開発を続けた。
時期は冬になり、寒空を仰ぎながら、私は開発を進める。
ふとカレンダーを見ると、月末にはクリスマスが控えていた。
そこで私は妹のことを思い出すこととなった。彼女とは幼いころに別れ、きっと会ったとしても私のことなど分からないだろう。
それでも──
☆☆☆ ★④★ ☆☆☆
日付はクリスマスとなり、私はいつも通り朝早くから開発を進める。
オフィスのドアが開く音がした。向陽先輩が出勤したのだ。
「あ、向陽さん。おはようございます。今日もまた続きやって行きましょうか」
「おはよ、うん。そうだね、頑張ろう」
私の開発の傍ら、向陽さんは最近何やら新企画の計画を立て始めたようだ。とても大きな計画のようで、向陽さんはずっとうんうん言いながら少しずつ計画を練って行っているようだった。
そんな彼の姿を見ながら、私は夜に向けて仕事を早く進めた。
夜になり、終業時刻となった。向陽さんは一足先に退勤した。その後を追う形で私は向陽さんについていく。
車に乗った彼は、自宅へ進み始めた。私も車に乗り、後を追う。
途中で寄り道をした彼は無事に自宅まで到着した。そしてその中へと入っていった。
しばらく楽しそうな声が聞こえてくる。そんな声を聞きながら私は少し考えた。
この楽しそうなところに入って良いのだろうか、それを邪魔して私も楽しんでもいいのだろうか。
妹の姿を見れただけでも良いじゃないか。
しばらくの間悩み、私は決心した。突撃しよう。
そうして、私は玄関のインターホンを押した──。
☆☆☆ ★⑤★ ☆☆☆
玄関が開くと、そこにいたのは、小学生の女の子だった。
年頃から察するに、彼女が……
「こんばんは……どちらさまですか?」
彼女から発された言葉に、私は頭を抱えた。そうか……そうか……。
幼いころに別れて以来、会ったことが無いのだから、忘れられてて当然だ……。
「あれっ紬じゃん、どうしたの?」
続けざまに、向陽さんがやってきた。
忘れられていてショックを受けていた私だったが、彼の姿を見てハッとなった。
「紬……そっか、この人が……。いつもお兄ちゃんから聞いています。可愛い後輩さんだー……って」
「えっ」
そんな……可愛い後輩だなんて……恥ずかしい。
向陽さん、そんな風に思ってたんだ……。
「こら、雛! 恥ずかしいから言わないの!」
「ごめんなさーい」
不貞腐れたようにして、雛は返事をする。
その反応を私は見覚えと少しよぎることがあった。
「こんな日の夜に、突然どうしたの? 何か用?」
向陽さんは私の顔を覗くように聞いてくる。
その表情はどこか心配そうだった。
「向陽さんの妹さん──雛ちゃんについて話したいことがあって……」
「ほう、雛について……? 一体何だろう?」
「前から雛ちゃんの話は聞かせていただいておりました。実は私、向陽さんが雛ちゃんを迎えたころに幼く、それも雛ちゃんと同じ年頃の妹と生き別れる事となりましてそれで──」
「ちょっと待って……それって……」
私の話を聞いた向陽さんは、まさか、と言う表情を浮かべ雛の方を見る。少し考えた後、向陽さんは私の方を見て言葉を続けた。
「分かった。とりあえず、話しが長くなりそうだから、上がって。玄関先だと寒いだろう?」
「はっはい。お邪魔します……」
そう言って、向陽さんは私を家へ上げてくれた。
そんな中、雛は何が起きているのかさっぱり分かっていない様子で、呆然としていた。
☆☆☆ ★⑥★ ☆☆☆
「──それで、雛は元々紬の妹で、家庭の事情で俺の家に来ることになった……という事か。なるほどな。それで、あの時俺の話を嬉しそうに聞いていたんだな」
「恥ずかしながら……元気だという話をきいていたので、当時それで十分だと思っていました。でも、やっぱり雛に会いたい、そう思って来てしまいました」
頬をポリポリとしながら、私は答える。神妙な表情で向陽さんは聞いていた。
「そうだったのか。じゃあ、一つだけ聞きたい。紬は、どうしたい?」
「どうって……?」
「雛と一緒に暮らしたいのか? それとも、今日は会いに来て、それだけで充分なのか?」
「私は……」
どうしたいんだろう。私は向陽さんが好きだ、雛も同じくらい好きだ。そんな二人を引き離してまで私は雛と一緒に暮らすほど鬼じゃない。
じゃあどうするべきか? 答えは決まっている。
「私は、向陽さんが好きです。大好きです。雛も、同じくらい好きです。叶うのであれば、私は“二人”と一緒に暮らしたいです」
──言った。言ったぞ。後は向陽さんがどう思うか、だ。
「はぇ!? 俺が好き……? マジか……それに二人と一緒にって事は、三人で暮らしたいって事か。突然のことすぎて、処理が出来ない……」
向陽さんは頭を抱え始めた。
「とにかく、雛はこの話を聞いてどう思っているか、それをまず聞いて見るとしよう。どうだ? 雛」
「私は……よく分からない……お兄ちゃんがお兄ちゃんじゃなくて、紬さんが、お姉ちゃん……? よく分からないよぉ……」
雛も頭を抱えてしまった。これは悪手だったか……自分の私欲のために会いに来たとは言え、この状況を望んだわけではない。
我慢できなかった過去の私を恨んでいたその時
「でも、私に家族が増えるのなら、私は嬉しいよ……」
雛からの言葉に私は目の前が明るくなった、そんな気がした。
☆☆☆ ★⑦★ ☆☆☆
それから数日後。
私たちは三人で年を越し、正月と年末休みを楽しく過ごしていた。
あの後、向陽さんも一緒に過ごすことを承諾し、私は仮で一緒に暮らすこととなった。
そして、私と雛は──。
「お兄ちゃんは私の!」
「いーや! 向陽さんは私のだもん!」
毎日のように、向陽さんを取り合う日々を過ごしていた。
実妹ではなくなったが故に、今まで言えなかった思いを爆発させたのだろう。
いいライバルとなっている。
これからも、楽しい日々を、三人で過ごすこととなるのだろう。
いつまでも、楽しい日々を過ごしていたい。
この日々を受け入れてくれた二人には感謝だ。
ずっと、このままで──。
☆☆☆ ★⑧★ ☆☆☆
──雛と雛葵と、向陽。三人で永遠に過ごす日々を過ごしていた。
会社に向陽と雛葵の関係を知る者はいない。
三人で過ごす日々はとても楽しく、かけがえのないものとなっていた。どれだけ喧嘩しても、離れがたい存在となっていた。
そしていつしか、向陽の両親が帰ってくることになるのだが、それはまた今度の話である。
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