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何も話さない。
きっと殺されるのを待っている。
いや、この状態が続けば殺されないと思っているのか?
なぜ話さない。話ができることはわかってる。
「はぁ」
「お疲れ様です」
「ルート、お前もあいつの尋問はしてるんだろ。何も喋らないのか?」
「ノアの口調と似ているとだけ…」
殺した相手のことは忘れることなく覚えているのか。自分が正しい事をしたと本気で思ってるからか?ただ何の理由もなく覚えているだけか?
ため息をつくセドリックにルートは苦笑いをしつつこのあとの尋問はどうするのか聞いた。
「少し休憩したら再開する」
ある夜の出来事
「ノア」
「再会できて嬉しいですアマネ」
見たことのない庭を少し歩き回っているとノアがいた。もう会えないと思ってた。夢の中は何でもありなんだなと思いながら
「何か用事?」
さあこちらへと手を引かれて歩いていくとティーセットが置かれたテーブルがあった。長い夢、ノアといられる時間…複雑な気持ちだ。悪夢ではないからまだいいと思うべきだろうか。
席に着くと自分と僕の飲み物を用意してくれ軽い雑談をしてから本題に入った。
「セドリックやルート、その他この件に関わる人たちをそろそろ解放してあげてほしい」
「誰も戻ってこないから?」
「それもありますがどれだけ尋問をしても彼は答えられない。彼自身正しさだけで動いていた訳では無いように思うんです」
正直に言ってしまえば関わりたくない。真実が分かろうと家族は帰ってこない。
この件が長引けば被害者も解決に向け動く者もストレスが溜まっていく。手を出すどころかあいつを殺そうとして…
「アマネ、彼が気づいてしまう前に私が言ったとおりに動いてください。それで止まっていた物語は進みます」
そろそろ時間ですねとノアは立ち上がり普の前に行くと優しく抱きしめた。
「この前は助ける事に必死でしたから落ち着いて抱きしめたかった。」
「温かい」
「夢の中は何でもありですからねぇ…この件が終わればだいぶ落ち着くはずです。私はここで待っていますから」
「ノアなんて嫌いだ」
「嫌われても待ってます」
尋問を再開したところでなんの進展もない。
誰がやっても同じ。
この際はっきり聞いてしまおうか。
「きみは」
外が騒がしいなとセドリックは話すのをやめドアの方を見た。別の人が様子を見てくるとドアを開けると
「普さん?!この状況はルート…ルートどうした?」
何を聞いたのか立ち尽くすルート、普が入るのを阻止しようとした人たちが倒れている。
「入る」
「駄目で痛っ」
部屋が狭いからか体格差のある人を押さえつけながらこちらを見た。
彼と目が合うと
「君は死にたかった」
男は反応した。
「苦しむ仲間に頼まれ殺す中で自分を殺してくれる人を探していた」
「…」
「君は死を回避する…殺そうとしてくれた人を殺してしまう。」
「…」
「自分のコントロールできない防衛本能にさらに苦しめられた」
呼吸が速くなってきたなとセドリックが男を見ながら思う。
「仲間の中にいた力のある家系の人がもう少しで君を殺せるところで駄目だったそうだね。聞いたよ彼を解放してあげられなかったと」
「君は私のところへ来たとき俺を殺せる人間は居ないのかと質問してきたけれど答えなかったから被害者を増やしてしまった」
「あるのか」
「あるけれど君自身が真実を語ってからでないとね」
押さえつけていた人から離れると男に近づきながら
「私は答えを知っているし、君が気づかないことに驚いている。」
「教えてくれ」
「死者がここまでしているのだから君の目の前にいる尋問官にすべてを話し、質問に答えなさい」
「そんなこと」
「罪悪感を残したまま君は死ねない」
その後、何かを察したセドリックの指示により最後の尋問等の準備がされ数時間彼は話し続け質問にも答えた。
普は部屋の外で待っていた。
誰も普に声をかけられなかった。
その手にある物、ノアの話し方…何かあるということだけは古参達やルートなら嫌でもわかった。
各国も突然の連絡に文句を言おうとしたがノアの指示と聞いて何も言えない国がほとんどだった。
ドアを開けセドリックが頷く。尋問が終わったのだとその場にいた人たちはそこら中に指示を出していく。
普は中へ入っていく。一緒に入ってくるセドリックを見たが見届ける気だとわかると自分のすべきことに戻った。
「すべて答えたね」
「ああ」
「ここに拳銃とナイフがある。どちらがいいかな」
無言で見てくる彼に対し
「私は殺さない」
「どういうことだ」
「君の拘束は解かれている」
「自分で…」
「君の回避がどこまでのものか分からない。自分自身が殺すのであれば回避されないのではないかと私は思ったがあの時言ったとしても君はできただろうか」
「…」
「この先君が死ねる保証はない。牢屋の中で苦しみ続けるか、私の名で死ぬ機会を与えられているいま死ぬか」
「ノア…あんたはなんでそこまでしてくれる?」
「救うべき子ども(だった)だから」
「すまない」
彼がナイフを手に取った瞬間、普にバサッとスーツの上着を頭からかけ耳元で
「見ずに部屋から出ろ」
と言いドアを開け背中を押した。
きっと殺されるのを待っている。
いや、この状態が続けば殺されないと思っているのか?
