いいオーク

兎猫まさあき

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彼こそまさに

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 ここは森の奥深く。沢山の同族たちが遊びまわっている楽しい場所だ。
 俺は、この森でよく木の実を集めては同族たちに分け与えている。

「ギエラ、今日もたくさんの木の実持ってきて来てくれてありがと!」

 喜ぶ年少者たちの姿を見るのが毎日の俺の楽しみで日課だ。
 そんな俺には、最近悩みがある。

「ああ、アイツ……良いな」

 ふと声を漏らして悶絶してしまう。
 同族の中でイケメンのやつと出会ってしまったのだ。
 しかも、アイツは──

『大丈夫か!?』

 ニンゲンに襲われた俺を助けてくれたんだ。
 惚れちまうぜ……

「おねーちゃん……?」

 服を引っ張られ、現実に戻ってきた。
 俺のそばには、俺の妹であるゲイラがいた。
 とても可愛く、ずっと抱きしめていたいくらいだ。

「うわっ……おねーちゃん……くるぢい……」
「わわっごめん! ゲイラが可愛くてつい」
「もー、おねーちゃんいつもそればかり。オイラはそんなにかわいくないぞっ」

 頬を膨らませ、いかにもプンスカという音が聞こえてきそうな雰囲気を放ちながら、ゲイラは俺の前で仁王立ちする。
 かわいいやつだ。うりうり。

「あの……」

 そんなところで後ろから聞き覚えのある男の子の声が聞こえてきた。
 至らない声を漏らしながら俺は後ろを振り返る。

「ひゃあぁぁ!!」
「うわー! ごめんなさい!」

 俺の叫び声にびっくりしたのか相手は反射的に謝ってきた。
 そこには、俺がさっきまで目で追っていたアイツの姿があった。

       ☆☆☆ ★★★ ☆☆☆

「突然ごめんね……」
「ううん、こっちこそごめんね」

 あの後、俺たちは二人で別の場所に移動した。
 俺は照れてるのを気付かれないように、必死に平静を装いながら相槌を打つ。

「あのさ……ギエラって、みんなに優しいよね」
「あっ、名前……」
「ごめん、みんなから呼ばれてるの聞いちゃった」

 突然として呼ばれた名前に俺は顔が熱くなる。
 隠しきれてるかな……。

「あの日だってさ、みんなのために木の実集めてたんでしょ?」

 それでも、俺は自分を守る力なんてない……。君に守られなきゃ、俺はあそこで……

「僕さ、思ったんだ」

 彼はそう言って俺の方を見つめてくる。なになに?

「……!」

 俺の顔まで顔を近づけて……
 くちびるを……

「おねーちゃん! こんどからオイラもきのみあつめてつだうぞ!」

 ドーンと後ろから押される。ゲイラだ。

「そっか。ゲイラ、この後一緒に行こっか」

 そう言って俺は立ち上がる。ゲイラとともに行く前に、未遂に終わったそれを完遂させ、俺はゲイラとともに森の奥へと向かって行く。
 俺らの種族は人間からオークと呼ばれているらしい。
 オークは邪悪な存在らしいが、そんな事は無いと思う。

 後に、俺の旦那になる彼は、良いオークだと思う。
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