僕と間の人達

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何軒もお店のあるこの場所は日用品を揃えるにはとてもいい場所だ。他の人にとってもそうなのだろう。人が多い。いつものこと…この人もまたいつもここにいる人。

「きみぃ~また会えたねってことでお話だけでもどうかな?」

「…」

スカウトは無視して目的の場所に向かうがついてくる。歩きながら話しかけてくる。とにかく無視しようもう少し行けばついては来れないはずだけど

「君ならモデルが向いてる。だって」

また言われるくらいならと自分から

「外国の血が入ってるから?」

と言えば

「ちがっ」

反論は聞かずに歩く。

たどり着いた路地は高級なお店が並んでいる。一品物を作る職人の店や骨董品となどといった(マニアックというべきだろうか?)ファッションなどの比較的わかりやすい物ではない知識の必要な高いものを売っている店がある。
ここの路地にはスカウト等する輩は一歩も入れない…のに。
入れなくても待つことはできると判断したのか普が数歩路地に入ってもどこにも行かない。
いい加減鬱陶しいと思っていた普は言う。
「違うのなら何?」

「うまくは言えない。でも容姿で声をかけたわけじゃない」

「みんな目の色でわかるみたいでさ…はっきり言うけどもう声をかけないで」

「それはできない!原石を見つけて磨くのが俺たちの仕事だから」

スカウトの男は一歩も引かないどころか路地に入ってきた。





この土地に帰ってきてからスカウト人に何度もかけられる言葉がストレスでもう耐えられそうになかった。

「君ハーフかな?」

「目の色オッドアイだね。珍しい…それだけで売れるよ」

「バランスの取れた容姿…モデルになってみないか?」

「義手のモデルさんがいるけど会ってみない?」

今までかけられた言葉。貴方達は僕の何を知ってるの?
パパと母さんから貰ったこの身体は売り物じゃない。
失った理由があまりにも違うのに会ってどうするの?

モデルにさえ出来れば…売り物になればそれでいいんだろ?




ああもう耐えるなんて無理だ…いっそ殴ってしまおうと踏み出そうとした時、後ろから腕を引っ張れ体を引き寄せられた。ボフッと身体がぶつかり上を向けば
「なるほどこれが前に言っていたやつか」

セドリックである。




「ヨシタカがここへ向かっているがその前に解決できる。普、合わせるように」

普をしっかりと抱き寄せるとスカウト人を見て
「俺の子をどこへ連れて行く気だ」

いつもとは違う口元の笑い方。楽しそうではない。
「仕事柄命を狙われることも多いからな。子供にも早くから武術を身に付けさせている。言いたいことが分かるか?」

「怒らせたら殴られる…こんな女の子がするわけないでしょう」

反応しそうになったがセドリックが背中をトントンしたりさすってなだめた。

「それができる子だから止めに入ったというのに馬鹿な奴だな。何も調べてないのか」

プルプルプルプルルル

「その電話に出ろ」

普段かかってこない相手からの電話。
スカウトの男は電話に出ると
「社長…」「なんで…」「わかりました」

と電話の相手に答え話が終わると電話を切った。

「話の分かる社長に免じて今回は警告だけにしてやる。二度と近づくな。仲間内にも言っておけ いいな?命の保証もないと言え」

男は頷くと
「何度も声をかけてすみません。見かけても声をかけないようにします。失礼します」

と言って去っていった。あまり納得している顔ではなかった。




スカウト男とすれ違うように伊藤が来た。
解決したようでホッとしつつ普を見れば怒りよりも悲しんでいるように見える。
溜め込ませてしまった。ここまで酷いとは思っていなかった。
「ああいったとこの社長も繋がりをたどればいる。アマネ助けてと言えるようになれ。大人を、俺を頼れ。利用できる者は利用して自分を守れるようになれ。周りにいる大人はアマネから助けを求められることを待ってる」

「自分のせいで死ぬかもしれない」

あの事件は普をまだ蝕み続けている。伊藤にとって生きていてくれるだけでいいけれど頼ることは覚えてほしいと思っていた。
「普ちゃんもうあの事件は終わった。少しずつでいいよ。頼ることを覚えよう。俺は大事な人に頼ってもらえたとき嬉しかった。」

伊藤の言葉に普は考え込む。
しばらくして遠慮がちに

「セドリックおじさん」

「なんだアマネ」

「さっきも言ってはいたけどこの辺り一帯にいるスカウトの人だけでもいいから僕には声をかけないようにってすることはできるのかな?」

フッと笑うと
「もう上の人間には連絡済みだ。違反者がどうなるかもな」





ある会社の社内

「社長どういうことですか!」

「落ち着け」

「あの子絶対有名なモデルになれますよ」

「だろうな」

「え?」

「昔、ある人達に声をかけたが断られた。あの堂々とした姿、自分ってものをしっかり持ってるのが見て分かるから容姿のことなんて考えることなく声をかけたんだ3人に」

「もしかして」

「3人のうちの2人がその子の親だ。そして菊桜の人間だ。裏で国守ってる奴に売り物になれなんて言ったらどうなるか分かるだろ?それに近づくなと菊桜とセドリックさんからきてる。俺達は消されなかっただけマシだ。やろうと思えば簡単に消せる力を持ってる」

「社長はどこまで知ってるんですかあの子について」

「過去の関わりと送られてきた紙の束に書かれていることだけだ。菊桜の情報は余程のことがない限り漏れないからな。とにかく声をかけるな。あとあの路地に近づくな。会っても会釈だけしてろ。お前が生きていられることを祈るよ」









「落ち着いた造りだね」

「もう少しで完成するそしたらまた来るといい」

宝石を売るにしては明るい感じの店内ではない。眩しすぎず暗すぎず、木材の家具により落ち着いた内装になっている。宝石屋はいくらでもある。原石やルースを主に売り、頼まれた品の受け渡しをする店だとセドリックは言っていた。
この路地にある別の店では装飾品を作ってくれるそうでセドリックの店でルースなどを買いそちらの店に行き職人に世界にひとつだけの自分のための指輪やネックレスといった物を作ってもらうのだとか。

「奥に鉱物があるから付き人に見せてもらいなさい」

「いいの?売り物だよね?」

「見れるチャンスを逃すか?」

「ありがとう。見てくる」

付き人と普が奥に行くのを見てから
「聞きたいことはなんだ?」

「本当の理由は普ですか?」

「会える機会を増やそうと思っただけだ」

「それだけじゃないのでは?」

「菊桜にいるときは仕事もあるし落ち着かないだろ。こっちに店を持てばアマネは店に来る。プライベートだから鉱物が好きな子供でいられるんじゃないかと思った。ここなら途中で仕事のスイッチが入ったりしないから子供のアマネと接することができる。悩みも話してくれるかもしれない。俺らしくないと思うかヨシタカ?」

「セドリックさんなりに普ちゃんのことを沢山考えてくれていて、頼れる人が増える事が嬉しい。菊桜にいるとどうしても影虎さんを求めるように求められてしまうから子供でいられないことも多いから」

「やりすぎだと言われるかと思った」
と言うセドリックに
「俺がしていることをやりすぎだとあなたは言わないから」
と返せば
「お互いに必要だとわかっているからだろうな」と言うセドリックをどこか同じだなと伊藤は思うのだった。



















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