なぜ話さない。話ができることはわかってる。
「はぁ」
「お疲れ様です」
「ルート、お前もあいつの尋問はしてるんだろ。何も喋らないのか?」
「ノアの口調と似ているとだけ…」
殺した相手のことは忘れることなく覚えているのか。自分が正しい事をしたと本気で思ってるからか?ただ何の理由もなく覚えているだけか?
ため息をつくセドリックにルートは苦笑いをしつつこのあとの尋問はどうするのか聞いた。
「少し休憩したら再開する」
ある夜の出来事
「ノア」
「再会できて嬉しいですアマネ」
見たことのない庭を少し歩き回っているとノアがいた。もう会えないと思ってた。夢の中は何でもありなんだなと思いながら
「何か用事?」
さあこちらへと手を引かれて歩いていくとティーセットが置かれたテーブルがあった。長い夢、ノアといられる時間…複雑な気持ちだ。悪夢ではないからまだいいと思うべきだろうか。
席に着くと自分と僕の飲み物を用意してくれ軽い雑談をしてから本題に入った。
「セドリックやルート、その他この件に関わる人たちをそろそろ解放してあげてほしい」
「誰も戻ってこないから?」
「それもありますがどれだけ尋問をしても彼は答えられない。彼自身正しさだけで動いていた訳では無いように思うんです」
正直に言ってしまえば関わりたくない。真実が分かろうと家族は帰ってこない。
この件が長引けば被害者も解決に向け動く者もストレスが溜まっていく。手を出すどころかあいつを殺そうとして…
「アマネ、彼が気づいてしまう前に私が言ったとおりに動いてください。それで止まっていた物語は進みます」
そろそろ時間ですねとノアは立ち上がり普の前に行くと優しく抱きしめた。
「この前は助ける事に必死でしたから落ち着いて抱きしめたかった。」
「温かい」
「夢の中は何でもありですからねぇ…この件が終わればだいぶ落ち着くはずです。私はここで待っていますから」
「ノアなんて嫌いだ」
「嫌われても待ってます」
尋問を再開したところでなんの進展もない。
誰がやっても同じ。
この際はっきり聞いてしまおうか。
「きみは」
外が騒がしいなとセドリックは話すのをやめドアの方を見た。別の人が様子を見てくるとドアを開けると
「普さん?!この状況はルート…ルートどうした?」
何を聞いたのか立ち尽くすルート、普が入るのを阻止しようとした人たちが倒れている。
「入る」
「駄目で痛っ」
部屋が狭いからか体格差のある人を押さえつけながらこちらを見た。
彼と目が合うと
「君は死にたかった」
男は反応した。
「苦しむ仲間に頼まれ殺す中で自分を殺してくれる人を探していた」
「…」
「君は死を回避する…殺そうとしてくれた人を殺してしまう。」
「…」
「自分のコントロールできない防衛本能にさらに苦しめられた」
呼吸が速くなってきたなとセドリックが男を見ながら思う。
「仲間の中にいた力のある家系の人がもう少しで君を殺せるところで駄目だったそうだね。聞いたよ彼を解放してあげられなかったと」
「君は私のところへ来たとき俺を殺せる人間は居ないのかと質問してきたけれど答えなかったから被害者を増やしてしまった」
「あるのか」
「あるけれど君自身が真実を語ってからでないとね」
押さえつけていた人から離れると男に近づきながら
「私は答えを知っているし、君が気づかないことに驚いている。」
「教えてくれ」
「死者がここまでしているのだから君の目の前にいる尋問官にすべてを話し、質問に答えなさい」
「そんなこと」
「罪悪感を残したまま君は死ねない」
その後、何かを察したセドリックの指示により最後の尋問等の準備がされ数時間彼は話し続け質問にも答えた。
普は部屋の外で待っていた。
誰も普に声をかけられなかった。
その手にある物、ノアの話し方…何かあるということだけは古参達やルートなら嫌でもわかった。
各国も突然の連絡に文句を言おうとしたがノアの指示と聞いて何も言えない国がほとんどだった。
ドアを開けセドリックが頷く。尋問が終わったのだとその場にいた人たちはそこら中に指示を出していく。
普は中へ入っていく。一緒に入ってくるセドリックを見たが見届ける気だとわかると自分のすべきことに戻った。
「すべて答えたね」
「ああ」
「ここに拳銃とナイフがある。どちらがいいかな」
無言で見てくる彼に対し
「私は殺さない」
「どういうことだ」
「君の拘束は解かれている」
「自分で…」
「君の回避がどこまでのものか分からない。自分自身が殺すのであれば回避されないのではないかと私は思ったがあの時言ったとしても君はできただろうか」
「…」
「この先君が死ねる保証はない。牢屋の中で苦しみ続けるか、私の名で死ぬ機会を与えられているいま死ぬか」
「ノア…あんたはなんでそこまでしてくれる?」
「救うべき子ども(だった)だから」
「すまない」
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